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ATL の Knowledge Discovery Capability (2008年01月29日)

 
筆者はここに技術的な書き込みはしないようにしているが、時には例外もある。今回の書き込みもその例外の1つだ。幼少期に「ダンジョンズ&ドラゴンズ(Dungeons Dragons)」で遊んだことのない方は読み飛ばされた方がよいかもしれない。 

やや一般的な名前の付いたアクセンチュア・テクノロジー・ラボの「Knowledge Discovery Capability」(KDC)だが、実は主に研究/調査分野(科学、警察、情報機関、疾病管理、資本市場など)での利用を目的に設計された高機能データ統合/ビジュアライゼーションツールだ。 

KDC の誕生は気になる統計に起因している。世界的に見て、政府の諜報分析機関は作業時間の約8割を(多数のデータベースからの)情報収集に費やし、その分析にはわずか2割しか費やしていないという。さらに、自分たちの見つけた情報と調査対象の問題との関連性にもあまり確信がないという。もう1つ、もっと微妙な問題もある。現行の解析ツールは、質問には答えるが聞いておきたい別の質問を示すことはない。つまり、もし勘違いをしていたら、今のツールではそれを教えてくれないのだ。 

アクセンチュア・テクノロジー・ラボにおける KDC の輝かしい歴史は、アクセンチュアの人事情報を複数のデータベースから抽出して統合する Pocket Exchange から数年前に始まった。これに続いたのが、数十種類のデータベースをスキャンして、より効果的な薬を実現する「Knowledge Discovery Tool」だった。 



だから? 
 




KDC
が搭載するフロントエンドは特許取得済みで、これは単独でも、ポータルもしくは大規模な分析ワークベンチの一部としても導入できる。その応用例の1つが、地図(「ジオビジュアライゼーション」)とビジュアルネットワークナビゲータの相互作用を見せる目的でアクセンチュア・テクノロジー・ラボが開発したプロトタイプだ(星座を結んで星を結ぶ線をたどるようなものを想像すればよい)。ジオビジュアライゼーションには、病気の発生地点と食料輸送や各地方の貨物輸送機の飛行地図をマッピングするような使い方もある。これらのすべての情報を同時にマッピングすれば、病気の発生に関する重要な疑問が解ける可能性がある。だがそれ以上に、莫大な量の可視データにより、聞いておきたい新たな疑問が示される場合もある。 

このネットワーク(スター)ブラウザは、注意人物と、その人物が搭乗したすべての便、そしてそれらの便に搭乗した判明済みの患者などの関係を考察するのに理想的だ。
 

KDC のバックエンドはかなり洗練されたデータアーキテクチャとなっていて、 さまざまなソースの構成要素や関係を統合してくれる。さまざまなタイプのコネクション 人、ニュース、調査報告などの各種構成要素が推論され、取り込まれ、保存されてから地図もしくはネットワークブラウザに表示される。このデータアーキテクチャなら、通常は複数の異なるクエリ言語(そのいくつかは使うのが憂うつなもの)を使って複数のデータベースをまたいだ複数のクエリが必要とされるものが、わずか2つの直感的なメタファー(地図とネットワーク)を使うだけの、はるかにシンプルなクエリとナビゲーション操作で済んでしまう。 

KDC には情報機関向け以外にも応用できる。複雑な構成を探求する必要がある場合は、それが付加価値につながる分野もおそらくある。たとえば、KDC の以前のバージョンは、アイルランド内国歳入省で納税者監査を支援している(アクセンチュア・テクノロジー・ラボのファンクラブのアイルランド支部の会員数がさほど多くないないのはそのためだ)。 

要するに、KDC は多くのポテンシャルを秘めた興味深いツールなのだ。詳細は、アクセンチュア・テクノロジー・ラボでこの分野の責任者を務める Ryan LaSalle までお問い合わせいただきたい。

 


新型デジタルペン (2008年01月28日)


あからさまな宣伝に見えなくもないが、これは実際にまじめな技術評価だ。このことはジャーナリストとして、夫として、父として、そして合衆国大統領として保証する。
 
筆者はいつも新しいユーザーインターフェース関連のハードウェアに興味を持っているが、つい先日、Livescribe の「Digital Pen」を偶然見つけた。同システムはマーキングされた専用の紙と、ペンに搭載された小型カメラを使ってペンの動きをトラッキングし、PC と同期してそのデータを画像もしくは(以下参照)としてアップロードし、マシンが読めるテキストに変換する。特に図などを書かなければならない学生にとっては、入力デバイスとしてこれ以上のものはめったにない。

しかし、それだけではない。ノートを取っていくと、Livescribe のペンは周囲の音声も録音する。したがって、講義を聞いているときは、ノートに関連した部分も自動的に保存することになる(企業などでは悪影響があるかもしれないが、学校ではうまくいく)。このペンは音声を再生することもできるため、ノートを取ったら、同期作業を行わなくてもノートの特定部分に関連付けられた音声をノート PC で再生できる。

だから? 

