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Webビジネス2006年6月8日 09:00

ターゲット・メディア時代の先にあるもの

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かつて電通マンとして働かれていた吉良俊彦氏は、自著『ターゲット・メディア主義 〜雑誌礼賛〜』のなかで、マス・メディアの一角を占める雑誌メディアは、実はマス・メディアではなくターゲット・メディアだと論じている。

実際に書店に足しげく通っている人なら、その意味するところが理解できるだろう。ここ数年、マス(一般大衆)を対象にした雑誌というものはほとんど見当たらなくなってきている。年齢、性別、趣味、嗜好など、各出版社ともニッチなテーマやコンセプトの雑誌を発行する傾向にあるようだ。そこには、ゴールデンタイムのテレビ番組や新聞のようにマスを対象にしているという意識はもはや希薄化しているといっていいだろう。

では、どうして雑誌はターゲット・メディアなのか?
筆者もかつて出版業界に属していた経験から言えることなのだが、その背景には一般大衆を対象とした広角的なフォーカスでは、雑誌が売れなくなっているという現実がある。「万人受けを狙った商品は、万人に受け入れられない商品になる」という言葉を、当時業界内で何度も聞いた覚えがあるぐらいだ。

さきほどの『ターゲット・メディア主義』でも、『もはや日本に「大衆」など、いない。存在するのは「個人」だけだ。そして「個」の時代に求められるのはターゲット・メディアである。』と、その現状が語られている。だからこそ、雑誌のターゲット・メディア化は生き残りのために、必須の選択だったということだろう。

実際に自動車雑誌を例にとっても、「自動車全般」を扱ったものは消費者に受け入れられなくなっているため、「4輪駆動車」や「アメリカ車」、「レトロ車」など、よりテーマを深堀りした雑誌が多数出版されている。その結果、長年の出版不況と言われるなかにあって、年間に出版される雑誌数は逆に増加傾向にあるようだ。つまりターゲットを絞り込めば絞り込むだけ、そのコンテンツに興味・関心のある層の購買意欲は高まるため、ターゲットを絞り込んだ媒体を多数出版しようというのが、近年の出版業界の傾向なのだ。

結局のところ、「価値観の多様化」などという言葉が頻繁に語られるようになる以前から、一般大衆などという言葉で人間を一括りにすること自体に無理があったということではないだろうか。そうした意味では、マス・メディアの存在意義というのも、ここ数年で大きな転換点を迎えている。

なお、こうした動きの萌芽となったのが、筆者はウェブの進化というものではないかと考えている。インターネットの黎明期には、ポータルサイトといわれる一部のサイトが多くのアクセスを集めたが、ポータルサイトで得られる情報は万人を対象としており、個人の興味・関心に100%応えられる内容ではなかった。そのため、ユーザーは検索エンジンを使い、ウェブ上に無数に存在するサイトから求める情報を探し出すようになった。

こうした行動が一般化したことで、ユーザー自らが改めて自身のオリジナルな関心領域に気付かされたのではないだろうか。いまや、ユーザーの関心領域の多様化・細分化は顕著で、検索されるキーワードやアクセスされるウェブページに大きな広がりが起きている。これこそが、ロングテールと言われる現象の本質なのだろう。そして、こうした流れは今後もさらなる加速が考えられる。

なお、先日グーグルの広告プラニングを行っている高広氏の講演を聴く機会があったが、その際に高広氏は、『かつての広告は「不特定多数の大衆」を対象としていたが、本来的には「不特定の多数」ではなく、「特定の多数」を対象にできることが理想だ」と語っていた。まさに、そうした「特定の多数」を対象にすることは高精度のターゲティング機能をもつ P4P(検索連動型広告+コンテンツ連動型広告)の登場によって可能となったが、今後はさらにユーザーの関心領域の多様化・細分化が明確になっていくことで、「特定多数」から「特定少数」へと P4P はシフトしている。そして、その「特定少数」をいかに積み上げ、「多数」にしていくかが、広告出稿側にとっての最重要課題となっている。

検索連動型広告コンテンツ連動型広告の併用や、出稿キーワードの大幅な追加の必要性、下層ページへの SEO の実施など、検索エンジンマーケティングで起きているこうしたトレンドの背景には、先に説明したようなマス・メディアからターゲット・メディアへの大きな潮流があることを意識しておいた方がいいだろう。今後、私もターゲット・メディア化という大きな流れを受けて、まだ生まれて間もない P4P がどう変化していくのか、その推移を眺め、「その先にあるもの」をいち早く探り出してみたいと考えている。

(執筆:コンサルティンググループ 市川伸一)




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