Webビジネス2006年5月26日 09:00
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Microsoft の新フォント論争、デザイナーはオリジナルと主張

この記事のURLhttp://japan.internet.com/busnews/20060526/6.html
著者:Brian Livingston
海外internet.com発の記事
前回、中国では、ライセンス料を支払わなくても Microsoft のソフトウェアなど多くの製品を複製することが法的に許可されている、と書いた。皮肉なことに、米国においても、フォントの複製については同じ状況である。

長年、米国をはじめ各国の著作権法では、フォントは保護の対象にはならなかった。たとえ、熟練のアーティストが数か月もしくは数年かかって一から作ったフォントであってもだ。その結果、貴重なフォントが複製され、フォント名(各国の著作権法で唯一保護対象となっている)のみ変更して売るという詐欺行為が横行していた。

しかし、この種の詐欺行為は将来なくなるのかもしれない。数年前、米国の裁判所によって、第三者による Adobe フォントのコンピュータコードの複製および別名での販売を禁止する、という判決が下された。また Microsoft は最近、欧州の特許庁にあたる OHIM から、Windows Vista および Office 2007で使用される新しいユーザーインターフェイスフォントが、他社のフォントに酷似しているとして、その商標登録を取り消された。

Microsoft 新フォントのデザイナーは、独占インタビューで、このフォントは複製でも、他のフォントに由来するものでもない、と断言する。

これは、フォントに限らずあらゆるソフトウェアが著作権法でどのように保護されるかを決定づける出来事になるかもしれない。

(フォント)ソフトウェアの複製が違法になる時

先週、Segoe UI フォントの書式は Linotype 社がデザインした Frutiger Next と「細部において異なるだけ」という OHIM の審決を紹介した。また、Microsoft の代表は「Segoe は Frutiger に由来するものではない」と断言していた。

Microsoft は、中国で同社製品の著作権が保護されるよう主張している。このため、たとえ米国では違法でないとしても、Microsoft がフォントを複製していたとなると、同社の著作権保護を主張する根拠は弱くなる。Microsoft の新フォントをめぐる訴訟が、フォントだけにとどまらず、さらに重大な事態に発展する可能性がある。

Microsoft は否定しているが、フォントの専門家は Segoe が Frutiger のフォントファミリのコンピュータコードそのものではないにしても、基本的な書式を複製して作られたものに違いない、と主張する。例えば、フォントデザイナーが集まるディスカッションフォーラム Typophile に参加していた Bill Troop は3月22日、次のように発言した

「Segoe は、デジタルデータを盗作し、デザインではなくデータポイントの起点をごまかして作ったか、あるいは、輪郭をなぞり、形をまったく同じにし、データポイントを変えて作ったかのどちらかだ」

Segoe letter Q in 2003 and 2005前回、Segoe(“see go”と発音する)と Frutiger Next の拡大サンプルを載せ、I や Q などの例外を除いて、この2種類のフォントファミリはほぼ同一のものであると言及した。

長い間 Microsoft のフォントを批判してきた Ulrich Stiehl 氏と連絡を取った。同氏はメールで、Segoe と Frutiger が類似していることが公になってから、Segoe に細かい変更が追加されたと断言する。

上の画像の大文字 Q について、Stiehl 氏は「左が旧型の Segoe UI フォント(1997年〜2003年著作権所有)で、右が新型の Segoe UI フォント(2005年著作権所有)だ。旧型の Segoe UI の『Q』は、旧型の Frutiger フォントを基にデザインされたものだ」と言う。

Stiehl 氏はドイツ人で、最近ヨーロッパの法律書の出版社を退職した。この出版社と Microsoft に対する批判とは無関係なので、社名は伏せるように言われた。同氏は、 Web サイト上で、問題のフォント複製について大量の書類を提供している。ほとんどが英語で書かれている。

Monotype 社と Steve Matteson 氏の言い分

両フォントファミリを細部にわたって検証したところ、私は Segoe フォントは Frutiger ファミリの複製ではなく、若干ではあるが違いがある、と確信した。問題になるのは、現在βテスト中の Windows Vista が発売されたとき、 法的問題に発展するほどの違いがあるのか、ということだ。

前回のコラムで、Microsoft は OHIM の審決によって、Vista の発売が影響を受けることはない、と断言した。Segoe はもともと Agfa Monotype 社が2000年に開発し、2003年に Microsoft がフォントを使用するための正式なライセンスを取得した、と言う。

