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「Work Windows」は、アクセンチュア・テクノロジー・ラボ で開発されたコラボレーションシステムだ。
これは、「せっかくコラボレーションツールを作っても、だれもその使い方を覚えなかったらどうなる?」
という疑問に対する回答だ。この疑問は確かに重要だ。目的はあくまでもコラボレーションであり、
コラボレーションソフトウェアの使い方を本当に覚えたい人などいないからだ。
 
だから? 
 
「Work Windows」は、ユニークな物理フレームワークでビデオ会議と共有ドキュメントを組み合わせる
ことにより、トレーニングの問題に取り組んでいる。ユーザーが4フィート(約1.2m)四方の画面の前に立つと、そこには(バンガロールなどにいる)別のユーザーの顔が見えている。カメラは、参加者同士が実際にお互いの目を見られるような位置にセットされている(その秘密はホログラフィーガラスにある)。
 
だが本当の見ものは、2人の参加者の「中間」にある画面上にドキュメント(あるいはデータモデル)が半透明でスーパーインポーズされるところだ。参加者は、その一部を文字通り指さしたり、(「これをここに動かして、こっちはここに動かして」というように)会話をしながらやりとりできる。同僚が向こう側のガラス上でパントマイムのように指を動かすと、こちら側ではその同僚の指紋までガラス越しに見えるほど、ものを指す感覚はリアルだ(指の数が足りなくなったら鼻も使える)。 



このシステムならトレーニングは不要だ。近寄って、あいさつでもして、目を見て(ちなみに、その方が信頼が深まる)、会話をして、指を指すだけだ。キーボードなども使うだろう、といったあら探しもできるし、反対側にいる相手が藻などで汚れた水槽の中に浮いているようにも見えるが(ホログラフィーガラスに何らかの問題があるようだ)、それさえ我慢すれば、あとはかなり自然な感じだ。実際、このシステムを試す訪問者は、これがごく普通に感じられることに一様に大きな衝撃を受ける。
 
タネを明かすと、「Work Windows」はプロトタイプであり、市販製品ではない。さらに詳しい情報については、発明者の1人である Kelly Dempski までお問い合わせいただきたい。

筆者は毎晩、就寝前に「Wikinomics: How Mass Collaboration Changes Everything」(同書は「パラダイムシフト」という言葉を造り出した Don Tapscott も著者に名を連ねている。筆者は、同氏がこの言葉を作り出したことについて謝罪したのを実際に聞いたことがある)を読んでいる。

ということはつまり、筆者はその内容の大半を覚えていないことになる(ただ、みなさんも同じようなことを絶対に繰り返していると思う)。しかし、筆者は覚えている部分については興味を持っており、今後数回にわたって思い出せる範囲で Wikinomics (ウィキ経済)を概説していきたい。
これまでにないスケールで組織と個人が協力して知識を作りだすマスコラボレーションの時代に突入していく、というのが同書のメインテーマだ。著者が主要例として示し、本書を方向づけるとも仮定できるのが Goldcorp の話だ。

だから? 

カナダの炭鉱会社である Goldcorp には、5万5000エーカー分の広大な土地から採取した400M バイトの定量データ(深層コア試料の分析)があった。この試料から、彼らには金が埋蔵されていることは分かっていた。だが、その正確な場所については分からず、従来の探査テクニックでは2〜3年の期間が必要で、同社にはその時間がなかった(同社は倒産寸前だった)。同社に新しく就任した最高経営責任者(CEO)は経験豊富な元投資信託マネジャーで、採鉱の経験はほとんどなかったが、この定量データを公開し、これを使って採掘に適した場所を特定した人物に賞金を出すよう部下の地質学者たちを(ほとんど無理矢理)説得した。

それは途方もない成功を収めた。地質学者、応用数学者、コンピュータグラフィックス研究者など、50カ国、1000余りの参加者から解析が寄せられた。Goldcorp はこれらの応募資料を使って新たに坑道を掘る場所を割り出し、その大半が実際にかなりの産出を実現した。実際、1993年に1億ドルだった同社の時価総額(株式総額)は今日では90億ドルに達している。

これが素晴らしい話であることに疑問の余地はない。ただ1つ、ちょっとした問題がある。(もちろんみなさんの年齢を考えれば無理だとは思うが)消費者向け商品メーカー各社が自社製品向けに以前実施していた新スローガンやキャッチフレーズのコンテストを覚えているだろうか。採用者にはその企業の製品(芳香剤など)を1年分贈呈するというあれだ。事実上、Goldcorp はこれと同じことを実行し、非常に大きな成功を収めた。しかし、それはマスコラボレーションでも普通のコラボレーションでも何でもない。個人がそれぞれに競う競争であり、参加者が、互いにあるいは Goldcorp と協力することはなかった。格別モダンでも、インターネット対応でもない。人類の歴史そのものと同じくらい古い(あるいは少なくとも芳香剤と同じくらい古い)状態に過ぎなかった。

率直に言って、この例は同書のテーマを多少ぼかしてしまう。Wikinomics の今後の展開は、章を追うごとに楽しみになっていく。筆者は、マスコラボレーションを前面に押し出したこれより明確な例が出てくるかどうかに特に興味がある。同書のタイトルを基本にして考えると、マスコラボレーションの史上最大の成功例である Wikipedia が登場してくるのは想像できると思う。それまではぐっすりと睡眠を取っておきたい。


消費者調査ブームのチャンスを生かそうと、加入者の視聴傾向に関するデータと統計データ情報を組み合わせる「PowerWatch」システムをTiVo が投入している 。視聴傾向に関する TiVo の情報はかなり詳細で、視聴者が見ているものを秒単位で把握している。そのため、(その一部でも)コマーシャルを飛ばせば、彼らには分かってしまう(当然ながら、コマーシャル飛ばしは横行しているが)。また、広告主は TiVo の「StopWatch」サービス経由でその情報を入手できる(そこから床の下まで徹底的に深く掘り下げていく)。

だから? 

StopWatch と PowerWatch を組み合わせることにより、TiVo は前代未聞の心理/統計情報を広告主に提供できるようになる。白状すると、筆者が初めてこのことを聞いたときは、TiVo は顧客が見る各種番組から統計データを入手しているのだと思った。しかし、そうではなかった。顧客は、デジタルビデオレコーダーが当選する権利を獲得する代わりに、自分たちの情報を自主的に提供しているのだ。(応募者数を仮に1000人として)その賞品の予想価値を計算すると、それはおよそ20セントになる。事実上、駄菓子よりも安い金額で自分のプライバシーを捨てていることに彼らは気付いているのだろうか。

TiVo の幸運な体験は、(ほかの国は分からないので、米国の)国民のプライバシーに対する態度の特徴を示している。すなわち、間違いなく神聖なものとして扱う一方で、投げ売りをしているのだ。自分たちの情報を要求されると憤慨するのに、駄菓子を目の前に出されると、火が付いて燃えているかのように着ているものをあっという間に脱ぎ捨てる。TiVo ではまた、広告主が加入者の調査(「一体全体どうして我が社のコマーシャルを飛ばしたのだろう? !」)を実施し、ギャップを埋め、実態をきめ細かく把握できるようにもしている。

いずれにせよ. PowerWatch + StopWatch + 加入者調査は、広告主を一段と幸せにする強力な組み合わせの典型だ。床を元通りきれいにするにはお金がかかるので、それは歓迎である。