読者諸兄のことは分からないが、筆者の学生時代にこれがあったら(実際にはできないものの)宙返りして喜んだだろう。デジタルペンは何年も前からあったが、筆者には出力機能の不在が気に入らなかった。入力は素晴らしい(書くことほど自然な作業はないだろう)が、ペンと PC を同期させるまではフィードバックが得られない。それが、場合によっては数時間後になることもある。Livescribe (ちなみに、はやりの「i」何とかというネーミングにしなかっただけでも同社は称賛に値すると思う)のオーディオ出力機能は、そのような状況を大幅に改善してくれる。

実際はまだある。この機能には、だれかに自慢したくなる部分がある。Livescribe のペンにはテキスト読み上げ翻訳機能もある。東京でタクシーを拾っても、「To the airport, please」と書いてボタンを押せば、ペンがこの文章を完璧な日本語(ひょっとしたら関西弁かもしれないが)でドライバーに伝えてくれる。

それは大変結構なことだが、将来的にはどうなのだろうか? スタイラスベースのタブレット PC の入力は、スムーズではあるがボールペンを使う自然な感覚とは依然として比べものにならない。だが、いずれは、1)高機能タブレット PC がノート並みの薄さになり、 2)スタイラスペンが紙にボールペンで書くときの感覚に近づいていくだろう。そうなればデジタルペンの出番はなくなる。

だがその一方で、ノートを取る機会の多い学生などで、会議を録音することが(せいぜい)失礼程度としか見なされない状況にいるなら、Livescribe のシステムには検討に値する非常に高い価値がある。



今回も
Wikinomics: How Mass Collaboration Changes Everything」について解説する長期連載の続きをお送りする。Don Tapscott 氏著の300ページに達する大作の考察も今回で第5回目となる。今回の話題は新アレクサンドリア文化だ。

最初に背景について触れておく。アレクサンドリアの図書館が西暦642年に焼失したとき、そこには50万冊以上の蔵書があった。これは、当時としては驚異的な数だ(これに対し、西暦1500年時点での世界最大の図書館の蔵書はわずか1000冊に過ぎない)。同図書館の蔵書は共有名目で(明らかに強制的に)集められた。アレクサンドリアを訪問する人は、携帯している書籍をすべて書記に複写させる義務があったのだ(これらの訪問者には、原本が返却されるときもあれば写本が返却されるときもあった。人生そのようなものである)。その集大成が、各種研究の出発点となる壮大な公共情報資源だった。

だから? 

Don Tapscott 氏は、われわれが向かうのは研究データが秘蔵されるのではなく公に共有される新アレクサンドリア時代だと考えている。実際的な企業は利他主義の攻撃に屈しつつあるのだろうか? 利他主義者に勝利はあるのだろうか? 以下の考察をお読みいただきたい。

大変な努力の末に入手したデータを公共利用可能なデータベースに寄付する理由としては利己的なものも複数ある(ことが分かっている)。第一に、自分の必要なデータセットが自分だけで用意するにはコストがかかりすぎる可能性もある。全部を入手したいのなら、同じ考えを持った人々と協力し、それぞれが少しずつ用意するのも理にかなう。次に、競合各社がデータセットの一部を発見した時点で特許を取得してしまう懸念もあるだろう。だが、もし同分野のライバル全員が同じ懸念を抱いている(つまりデータのなかの高収益部分が利用できなくなるのを全員が恐れている)なら、新しいアレクサンドリア文化が確立される可能性がある。

最後に(ただし、これはほかの2つの理由がうまくいくとの条件でだが)、データセットの「上で」活用できる競争優位点がある、つまり、これを使えばほかのだれにも作れない製品が作れるとの確信が必要になる。対照的に、もしそのデータ自身が固有の競争優位点であるなら、物惜しみしない気持ちになる可能性は低い。

