Xbox にみる Microsoft の危うい綱渡りハードウェアを原価割れで販売し、積極的な競争を仕掛けることは、家庭用ゲーム機業界では、もはやあまり魅力的な手法ではなくなっている。しかし、Microsoft がとっている手法は、まさにこの2点だ。同社が家庭用ゲーム機市場で、莫大な利益を得ることができるかどうかは、ある重要な仮定が成立しなければならない。すなわち、オンラインマルチプレーヤーゲームが、有料サービスとして成立して大きな収入源になり、ブロードバンドサービス拡大の火種になるかどうかという点だ。
もちろん、家庭用ゲーム機市場に、多大なビジネスチャンスがあるのは疑うべくも無い。ゲーム業界大手の Nintendo は、2001年3月までの4四半期間で、売上高73億5000万ドルを稼ぎ出し、利益は13億6000万ドルとなっている。市場全般の状況を考えれば、悪くない数字だ。 Sony が今年前半に Playstation 2 を発売し、一足早く次世代ゲーム機の名乗りをあげた。Microsoft と Nintendo も、先ごろ次世代機を市場に投入しており、業界はどこが勝ち組になるのかとの想いが入り乱れている。 もちろんお金のことを無視するわけにはいかない。当然ゲーム機メーカーは、ハードウェアの原価割れ販売で生じる損失の埋め合わせを、ソフトの売上でまかなうという、財務的なリスクを背負わなければならない。危ういとはいえ、きちんとバランス良くこなせば、十分な利益を生み出す可能性はある。しかし、わずかでも見込み違いがあれば、破綻してしまいかねない。 Xbox の製造原価は、およそ425ドル前後と目されている。Microsoft が米国内で販売している単品価格は299ドルだ。同社は2002年6月まで、すなわち同社の会計年度2002年通期の販売台数を、500万台と見込んでいる。当然本体販売だけでは丸損なので、関連製品の売上や有料オンラインゲームサービスといった、関連サービスの売上に、大きな期待を寄せているのは間違いない。 Xbox のコスト高をさらに助長しているのは、専用のカスタムチップを作らずに、汎用部品で固めたことも大きな要因になっている。Sony は、生産の効率化が主要因となって、Playstation の生産原価を、当初の480ドルから80ドルにまで引き下げることができた。Xbox の場合は、構成部品が汎用品のため、各方面の経済事情が、すでに部品価格に織り込まれており、製造原価を引き下げるのは、少々難しいかもしれない。 Microsoft は、Xbox の現販売価格を実現するため、原価と販売価格の差をかなり大きくとっている。となれば同社は、価格差を上回るだけの売上を、何らかの手段で得なければならない。同社が原価割れの穴埋め手段と考えているのは、オンラインマルチプレーヤーゲームと、ゲーム機の機能を拡張するためのオプション品だ。 Sony も、有料音楽配信サービス等のデジタルエンターテインメントサービスの受け皿として、Playstation 2 を捉え、大きな期待を寄せているのは、周知の事実だ。しかし同社は、予定していたブロードバンドアダプターの発売を、2002年後半にまで延期しており、熱くたぎる期待に冷水を浴びせる形となっている。 したがって、ネットワークゲーム機市場の先鞭は、Microsoft がつけることになる。少なくとも短期的には独占市場ということだ。ただし、オンラインゲームは、PC 市場では成功を収めているものの、だからといって家庭用ゲーム機市場でも成功するとは限らない。現在複数のオンラインロールプレイングゲームが、PC 市場で人気を博しており、莫大なサービス利用料売上を稼ぎ出している。例えば Sony の『Everquest』は、毎月10ドルのサービス料金を支払う利用者を、およそ35万人抱えている。同様に『Ultima Online』も、毎月10ドル払ってくれる利用者が、23万5000人もいる。 これだけのビジネス規模が、そのまま家庭用ゲーム機でも実現するかどうかは、メーカーが考えているほど単純にいかない。一番大きな懸念要因は、ゲーマー連中がブロードバンド接続サービスを使って、家庭用ゲーム機をインターネットにつながなくてはならないという事実だ。 もちろん、オーストラリアでは最終的にゲーム機が、ブロードバンド普及促進の柱になるかもしれないとの見方があり、韓国 (ブロードバンド普及率が50%もある) では、オンラインゲームがブロードバンド普及の中心的な役割を果たしてきた、という事実も無いわけではない。 しかし、Microsoft がオンラインゲームサービスで売上を得ることができないとすれば、ただそれだけで同社のもくろみは危うくなってくる。例えば同社が、ソフト販売だけで、ハードウェアの原価割れ分をまかなうとすれば、ゲーム機1台につき、8本ないし9本のゲームソフトを売らなければならない。これはどう考えても危うい橋といわざるを得ない。無論、無理だと言い切るだけの材料は無い。がしかし、失敗を許容する余地は、あまりに少ないといえるだろう。 関連記事 最新トップニュース
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