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筆者は毎晩、就寝前に「Wikinomics: How Mass Collaboration Changes Everything」(同書は「パラダイムシフト」という言葉を造り出した Don Tapscott も著者に名を連ねている。筆者は、同氏がこの言葉を作り出したことについて謝罪したのを実際に聞いたことがある)を読んでいる。

ということはつまり、筆者はその内容の大半を覚えていないことになる(ただ、みなさんも同じようなことを絶対に繰り返していると思う)。しかし、筆者は覚えている部分については興味を持っており、今後数回にわたって思い出せる範囲で Wikinomics (ウィキ経済)を概説していきたい。
これまでにないスケールで組織と個人が協力して知識を作りだすマスコラボレーションの時代に突入していく、というのが同書のメインテーマだ。著者が主要例として示し、本書を方向づけるとも仮定できるのが Goldcorp の話だ。

だから? 

カナダの炭鉱会社である Goldcorp には、5万5000エーカー分の広大な土地から採取した400M バイトの定量データ(深層コア試料の分析)があった。この試料から、彼らには金が埋蔵されていることは分かっていた。だが、その正確な場所については分からず、従来の探査テクニックでは2〜3年の期間が必要で、同社にはその時間がなかった(同社は倒産寸前だった)。同社に新しく就任した最高経営責任者(CEO)は経験豊富な元投資信託マネジャーで、採鉱の経験はほとんどなかったが、この定量データを公開し、これを使って採掘に適した場所を特定した人物に賞金を出すよう部下の地質学者たちを(ほとんど無理矢理)説得した。

それは途方もない成功を収めた。地質学者、応用数学者、コンピュータグラフィックス研究者など、50カ国、1000余りの参加者から解析が寄せられた。Goldcorp はこれらの応募資料を使って新たに坑道を掘る場所を割り出し、その大半が実際にかなりの産出を実現した。実際、1993年に1億ドルだった同社の時価総額(株式総額)は今日では90億ドルに達している。

これが素晴らしい話であることに疑問の余地はない。ただ1つ、ちょっとした問題がある。(もちろんみなさんの年齢を考えれば無理だとは思うが)消費者向け商品メーカー各社が自社製品向けに以前実施していた新スローガンやキャッチフレーズのコンテストを覚えているだろうか。採用者にはその企業の製品(芳香剤など)を1年分贈呈するというあれだ。事実上、Goldcorp はこれと同じことを実行し、非常に大きな成功を収めた。しかし、それはマスコラボレーションでも普通のコラボレーションでも何でもない。個人がそれぞれに競う競争であり、参加者が、互いにあるいは Goldcorp と協力することはなかった。格別モダンでも、インターネット対応でもない。人類の歴史そのものと同じくらい古い(あるいは少なくとも芳香剤と同じくらい古い)状態に過ぎなかった。

率直に言って、この例は同書のテーマを多少ぼかしてしまう。Wikinomics の今後の展開は、章を追うごとに楽しみになっていく。筆者は、マスコラボレーションを前面に押し出したこれより明確な例が出てくるかどうかに特に興味がある。同書のタイトルを基本にして考えると、マスコラボレーションの史上最大の成功例である Wikipedia が登場してくるのは想像できると思う。それまではぐっすりと睡眠を取っておきたい。