{IW2000}日本型ベンチャーハビタットの現状と今後:サンブリッジ -(2)SurveyがエンジェルファンドやIT系のベンチャーキャピタリストに対して行なった調査によりますと、投資を決定す
る際に重要と思われる要素のうち上位3つは人に対する評価です。最も重要とされているのは、その人が事業に対し
てどのくらいの情熱を持っているか、ということです。次にその人の信頼性、約束をまもれる人かどうか、自分の強
みだけでなく弱みも分かっているかどうかということ。3番目は、その人の能力、スキル、ノウハウ、提案する事業
内容を実現できそうかどうか、ビジネスの内容と能力があっているかどうかということ。そして、4番目と5番目に商
品の販売ポテンシャルとマーケットの可能性が挙げられています。
最近、日本では、ビジネス特許を取るべきだという変な動きがあります。「ビジネスモデル特許申請中」とすれば、 キャピタリスト達が喜ぶと思っている人がいますが、これは大間違いです。ビジネス特許というのは、ビジネスを成 功させる要因が仮に100あるとしたらせいぜい90番目くらいでしょう。ビジネス特許を取っていようといまいと、顧 客のニーズに合ったサービスを提供できるかどうかには全く関係ない。そんなことに、無駄な時間をかけるよりは、 どうやってよいサービスを提供できるかというビジネスの基本をもっと頑張るべきだと思います。 こういった観点で見てみると、信頼度という点では日本人の方がアメリカ人よりも高いと思います。日本人には 勤勉で責任感がある人が多い。しかも、大企業でつまらない仕事をしている人でさえ夜遅くまで働くわけですから、 自分が心からやりたいと思った事業に対する情熱は、絶対アメリカ人にも負けないと思います。ですから、信頼性や パッションという点では、日本人も全く負けてない。ビジネスポテンシャルも日本のマーケットを見てもそれなりに 大きいと思いますし、海外展開も考えられる訳ですから、ビジネスのアイデアとやる気次第で成功できる可能性は大 きいのではないかと思います。つまり、世界的に通用するようなベンチャーを生み出すシーズ(種)は絶対に日本に もあるということです。 ◆日本のベンチャーを取り巻く環境 では、日本でベンチャーが育たないのはどうしてなのか。一体何がいけないのでしょうか。私は、日本ベンチャーには 「ハビタット」が不足していることが問題なのだと思います。 「ハビタット」という単語は、環境や生体系のことを指します。ある生物にとって最も適した環境、 活き活きと生活できる環境を指す言葉です。ですから、「ベンチャーハビタット」というのは、 ベンチャー企業を活き活きと育てられるような環境、例えば、技術力、人、情熱、マーケット、資金力、営業、 ブランディングといったような、ビジネスの種を大きく育てる要素が揃った環境のことを指します。 アマゾンの熱帯雨林が自然環境における最も豊かなハビタットだとすれば、世界で最も豊かな「ベンチャーハビタッ ト」は、アメリカのシリコンバレーだと思います。先月、スタンフォード大学の研究所からシリコンバレーのベンチャ ーを育成する環境基盤についてのレポートが発表されました。一言でまとめますと、それは「経験とノウハウの共有」 ということだと思います。経験を積極的、専門的に提供するプレイヤーがいて、そこに相談すればベンチャーに必要な ノウハウが揃うというオープンな環境が重要なのです。 では、日本のベンチャーを取り巻く環境はどうでしょうか。シリコンバレーが熱帯雨林だとすれば、日本は砂漠なので はないでしょうか。しかし、砂漠とは言え全く植物が育たないわけではない。砂漠にはオアシスもありますし、サボテ ンのような我慢強い植物なら育ちます。日本には、ベンチャーの芽、つまり、アイデアや人、マーケットポテンシャル が生まれる環境はありますが、それが大企業の中にあるということが問題なのです。確かに、大企業が事業化を許して さえくれれば、営業力、技術力、資金力、会計、など事業を大きく育てる要素が揃います。 しかし仮に、大企業の中に優秀なアイデアを持った人がいて、上司に提案したとしても、 「アナタの言っていることは分からない。