携帯・ワイヤレス 2005年11月25日 09:00

購買行動分析(その2)

著者: 西田 徹
2005年11月25日 09:00 付の記事
□国内internet.com発の記事

今回は購買行動分析の考え方を、 モバイルマーケティングというテーマに具体的に応用してみたい。

最初のテーマは、 「TSUTAYA のモバイルクーポンは、なぜ絶大な効果があるのか」である。 前回紹介したように、 モバイルクーポンでの来店促進は、 実は失敗事例も多い。 どこに「TSUTAYA ならでは」の秘訣が隠されているのかを考えてみよう。

●AIDMA での TSUTAYA 成功理由分析

まずは AIDMA モデルで TSUTAYA の成功理由を分析してみよう。 以下が AIDMA モデルの復習である。

【A】Attention:商品の存在に気づく段階。知ってはいるものの購入にはほど遠い
【I】Interest:商品への興味が沸く段階。ただし他人事としての興味
【D】Desire:商品への欲求がわく段階。 自分のこととして利用イメージが浮かんでいる
【M】Memory:いったん止まる段階。ほしいものはたくさんある。 すべては買えない
【A】Action:ボーナスが出たなどのきっかけによって、購買に至る段階

さて、これを TSUTAYA にあてはめて気づくのは、 【A】【I】【D】【M】までは、 モバイルクーポン送付以前にすでにすんでしまっているということである。

TSUTAYA という店についてすでに知っている【A】。 CD や DVD を借りるということにすでに興味がある【I】。 人ごとではなく、自分のこととして利用イメージが浮かんでいる【D】。 もちろん、毎日借りるわけにはいかないので、 前に借りた日からはいったん止まっている【M】。 ただし数週間以内(一例)には、また行こうとは思っているのである。

そして、「この画面を見せたら500円引き」といったモバイルでのフレーズによるきっかけで、 自宅・学校・会社などの最寄りの TSUTAYA にクーポン利用期限までに行き、 CD や DVD などを借りること【A】が大いに促進されるのである。

この分析を裏付ける事実もある。 当社メンバーズでは TSUTAYA や外食系企業とアライアンスを組み、 モバイル広告媒体の開発に注力している。 そこで得られた知見によると、 飲食店で食事を注文し、 配膳されるまでの間に会員登録を促すと、 極めて会員化の効率がいいことが判明している。

そして次が本題なのだが、 その顧客に再来店を促す割引クーポンを配信した際の来店効果は、非常に高いのである。すでに【A】【I】【D】【M】まで行っている場合、 最後の【A】(アクション)を引き起こすのに、 モバイルクーポン配信は強力なコミュニケーション手段となるのである。

●リアルとの役割分担で AIDMA を突破

では、TSUTAYA のように【A】【I】【D】【M】まですでに行ってないと、 モバイルマーケティングは無意味なのだろうか。それは違う。

大事なのは、 モバイルという道具で AIDMA のどの段階を攻めるのかを明確に意識し、 モバイルでは苦手な段階があったとしたら、 それを他のコミュニケーション手段(リアル連動)で補うことである。

具体例として、ある有名キャラクタを使った英会話教材販売の事例をあげよう。 この例では【A】【I】【D】【M】まですでに行っているどころか、 最初の【A】(認知)さえないところから出発する。

最初の【A】(認知)を突破するのはモバイル広告、 特にメール広告の役割である。 見込み客の懐に入り込めるモバイルメールの広告は、 まずは商品やサービスの名前を知ってもらうのには最適の媒体とも言える。

次の【I】(興味)を突破するのはモバイルサイトの役割である。 メール広告からクリックしたサイトで、 有名キャラクタを使った英会話教材で、 子供たちが楽しく英語を学習する様子を伝えるのである。

ただし、ここでは「他人事としての興味」を喚起させることしかできない。 自分のこととしての欲求を起こさせるまでには、 モバイルのサイトでは訴求力が弱いのである。 そのために用意するのが「体験版をもれなくプレゼント」という仕組みである。 その申込みをモバイルサイトのフォーム入力で行ってもらうわけだ。

そして【D】(欲求)は、リアルの世界の「体験坂」や、 「お風呂で遊ぶ ABC 学習ポスター」などで促進される。 自分の事として「この英会話教材はいいな。多少高くても買おうか!」となるのだ。

このケースでは、【D】の部分はモバイルの役割ではない。 モバイルでできること、できないことを明確に意識しているのである。

どんな商品・サービスでも言えることだが、欲求が起きたからといって、 すぐに買ってもらえるわけではない。 【M】(記憶)として留まり、「買うかもしれないリスト」の一員となる。

そこから一歩進めて購入【A】(行動)してもらうのは、 リアルの営業マンの役割である。 安い買い物ではないこの英会話教材の購買の背中押しをするのは、 モバイルでは無理。 むしろモバイルでの資料請求をスムーズに営業マンに引き継ぐ「つなぎ」の設計に、 この会社では注力しているのである。

自分の見込み顧客の AIDMA が、どのように構成され、どこで止まっているのか。 また、それぞれの段階を突破するにはモバイルが、 そしてモバイルから連携するリアルがどのように活用できるのかを考えること。 それがモバイルマーケティング成功の近道と言えるだろう。

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