Enterprise Search Summit 2004(後編)5月11日と12日、
New York にて開催された Enterprise Search Summit 2004 に参加し
、米国のエンタープライズサーチの状況について視察してきた。
今回はそのレポートの3回目にして最終回である(2回目はこちら)。 ■Enterprise Search Summit 2004 プログラム 2日間にわたるプログラムの内容は、大きく以下の5ジャンルに分けられる。 1. エンタープライズサーチの概論とトレンド紹介 2. テクニカルセッション(サーチの仕組み、メタデータ、情報アーキテクチャ、 CMS との共存) 3. 製品導入・選定アドバイス 4. 導入事例 5. 各社製品プレゼンテーション 中でも興味深かったのは、 Air Products Chemicals の、 実際のエンタープライズサーチ導入過程を発表したセッション「Inside the Enterprise:The Decision Process」だった。 ガス・化学製品の多国籍サプライヤである Air Products Chemicals は、 社内のナレッジマネジメント戦略の一環として、 エンタープライズサーチのリニューアルを行った。 そのリニューアルプロジェクトにおける戦略・プランニングフェーズ、 ユーザーテストフェーズ、 設計・意思決定フェーズに関して、 それぞれの担当者により具体的に説明が行われたのである。 今回はこのセッションの内容について紹介していく。 ■導入事例――戦略・プランニング 戦略・プランニングフェーズにおいては、 シソーラス(類義語)辞書、 キーワードに対応する「Best Bets」(いちおし、最善)検索結果、 メタデータ(ダブリンコア(Dublin Core)のメタデータ要素タイプをカスタマイズ)の開発についての方針が定められた。 日本では Web 開発において、 規模の大小に関わらず、 デザインやシステムなど、 誰にでも成果が見えてわかりやすいものばかりが話題にのぼりがちで、 メニューやコンテンツに使われる言葉や語彙などは軽視されやすい。 プログラマやデザイナーが片手間で考えたメニュー名称がそのまま流通してしまったり、複数の表現が存在する言葉が統一されず、 ページによってまちまちの形で本番サイトに適用されることがあり、 それが使いづらい Web サイトを生む原因のひとつになっている。 キーワード検索で思ったような結果が出ない場合の原因ともなりうる。 しかしながら、 Web サイトのコンテンツを、一過性ですぐ消えてしまう泡のようなものではなく、 改訂を重ねながらアーカイブとしてストックされていくドキュメントであると考えた場合、 とりわけ大規模な Web サイト構築において、 言葉にまつわるルールづくり、辞書づくりというのは重要である。 Web サイト構築に関する何もかもすべてを米国に倣うべきである、 とは筆者は考えないが、 ことドキュメントマネジメントという点に関しては、 ドキュメントの作成・管理、 そしてコミュニケーションツールとしての活用の仕方において、 米国に一日の長があると考える。 エンタープライズサーチのリニューアルにおいても、 実装に先立つプランニングフェーズで、 シソーラスをはじめとする言葉関連の方針がまず固められるというのは、 学ぶべき点ではないだろうか。 ■導入事例――ユーザーテスト ユーザーテストフェーズにおいては、 まず、旧バージョンのサーチが持つ問題点の洗い出しを行い、 新サーチのプロトタイプ作成を行う。 旧バージョンには、以下のような欠点があった。 ・検索オプションの設定が毎回必要(簡易検索が存在しない) ・検索対象がイントラネット内部の Web ページに限定されている ・「Best Bets」がない (検索結果がすべて同等の扱いになっているので、 どれが重要ページかをユーザーが読んで判断する必要がある) ・ユーザーにとって必要なオプション(日付選択など)がない ・その反面、ユーザーがほとんど使わないオプションが存在している これらの欠点を改善したのち、 機能チェック(サーチ機能が正しく機能しているかどうか?)とユーザビリティチェック(使い勝手はどうか?満足できる検索結果が出ているか?)の両方向からユーザーテストを実施する。 これらのテスト結果にもとづいて、 新サーチに再調整を行う。 そして、最終確認のため、リリース直前にもユーザーテストを実施する。 このように制作過程で何度か繰り返しユーザーテストを行い、 改善を重ねていくことで、 もっともユーザーにとって満足度が高いサーチができることになる。 Air Products Chemicals では、社員に対し、 イントラネットに関するアンケートを定期的に行っており、 それまで検索機能に対しては「問題が多い」という意見が多かったが、 新サーチ導入後にはユーザー満足度も70%程度に上昇したとのことである。 ■導入事例−設計・意思決定 エンタープライズサーチのみではなく、 企業の Web サイト構築プロジェクト一般において、 当初のねらいと実際に制作されるものとの間には隔たりがあるのが普通である。 どの機能の実装を優先し、 どの機能は後回しにするか(場合によっては次回の改訂に回すか)の決定、 およびその決定をプロジェクトメンバー間で共有することが大切だ。 このプロジェクトにおいては、 実装予定機能が一覧化され、A〜C の優先順位が設定された。 この手法自体は珍しいものではないし、 日本においても同様なことを日々実行しているチームは多くあると思う。 プロジェクトの途中ですべてのメンバーの認識がずれないように、 どの程度達成すれば OK とするのかの評価基準を定めておくこと、 完璧主義に陥らず、 場合によっては瑣末なものは捨てて重要な機能に集中する勇気を持つことが、 実践の際に重要ではないかと考える。 エンタープライズサーチ導入プロジェクトで判明したのは、 どのソリューションを採用しても、 すでに機能的に不足するケースはほとんどないということ(すでに CMS を採用している場合、それとの相性を考える必要はあるが)。 むしろ、実際に効果的なエンタープライズサーチを作りあげるには、 検索技術のみならず、 「プロジェクトのプロセス」そして「プロジェクトメンバー間で共有する基準」をも考慮すべきで、 これらのバランスをとってはじめて、 これまで探せなかった情報を見つけることが可能になるというのが、 発表の結びであった。 以上、今回はカンファレンスレポートの最終回として、 導入事例のセッションを重点的に紹介した。 エンタープライズサーチ導入を検討する際に参考にしていただけると幸いである。 なお、他のプログラムに関しては、 ESS 2004 オフィシャルサイト(英語ページ)も参照していただきたい。 記事提供:ファンサイド
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