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アドビ システムズ社の「Adobe AIR」戦略■Adobe AIR(Adobe Integrated Runtime)とは
以前は Apollo という開発コードで呼ばれていたアドビ システム社が提供するデスクトップアプリケーション実行環境で、Web ブラウザの枠にとらわれないウィジェットを開発できるランタイムである。 html や CSS、Flash や Ajax などを利用して開発が可能で、Web と PC との開発ギャップを少なくすることができる。ほかにも AIR 内で他のサイトの html や PDF を参照、修正することなどが容易など、新しいマッシュアップの可能性も秘めている。 ・Adobe AIR ウィジェット登録数:27 ※2008年6月10日時点 Adobe AIR ギャラリー上の数値 ■優位性と課題 <優位性> 開発者側の視点から開発の敷居が低い点が優位性として挙げられる。Flash、Dreamweaver、Flex Builder で書き出しが可能で、これは開発者にとって AIR ウィジェットとの距離が近く、とても手軽にウィジェットを作成することができる。そうすることで魅力的なウィジェットが増えていくスキームが構築されることだろう。 Web アプリケーションが実現でき、ローカルへのアクセスやクリップボード機能サポートなど、クライアント側に実行環境を置いた特徴もある。例えばローカル側にある Excel ファイルとサーバー側のデータベース両方を取り込んでモニター上に表し、PDF 化されたレポートをサーバー側にアップするといった仕組みを実現することも可能である。 この仕組みを業務アプリケーションに適用することを検討する企業もあるくらいで、こういった利用用途は他社プラットフォームサービス企業が実行しているウィジェット、ガジェットサービスの枠を超えており、Web アプリとデスクトップアプリを融合させたトータルソリューションサービスへの展開へとつながるものだ。 これは、アドビ システムズ社自体が AIR を Flash や PDF レベルのコア製品に位置づけるという意識の現われで、ウィジェット、ガジェットビジネスを内包する、より大きなプラットフォームとして位置づけていることが他社にない優位性である。 <課題> 強いて言うならローカルのアクセスでプロセスの起動ができない(フェリカなどの読込など)、P2P の仕組みができないなど、それを実行するには別途スクリプトの起動が必要となってしまう点だろうか。 他社ウィジェット、ガジェットでよくみる CPU メーターなどローカル情報を取得する機能に対して制限が入ってしまう点などが挙げられる。これはセキュリティの問題でどうしてもやむを得ないことで、どこまでプラットフォーム提供企業として対応するか判断の問題で、抱えるユーザーが多ければ多いほど出てくる悩みでもある。 特にモバイルでウィジェット、ガジェットを提供する際にキャリア側が気にする点とも共通しており、ユーザー保護とサービス充実のバランスの問題でもあるので今後の対応として徐々に緩和されてくるものと思われる。 ■ユーザーと開発者に対して Adobe AIR ウィジェットを利用するユーザー、開発者に対して今後の戦略や考えをアドビ システムズ株式会社、マーケティング本部クリエイティブソリューション部 Web グループ ディベロッパーマーケティングスペシャリスト 轟啓介氏ならびに DMO テクニカルエバンジェリスト太田禎一氏よりコメントいただいたものを含めて紹介する。 <開発者に対して> 大部分の Web 開発者ならとても容易にウィジェットを制作することができる点が AIR の魅力でもあり特徴でもある。具体的には上記「優位性」の部分でも述べたが、AIR ウィジェットの書き出し可能な3つのアプリケーションから「ひとつのファイル形式として AIR を書き出す」という感覚でウィジェット化が可能な点だ。 これは極端な話ある Flash を制作したら、そのまま AIR ウィジェットになってしまうということだ。他のプラットフォームウィジェット、ガジェットは何かしらの加工作業が必要で、これほど容易に開発が可能なウィジェット、ガジェットサービスは他には見当たらない。 開発者が感じている「こんなツールあったらいいな」と思える瞬間を実行へ移すためのキッカケを与えてくれるのが AIR である。今まではゼロベースで開発しなくてはならなかったものが、極限まで手間をなくしてくれているのは大きなモチベーションへとつながる。 企業のマーケティングツールとして考えても、キャンペーンページや Blog パーツなどを Flash で作成すれば、それをそのまま AIR ウィジェットとして販促ツールにすることも可能(実際はサイズ調整など AIR ウィジェット用に加工をしたほうが現実的だが)で、これはとても少ないコストで、多様化されたニーズの少しでも多くのエンドユーザーにリーチできるツールでもある。 AIR は現行の1.0から1.1へバージョンアップし(2008年6月中旬までに対応予定)フル日本語対応となる。それに合わせて Adobe AIR コンテスト※1(2008年4月8日〜6月6日応募期間)授賞式(2008年6月19日予定)も開催し、すでに90作品以上集まっている中から優秀作品を表彰するイベントも実施する。 魅力的なウィジェットがあればアドビ システムズ株式会社の Web サイトを通じて紹介する。また、CSS Nite というイベントを通じて地方在住のデベロッパー、デザイナーへも啓蒙活動を行いインタラクティブな関係を構築していくことにも力を入れていく。 そうすることで、プラットフォーム提供企業であるアドビ システムズ社と、開発者との距離を縮めて双方向な関係を構築していきたい考えだ。 <ユーザーに対して> 何と言っても AIR はクロスプラットフォームという点がユーザーに対してメリットを与えられると考える。Windows、Mac、Linux など異なる OS 上でも利用できる点は思いのほか恩恵に授かる層が多い。 また、AIR ウィジェットはオンライン上での利用だけにとらわれず、オフラインでの活用も一工夫されている。例えば Blog の更新を行うにもオフライン状態で原稿を書いて保存させ、オンラインになると自動アップロードをさせるといったことも可能だ。 他社と比較して後発ながらも開発ハードルがとても低い AIR は魅力的なウィジェットが爆発的に増えていく可能性が高く、ユーザー側の選択肢がとても多いこともメリットだろう。 <今後の展開> Adobe AIR の目指すべき方向として、PC、TV、携帯端末などディスプレイ(あるいはスクリーン)を持つあらゆるデバイスに AIR が搭載され、幅広いユーザーが使えるようにすることを目的とした Open Screen Project(オープンスクリーンプロジェクト)がある。 PC だけの利用にとどまらず、あらゆるデバイスで AIR を使っているという状態をユーザーの違和感なく作り上げることが1つの目標でもある。 ユーザーが「AIR を使っている」という実感があるうちはまだまだ未熟で、知らないうちに、気づかないうちに AIR が使われているのが理想だという。これも他社と比較すると異なる考えで、まさに Flash がそのレベルにいたっている。その Web 上での成功体験があるからこそ次の目指すべきステージが明確なのだろう。 デバイスに関係なくユーザーが AIR 体験できる世界がくれば、我々の日常生活をもっと便利にしてくれると思える。今後の Adobe AIR にさらなる期待をしていくのと同時に、その動向を常にウォッチしていきたい。 ※1 Adobe AIR コンテスト (執筆:株式会社ハナツキ 波多江祐介) 記事提供:HANATSUKI(ハナツキ)
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