そんなこと考えているヒマがあるなら、もっと今の仕事をしなさい」 と跳ね返されてしまうことも多い。他にもいろんな理由が考えられますが、せっかくの良いアイデアが 事業化されない可能性も非常に高いといえるでしょう。 日本では、「どうしても自分で事業をやりたい」と思ったら会社を辞めるしかありません。ところが、そういった情熱 を持った人でも一旦、大企業の外に出てしまうと、資金的なサポートがなくなり、技術スタッフや商品を売り込むマー ケッターが採用できないといった状況に追いやられてしまうのです。日本では、大企業のオアシスから出てしまうと本 当に砂漠に放り出されてしまい、高いポテンシャルを持っているアイデアであっても、 サボテンのようによっぽど我慢強い人でなければ成功させることは難しい。 それに比べてシリコンバレーでは、もちろん、全部が全部受け入れられるとは限らないですが、内容が良く、その人に パッションがあれば、いつかはスポンサーになってくれる人に出会い、営業力、資金、技術などを集められる。シリコ ンバレーはそういう環境なのです。 ◆変わりつつある日本 しかし、最近になってようやく砂漠状態の日本にも雨が降り始めているように思います。政府も商法を改正したり、 株式マーケットに関しても早い段階で公開して資金を集めたりできるようになりました。また、ベンチャーキャピタ リスト達も初期の段階で投資をしようとしていますし、資金だけでなく、人材などいろんな面から支援を提供しよう としています。こういった環境の変化をもたらした要因の1つに、インターネットが挙げられると思います。特に、 インターネットビジネスを見てみるとこういった変化がよく分かるのではないかと思います。 アメリカと日本の2000年の4月から6月に集計された人気Webサイトの上位20位を比べてみますと、アメリカの場合、ベ ンチャー企業生まれのWebサイトの割合が75%と高い。それに比べて日本は、30%と極めて少ないのですが、面白いこ とに、99年の8月と2000年の6月を比べてみると、日本の場合、人気度で見てみるとベンチャーから生まれたWebサイ トは全部人気度が上がっているのが分かります。つまり、大企業のWebサイトとくらべて、想像力に溢れて人気を集める Webサイトを作っているのはベンチャー企業だ、ということが言えると思います。これは、インターネットビジネスの 分野から変わり始めているという証拠の1つと言えるのではないでしょうか。 最後に、サンブリッジのビジョンについてお話したいと思います。我々サンブリッジは、皆さんと一緒にベンチャー を育てる「ベンチャーハビタット」を作っていきたいと思っています。例えば、ビジネスプランを持っている人や 立ち上げ段階の会社に対して、法律、経営、過程における事務的な部分の手間を省けるような活動を、 また、働く場所の提供、資金提供など、いわゆる「ベンチャーインキュベーション」と呼ばれる活動を行なっていま す。さらに、技術者集団のベンチャーで商品を売る方法が分からない場合には、商品を売り込む営業面のサポートを行 いますし、技術力は弱いけれども営業力はあるといったベンチャーには技術面のサポートなどを行っています。こうい った活動を通じて大企業から相談を受けることも多く、最近では日本の大企業もスピンアウト型のベンチャーや社内ベ ンチャー制度を真剣に考えているということを感じます。シリコンバレーの良い所は、大企業で経験を積んできた人が ベンチャー企業を立ち上げ、大企業時代のネットワークを活かしながら、ベンチャーと大企業を結びつけている所で す。日本でも起業家が大企業から飛び出した時に砂漠で死んでしまうことなく、他のベンチャー企業などと情報を共有 して大きく育っていけるような環境を作っていきたいと思います。そして、日本のベンチャー砂漠をオアシスに変えて いけるように、皆さんと一緒に頑張って行きたいと思っています。 (2000/11/30講演) 関連記事 最新トップニュース
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