例を示す。ヒトゲノムプロジェクトでは、主要医薬関連企業が集まってヒト遺伝子解析に向けた画期的協調作業が始まった。大手製薬会社である Pharma は前述の3つの理由すべてをそろえた(また、これは重要かつ難しい洞察力だったことだろう)。特に、ヒト遺伝子が固有の競争優位点ではなく、創薬(同社の中核業務)のための情報の1つになるという認識だ。

考えてみると、オープンソースプロジェクトにもアレクサンドリア文化の趣がある。Linux の例を見ると、IBM だけでも数百人のプログラマーが一生懸命に開発を進めているが、それでもこれはライバル各社に無償で提供されている。(Linux に貢献するほかの企業各社同様) IBM Linux を、それ自体が価値を持つものではなく、その上でほかの価値を生み出すことのできるインフラだと考えている。

これでお分かりいただけたことと思う。Don Tapscott 氏はこれを「前競争的情報共有地
pre-competitive information commons)」(いまひとつ物足りない専門用語だ)と呼んでおり、それは実際的なビジネス上の計算の産物である。ヒッピーでなくとも気に入るはずだ。

次回は参加プラットフォームについて解説する。



New Scientist
が、組織内の電子メールをスキャンして潜在的な泥棒、あるいは内部告発者を検知する空軍技術研究所(AFIT)開発によるソフトウェアの記事を 先ごろ掲載 した。外部へ送信される電子メールにこれを応用し、「機密性の高い」話題への言及部分にフラグを立てる。また、社内電子メールにも応用し、社員の(いわゆる)「不作為の罪」にもフラグを立てる。つまり、同僚と各種行事の話をしていない社員も、「(仲間と)遠ざかっている」とみなされる。そして、機密性の高い話題からあえて遠ざかっているのだと判断されると、危険分子だと仮定される。すなわち、同僚と一緒に飲んだくれていないとソフトウェアによって背信行為を疑われるのである。
 
だから?  

もしこのようなシステムが実際は使い物にならないと思うなら(筆者も記事を読みながらそう思った)、残念ながら、それは完全かつ徹底的に間違った考え方であることをお伝えせねばならない。開発者はこれを Enron から送信された25万通の電子メールに応用し、わずか3人の社員にフラグを立てた。その1人が同社の会計手法の暴露を手助けした内部告発者の Sherron Watkins だった。先の記事は、ほかの2人の社員が最終的に有罪判決を受けた Enron 幹部だったかどうかや、システムによる発見を何人が逃れたかについては言及していない。もちろん、AFIT のシステムが内部告発者の発見に特化していて窃盗犯は検知しないようになっていたら滑稽だ。だが、それでも飛ぶように売れるのは確実だろう。 

ところで、米国のほとんどの州ではこのようなタイプの監視ソフトウェアが完全に合法化されている。欧州では、嫌疑がかかっている社員に対してのみそれが利用できる。だが、ある特定の社員にターゲットを絞ったらその人物のメールを手作業でチェックした方が AFIT のシステムより効果的なので、これは事実上無意味になってしまう。欧州では、同技術を採用した(合法)アプリケーションがあまり見あたらない。

もちろん現代においては、よほど無能な内部告発者(あるいは窃盗犯)でもない限り自社の電子メールアカウントは使わない。内部告発者なら、 USB ドライブに慎重にデータを詰めて味方のジャーナリストに郵送する方法を支持するかもしれない。しかし筆者は最近、USB ポートのトラフィックをログに書き出してサーバに報告するセキュリティソフトウェアの話も耳にしたので、これも必ずしも安全な手段とは言えない。包囲網はかなり厳しくなりつつあり、CIO にとってはうれしい限りだ。筆者は、ノート PC USB ポートに強力瞬間接着剤を塗布して使用不能にする組織の話まで聞いたことがある(実話だ)。

結局、唯一の選択肢となるのは画面キャプチャかもしれない。厄介で、ジャーナリストにとっては大きめの電子メールになってしまうが、これはうまくいく。技術知識の豊富でない内部告発者の方々には以下をお読みいただきたい(データ窃盗犯の方がたは無視していただきたい)。Windows では、「Alt」を押さえながら「プリントスクリーン」キーを押すと最前面のウィンドウの内容(おそらくは有罪判決につながるような電子メール)がバッファに画像としてペーストされる。次に、電子メールを新規作成してこの画像をそこにペーストする。その繰り返しだ。どうだろう。これで送信されるデータはテキストスキャナに解釈できない(だれもが知る限り)無防備な絵の集まりに過ぎない。AFIT のソフトウェアを使ったらどうなるだろう。


