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写真を撮られよう (2008年03月13日)


オスカー ワイルドの著書に「The Picture of Dorian Gray (ドリアン・グレイの肖像 )」という作品がある。Dorian という若者は、自分の肖像画を持っている。彼は毎日夜遅くまで起きていて、 完全に堕落した生活を送っている。彼自身には(堕落した生活の)悪影響は全く見られないのだが、一方で彼の持っている肖像画にはそれが着実に反映され、年を重ねるごとにゆがんでいく。ここで結末は暴露しないが、それが美しいものでないことだけは伝えておく
 
これで思い出したのが、われわれのソフィアアンティポリス研究所が開発した「The Mirror of Dorian Gray」(ドリアン・グレイの鏡)、またの名を「Persuasive Mirror」(PM:説得力のある鏡)というものだ。PM は、運動習慣、食習慣、そして喫煙習慣などを入力すると、今の生活を続けた場合の5年後、10年後、そして20年後の画像を作り出してくれる。これを試した人は、その結果を見て引きつった顔で笑いがちだ。
 
だから? 
 
「カプトロジ(Captology)」(Computer as Persuasive Technology)とは、人間の習性を変えるためのコンピュータの用法だ(訳者注:人の考え方や行動に変化を及ぼす説得力を持ったコンピュータのこと)。簡単な例としては、エアロバイクとテレビを接続し、ユーザーが特定の速度を下回ると映像をぼかすといった使い方がある。鮮明な映像を見たいユーザーは、この規定値より速い速度を保つようになり、なにもない場合よりも運動するようになる。カプトロジのもっと複雑な例として、ソフィアアンティポリスには顔の画像にモーフィングをかけ、自分の子どもの体重増に対する親の認識を変えるというプロジェクトもある。
 
ヘルスケアがベースのカプトロジはチャンスであふれる分野だ。たとえば筆者は、アボカド程度の大きさで腹部に埋め込む方式のセンサパッケージを使って、心拍数、血圧、血糖値、コレステロールなどをモニタリングできれば、保険会社との関係も大きく変わるかもしれないと考えることが多かった。特に、生活習慣が良好であれば保険料の大幅な割引きもあるかもしれない。
 
想像してみていただきたい。この「アボカド」マシンからセンサがあなたの体中に伸びている。そして、鬼のように運動をして実際に保険料を大幅に下げようとジョギングに出かける。保険会社はあなたがジョギングをしていることや、そのコースまで把握して心拍数をモニタリングする。しかも、「アボカド」マシンは GPS も搭載している(だから、卒倒しても救急車があなたを見つけて駆けつける)。そのあと会社に出社すると保険会社からの電子メールが届いており、「お疲れさまです。今月は保険料を5ドルお引きいたします」と書いてある。これで気分は最高である。
 
そして昼休み。ここで挫折して、こってりしたソーセージを食べてしまう。すると、胃をモニタリングしている保険会社にはその行動が筒抜けになる。席に戻ると電子メールが届いていて、「何を召し上がったかは分かりませんが、保険料は25ドルの値上げになります」と書いてあるのだ。
 
ソフィアアンティポリス研究所では、さまざまなプロジェクトでカプトロジの研究を積極的に進めている(ただし、アボカドは使っていない)。さらに詳しい情報は、アクセンチュア・テクノロジー・ラボのAgata Opalach  まで気軽にお問い合わせいただきたい。


Requirements Critic
(「RC」)は、われわれのシリコンバレーとバンガロールの両研究所(時差がほぼ完ぺきな11.5時間)が要求開発(訳者注:本当に役に立つシステムを開発するため、顧客の真の「要求」を開発すること)プロセスの支援手段を模索する共同プロジェクトだ。現在のプロトタイプは Microsoft Word 用プラグインとなっており、要求定義で一般的な各種問題を探す点を除き、グラマーチェッカのように動作する。

RC は、両アクセンチュア・テクノロジー・ラボが Global Delivery Excellence グループと共同開発した要求工学(訳者注:要求仕様化プロセスを工学的に定式化する技術)に関する技術革新課題の1つとなっており、これを包含するビジョンが「Accenture Requirements Engineering Suite ACRES)」と呼ばれるものだ。アクセンチュア・テクノロジー・ラボが作業を進めるこの総合スイートには、市販製品とラボ開発のツールを組み合わせたものが組み込まれる。

だから? 