しかしながら、驚いたことに、Agfa Monotype(2004年社名変更、現 Monotype Imaging )社に連絡を取ると、広報担当者は、Microsoft に Segoe のライセンスを供与したことどころか、そもそもこのフォントを開発したことさえ、肯定も否定もしなかった。

Monotype Imaging 社のマーケティングおよび広報担当エグゼクティブの Vikki Quick 氏は、「同社の社員に弁護士より指示があり、私たちには機密保持規定があるため、現在本件に対しコメントできない」と語った。

Segoe フォントファミリを開発したのは、当時 Monotype 社で働いていたミシガン在住のタイプデザイナー、Steve Matteson 氏だと広く知られている。彼より次のメッセージが寄せられた。

「最初に、Microsoft より依頼があった。オリジナルの Segoe フォントに様々な変更を加え、汎ヨーロッパの文字セットに拡張(例えばギリシャやキリル文字を追加)し、またいくつかの太さの文字と真のイタリック体を作ってほしい、というものだった。ClearType で小さい文字を表示して確認すると、もっといい形にするために、Segoe UI の数十文字を変更してほしいとの依頼を受けた。Q や & などがその中に含まれていた。

「『Segoe の開発中に、あなた自身または Monotype 社の社員が、Frutiger フォントと照らし合わせ、フォントを作りかえましたか?』というあなたの質問に文字通り答えるならば、答えは『いいえ』である」

「もしあなたの質問が、『私自身または Monotype 社の社員が、Frutiger に類似していると Web で批評されてから、Segoe UI のデザインを変更しましたか?』という意味ならば、その答えは、 Web サイトでフォントの類似性が指摘される前も後も、Segoe フォントは進化し続けている、ということになる。実際、今日もダガー記号を書き直したところだ。テスト結果と画面上の見栄えを考慮して変更した。その結果、Frutiger のデザインからかけ離れることになったかもしれないが、それは何度も行われる改良の副作用に過ぎない」

Microsoft の今後の展開

Segoe UI フォントは、明らかに細部で Frutiger と異なっているのだが、Microsoft と Monotype 社は、このフォントのために、質問責めにあっている。

例えば、タイプデザイナーの Frederick Nader 氏によると、Windows 3.1 以降で使われている Arial というフォントは、Linotype 社が考案した Helvetica に非常に似ており、すべての文字の幅がまったく同じだ。Book Antiqua というフォントは、Linotype 社の Palatino に非常に似ているが、後々 Microsoft Office と Windows 98 で使われるようになった。結局、Microsoft は Palatino のライセンスを取得し、合法的に複製を作成し、この複製フォントが Palatino Linotype という正式名のまま、Windows 2000以降の Microsoft OS に登場するようになった。

Microsoft は、Palatino での方針転換以来、フォントについてはよい企業と言える。例えば、同社は2000年、Frutiger ファミリを Microsoft Reader の電子ブックソフトウェアで使用するためのライセンス契約を Linotype 社と正式に結んだ。実際このライセンスにより、 Microsoft は Frutiger を改良し、Windows Vista で使用することができる。それならば、そもそもなぜこのような論争が起きたのか?

Typophile の別の参加者 John Hudson 氏は次のように説明する。彼は、Reader ソフトウェアの Frutiger のライセンス契約、および彼が参加した Windows Vista に使用する Segoe 以外の新フォントの開発は、Microsoft の ART(Advanced Reading Technologies)グループの責任下で行われたと言う。 Segoe UI の開発は、独立した資金と任務を持つグループである Microsoft Typography の依頼により、Monotype に委託された、とのこと。

Linotype はこの騒動にどんな見解を持つのだろう? Linotype の広報担当者 Fabrice Dissieux 氏は4月24日付のメールで「われわれは、正式なプレスリリースを出すことを決めた。来月中には準備が整い、発表する予定だ」と述べた。「したがって、現在のところ本件に関するメッセージを送ることはできない」

推測するに、Linotype は見解を出すのに、同社の弁護士たちの承認を受ける必要があるのだろう。今はそれを待つしかない。

結論

Windows Vista と Office 2007にSegoe UI が登場するのか。それは、Linotype の弁護士たち次第という訳だ。

この騒動が幸いし、著作権がどのようにソフトウェアの作成者を保護していくのか、またフォントの扱いは別格とされるべきなのか否か、法的な定義づけがされるようになることを願う。


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