電子出版を手掛けられている株式会社ボイジャー代表取締役社長 荻野正昭氏にインタビューしました。(取材日:2007/10/18/聞き手:PDB吉岡勇紀)


--現在の事業内容をお教えください。

当社は、電子出版を15年ほど前から先駆け的に取り組んでおります。電子出版の普及、一般化を進めるために、電子本ビューア『ティータイム(T-Time)』や、横書きの文章データを読みやすい文庫形式に変換させ、様々なデバイスで読むことを実現させる縦書きブラウザ『アジュール(azur)』、出版物の電子的なフォーマットとなる「ドットブック(.book)」といったツールの開発・提供に力を注いできました。

ネット時代のデジタル情報は扱いやすい反面、例えばOSのバージョンアップ、ハードの生産中止等により、読めなくなってしまうという弱点もあります。出版物はいかなる時間、場所においても、またどんなデバイスでも可読でき、残り続けるものとして存在させる必要があると考えています。デジタルということで、ハードやソフトウェアに依存してしまうのです。当社のツールを利用すれば、PCでも携帯でもPSPでもiPod、iPod touch でも見ることが出来ます。

インターネット上には、例えば「青空文庫」という著作権の切れた小説がテキスト提供されているサイトがありますが、HTMLで横書きの小説を読むのは大変です。また、やはり携帯して空いた時間に読みたいというニーズが圧倒的に大きいのです。当社のツールによって、ハードの制限が無くなり、普段使っている、携帯電話、iPod、PDAなどのハードで電子書籍を読むことを可能としているのです。

また、最近では携帯小説といったジャンルがあるように、モバイル上の小説に注目が集まっています。そういったモバイルサイトへは、ビューアをライセンス提供しています。モバイル3キャリアで420サイト程に当社のビューアが導入されています。全体においてはの9割近くのシェアですので、ほとんどのサイトで当社のビューアが使われていることになります。

--起業に至った経緯は?

私は設立前までは、パイオニアでレーザーディスクの仕事をしていました。インタラクティブ、今はあんまり言いませんが「双方向」メディアの事業に取り組んでおりました。レーザーとPCを絡めた事業の部署がありました。そこの部署の有志が集まり、アメリカにあったボイジャーという会社とのジョイントベンチャーとしてスタートしました。現在の株主には講談社と新潮社とインプレス社がおります。

映像はお金がかかる業界ですので簡単には出来ません。しかし、出版物は映像と比べると一桁、二桁必要となる金額が違います。そこで、自分たちでも出来るのではないかと考え、電子出版を手がけることにしました。誰かが作ったものを、受け取るだけではなく、もっと手軽に自分達から発信することを可能にするのは電子出版だと思いました。しかも、デジタルで作れば、製造費は極端に安くなり、在庫も必要なくなりますので、非常にリーズナブルな形で出版を実現できるのではないかと考えました。

--市場環境を含め、現在はどのような成長フェーズと考えていますか?

当社の立ち上げは、今から遡ること15年前のことです。当時は人がPCの画面で本を読むというスタイルがまるで無いというのが問題でした。かなり先走りしてやっていたと思います。新しもの好きの間では注目されましたが、世間に普及するということではなかなか難しかったのが実情でした。

しかしながら、ようやく市場も拡大時期に入ってきました。ブログなど、文字を読んだり書いたりする文化も育まれてきましたし、モバイルなど、ハードのインフラも整ってきています。

普通ベンチャーというと、いいアイデアや技術などで世の中に切り込んでいくような印象ですがこの15年、悉く失敗を繰り返してきました。弊社だけではなくこれまで様々な企業が電子出版に参入してツールを販売していましたが、ほとんどの企業は撤退してしまいました。その中で当社が得てきた経験を活かす事で、今後さらに芯の強いベンチャーとして成長できるのだと思っています。

--今後どのような成長戦略を考えていらっしゃるのですか?

「今そこにある液晶デバイスを本にする」というのが当社のスローガンです。電子的な本は一番消えやすいものですから、これまで書かれたものは多くあっても、泡みたいに消えてしまいます。だからこそ、当社はデジタルでも「残り続ける」出版を目指しています。そのためのツール、仕組みを作ってきました。

本はそれ自体を読むことが出来ますが、電子本は読む道具が必要となってきます。そうは言うものの、本も電子的なデータから刷られているのが現状です。この電子的なデータを我々は「原液」と呼んでおり、これをあらゆる液晶デバイスに注ぎ込んで、注ぎ込まれたデバイスが本になる、当社が作ってきたのはそういう仕組みです。
 
 さらに今後は当社でも自社の企画を立てて電子出版を行っていきたいと考えています。これまで電子出版を広めていくためにビューアを提供してきましたが、インフラが整いつつあり、市場が活性化されていくなかで、出版社としての活動も手掛けていきたいと考えています。

--企業としてどのような目標を掲げていますか?


紙の出版は1996年を境になだらかに減少傾向にあります。96年の時点で2兆5千億。今は2兆2千億です。電子出版は2010年までには1000億円に達するのではないかと予想されています。やがては出版全体の1割程度を電子出版が占めてくる予想です。その中で、電子出版といえばボイジャーといわれるよう、これからも今まで以上に積極的に取り組んでいきたいと考えています。

■株式会社ボイジャーの企業概要

社名:株式会社 ボイジャー
代表者:萩野 正昭
資本金:43,690,000円
住所:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前5-41-14
TEL:03-5467-7070
FAX:03-5467-7080
URL:http://www.voyager.co.jp/

事業内容
1.映像、音声、文字を利用したソフトウェアの企画、制作、出版及び販売

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