ある統計によるとプロジェクトの手直しの82%は、要求の不備が原因だということなので、ソフトウェアの品質を何とかしたいときに重視すべき場所は明らかだろう。シリコンバレーのラボはこれを考慮した上で、要求に関する調査に多大な投資をしてきた。Requirements Critic はその最初の成果物なのだ。

一般に、うまく書かれた要求(もしこのようなものが存在すればだが)には、行動(キーを押すなど)を起こす仲介者(人など)が必要である。これらの仲介者と行動には、要求定義書全体で一貫した説明が必要だが、定義書が大きくなれば一貫性を維持することが困難になる。また、矛盾が混乱を招き、これが手直し、経費超過、そして全体の不良へとつながる。

Requirements Critic は、定義書のなかの仲介者/行動のギャップを指摘し、より一層重要なこととして、要求と許容条件との照合を行う。また、漠然で危険だと専門家が考える「使いやすい」、「強力な暗号技術」、あるいは「非常に高速」といった問題のありそうな文章も指摘する。

Requirements Critic は、要求定義書の明瞭度と一貫性の改善を目指している。これは、可能な限りの再利用を推奨することでアナリストのプロセス、製品、および効率性を改善するという、より広範囲におよぶ目標の一環となっている。

これらの目標を支援すべく、このチームでは複数の野心的なツールの投入計画を進めている。「Reuse Assistant」、「Methods Assistant」、「Visualization and Prototyping Toolkit」、そして「Session Capture and Annotation Toolkit」などだ。


ペンは剣よりも気分が分かる (2008年03月11日)


Philips
が「気分検知ペン」とでも呼ぶものを 発表した 。これは、ペンに各種センサ類(心拍数、血圧、皮膚温度、指圧)が組み込まれたもので、これらをまとめて利用することで精神状態を判断し、それにしたがって反応するというもの。書いている最中にインクの色やペン先の形が変化するため、その判読方法が分かれば筆跡から書き手の感情の変化が読み取れる。Philips によると、「現在、署名はいつも同じだが、書類によっては熱意を持って署名されたものや、ためらいながら署名されたものもある。これを記録することができれば、歴史的観点から有益なものになり得る」。

そうか。まあ、確かにそうだ。

だから? 

これが珍品であり、市販の可能性が低いことは認める。だが、それでも単に「技術的に色分けされた」文字が書ける以上の評価は与えるべきだろう。インクの色はひとまず忘れ、センサだけに焦点を当てよう。(加圧帯などを使わず)触れるだけで血圧を検知するのはかなり巧妙な技術だ。血圧(および皮膚温度や心拍数)計測機能付きペンダントを首にかけたらどうだろう。このペンダントが携帯電話との通信(11回データを渡す)に Bluetooth を使っても、バッテリはかなり長期間もつだろう。

ここで魅力なのは、利便性と、技術が出しゃばらないことだ。ストラップも埋め込み手術も不要で、軽く、バッテリの交換も最小限で済む。ここまでシンプルになれば、大半の人は医療監視を喜んで受け入れるのではと思う。ただし、データの解析が課題だ。このペンダントが数百万個もあると、世界中の医師が協力しても到底追いつかない。だが幸いにも、心臓血管関係のデータストリームから異常を検出できる非常に洗練されたソフトウェアがある。

実際筆者は、正しい分析ソフトウェアを使えば心臓発作の発生を予測できるという話をセンサベンダーから(非公式に)聞いたことがある。何日も前のことだ。特定疾病の家族歴を持ち、年老いていく団塊の世代の1人として言わせてもらえば、 この類事実にはある程度興味をそそられる。ただもし何かあっても、そのときは自分が冷静でいられると思いたい(「ねえ、10分で心臓発作が起こるから緊急治療室まで車で送ってくれないか? 」)