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Web サイト設計における世界観しばし三題噺におつきあい願いたい。
その1。 『オトナ語の謎。』は、糸井重里氏主宰のサイト『ほぼ日刊イトイ新聞』での連載がまとめられたもので、現在ヒット中の書籍である。 その中で、 社会人たちがオフィスで当たり前のように使用している一種独特な言葉をオトナ語として紹介しているが、 通常の言葉では表しがたい微妙な含みや気遣い(ないしは気遣いをしていますと示す 態度)をなんとか言語化しようという、 全国の社会人の努力をかいま見ることができておもしろい。 「社会人としてのペルソナ(仮面)を被って生きていくということはどういうことか」についてを、 言葉遣いという面から明らかにしているとも言えるだろう。 その2。 匿名掲示板『2ちゃんねるは、 今さらあえて説明する必要もないほど有名なサイトであるが、 匿名性に対してではなく、 2ちゃんねるユーザーが使用する言葉――いわゆる2ちゃんねる用語に対して嫌悪感を覚え、 拒否反応を示す人が存在する。 2ちゃんねるの外でそのような言葉が使われていると、 仲間に入ることを承諾したわけでもないのに、 仲間うちで使用されているジャーゴンを強要されているような気持ちになるかららしい。 この例に限らず、 一般に、 ジャーゴンが流通している世界の「外」からジャーゴン解釈を行う場合、 解釈を要請される側の負荷は高くなる。 その3。世界観という言葉がある。 フィクションにおいてどういう世界設定を行うかということであるが、 オタクと呼ばれる人間はこの世界観――物語世界がどういう価値観にもとづいて成立しているか――に非常に意識的である。 現実世界への適応不全感から、 オルタナティブとしての物語消費を志す人間をオタクと呼ぶとするなら、であるが。 反対にオタクである内的必然性がなく、 ファンタジー小説や SF などにもなじみのない人にとっては、 さほど意識されていない概念でもある。 現実の外の世界を必要とするかしないか――必要とする度合いは、 現実世界が頼りになるかならないか、 そしてその中でうまく立ち回れるか否かなどに依存すると考えられるが――によって世界観への意識は異なるのである。 これら3つから何を言いたいのか? 人間はそもそもあらゆる局面において判で押したような決まりきった反応を示すマシンではなく、 場やコンテキストに応じて変わりうる柔軟さを持つ存在であるのに、 同じ環境にい続け、 同種の思考体系や価値観に長期間さらされ続けることで、 思考の硬直化が始まるのではないか、ということである。 社会人として適応しようとして便宜的に使い始めた「第ニ外国語」としてのオトナ語に染まりきってしまい、 そういう言葉しか使えなくなったりすることがあるのではないか。 オトナ語ならまだ他社の人間とも意思疎通ができるのだが、 自社社内でしか通用しないジャーゴンを社外の人間との会話にも持ち出し、 知らず知らず相手側に一方的に解釈を強要しているのではないか。 つまり、長く会社勤めをしていくうちに、 社内での価値観が自分にとって唯一無二のものになってしまい、 異なる世界が存在しており、 異なる世界観にもとづいて暮らしている人たちが存在する(場合によってはこちらのほうが世間では多数派であったりする)ということを考える想像力が枯れていくのではないか、 ということである。 ペルソナを被っているつもりが、 いつのまにかそれが自分の素顔になってしまっているのではないか。 少し話が変わるが、 EC 系のサイトで、 商品が実際にサイト内に存在するのに、 ユーザーがそれに気づかないということは、 サイト運営側の予測以上に起こりうることである。 また、ユーザーが最終的に商品を探しあてることができたとしても、 思いも寄らぬ遠回りをしている場合もある。 これらは、その商品がどのカテゴリに属するか、 ユーザー側の想像や期待とサイト運営側が提供しているものとの間でズレが存在しているために生じている問題である。 ユーザーテストを実施することでズレを発見することはできる。 しかし、 そのズレを解消するための手法を誤ってはならない。 文字づらや表現を修正したり、注釈をつける、 ヘルプを増補するというのは、あくまで補足的な手法である。 例えば、 ユーザーにとって区別がつきにくい2つの商品(サイト運営側にとっては、 取り扱い部門が異なるのでその区別が重要であったりするのだが)の区別をさせるために、 それぞれに長々とした注釈をつけるのは、 本質的な解決にはならない。 そもそも理解しにくいものを作成しておき、 注釈を読んで理解してもらいたいというのは、 運営側の都合を押しつけることでしかない。 情報分類自体をユーザーの立場に立って見直しをし、 その上で補足手法を用いていかなくてはならない。 Web サイト設計においては、 そのサイトがどのような世界観にもとづいて、 誰に向けて発信されているのかを常に意識することが重要なのである。 記事提供:ファンサイド
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