次世代支店 (2008年01月23日)


アクセンチュア・テクノロジー・ラボの「次世代支店」(NGB)のデモ環境は、雲ひとつないソフィアアンティポリスにある(フランス南部のニースとカンヌの中間に位置する静かなところだ。でも、筆者はシカゴの冬に鍛えられているので、ここに住んでいなくても悔しくない)。NGB は、(だれもがそうであったように)90年代後半にインターネットに夢中になって支店を閉鎖して仮想の拠点で代用した銀行の誤りを認めるものだ。結局分かったのは、顧客は実店舗の方を好むということだった。彼らにとっては人間のいる窓口と、個人に合わせたサービスの方がよいのだ。彼らは ATM や Web サイトだけとやりとりすることには満足できず、自らの行動によってその意志を示した。銀行はその流れを断ち切るべく再び支店の開設に乗りだした。だが今度は、顧客の支店利用関連で新たに価値を創造するためのやや異なる方法を探し求めている。

だから? 

「新たな価値を創造する」というのは、もちろん、(当座預金、普通預金、預金証書などのほかに)「新たなサービスを販売する」ということだ。銀行は、投資信託や保険を買ってもらいたいし、証券取引口座を開設してもらいたいし、年金を振り込ませて退職後の計画を管理したいのだ。この目標を考慮した NGB は、顧客識別、スクリーニング、データ収集、営業サポートなどの各種技術を利用する。すると、次のような銀行のある日の様子が見えてくる。

顧客が銀行の支店を訪れるとシステムが得意客用 RFID カードをスキャンして来客者を識別し、個々の顧客に合わせたあいさつメッセージを壁に表示する。同時に、営業担当者に顧客が来店したむねの連絡が行き、その顧客の簡単な財務状況も提供される。接客に値する顧客であると判断されると、担当者が近づいてあいさつし、現在の貯蓄率のままでは老後は段ボール箱のなかで生活せざるを得なくなることをやんわりと伝える。顧客は、この問題に対する対策があることに驚き、担当者に招かれるがまま奥の部屋へと入っていく。

すると、そこにはソファーとテーブルがあり、その上にはカフェラッテとタブレット PC が置かれている。担当者と顧客が席に着くと、担当者は個人年金計画のシミュレータを起動し、数字の代わりに絵(車、家、大学など)を使って財務計画固有のトレードオフの説明を行う。(Passat から Porsche などに乗り換えていくような)車に関する上昇志向があると、子どもの行く大学が Harvard ではなく教育現場とはほど遠い内容の学校に変わってしまう。対照的に、家の規模を抑えめにしておけばもっと寄付金を出せる、といった具合だ。

その一方で、別の担当者は顧客が見ているパンフレットを把握しておき(パンフレットをスマートラックに入れておけばこれが可能になる)、その情報を使うことで、だれに、どのような言葉をかけてアプローチするのかを判断する(この情報は個々の顧客の記録として保管され、あとから電話や電子メールでアプローチする際に利用される)。もう1つのシステムは、行列の長さ、待ち時間、そして流れのパターンをトラッキングする。このデータは人員配備や支店のレイアウトの最適化にも使える。

前述のソファーでは、顧客と営業担当者が顧客のリスクプロファイルにマッチした退職基金の調査に着手しており、そこに担当者の頭を真っ白にさせるような複雑な質問が顧客から出てくる。担当者は多少正気を取り戻すと、本部にいる年金の専門家に連絡を取り、その専門家が詳しい説明を行うと同時に画面をコントロールして複合収益の魅力を絵を駆使して説明する。ここまで専門知識があるとは思っていなかった顧客は、この専門家の知識に魅了され、「老後安心ファンド2035」などといった名前のファンドを大量に購入し、自分の老後を自分で管理することにする。しかも、明日から段ボール箱のなかで生活しなければならないほど大量にだ。だがこれは、(営業担当者が親切に指摘するように)経済的な安全性の代価としてはたいした額ではない。

このほかにも、入金伝票記入用の電子ペン、3G 電話機を使ったリモート専門情報提供、顔認識 ATM など、統計支店管理サポートシステムの中身はまだあるが、今回はもう説明する時間がない。次世代支店の詳細を知りたい場合は、アクセンチュア・テクノロジー・ラボでこのプロジェクトをまとめる Emmanuel Viale までお問い合わせいただきたい。