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企業として Web 解析能力を向上させるために―Web 解析成熟度モデルの活用(2)

株式会社デジタルフォレスト 取締役副社長 手嶋進
 
 
前回は Web 解析成熟度モデル(Web Analytics Maturity Model)の6段階について書いた。

なんとも間の悪いことに、それを書いた後に、ステファンから連絡があり、名称を「オンライン解析成熟度モデル−Online Analytics Maturity Model (OAMM)」に変更するという。Web だと範囲が狭くとらえられてしまいがちなのでモバイルやソーシャルメディアも含めてとらえられることが重要だからというのが理由だ。ということで、以下ではオンライン解析成熟度モデル(OAMM)と呼ぶことにする。

自社の現状、つまり、どのレベルにあるかを把握したら次はどのようにして上のレベルに到達するかを検討する。

■ 6つのプロセス領域

OAMM には6つのプロセス領域を定義しており、それぞれの領域が下記6段階のレベルで評価される。自社のレベルをどのようにやって向上させるかを考えるとき、このプロセス領域ごとに施策を検討すると計画が立てやすい。レーダーチャートで現状と目標を表現するとわかりやすく社内で共有しやすい。

Web 解析成熟度モデル スコアチャート
Web 解析成熟度モデル スコアチャート
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a) マネジメント・ガバナンス・組織的受容
Web 解析やデータ分析に基づいた意思決定を強力に推進してくれる人が社内にいるか、それが経営層に近いかは客観的データを組織的に生かせるかどうかの最も重要な要素である。データ分析の重要性を理解してもらっているのがプロジェクトマネージャどまり(概ねレベル1)の企業であれば Web から得られるデータが事業にとって意味のある情報であることが上級管理職にまで伝わるようにしたい。

例えば、単にコンバージョン率が向上したと報告するのではなく、それによってどのぐらいの経済価値があったかを金額を示すことで上級管理職や役員レベルにまで理解してもらい、支援者なってもらって、できればデータ分析活動の旗振りをやってもらうようなるとよい(この段階で概ねレベル3)。

社長自らが推進し、また、組織のどのレベルにも推進役がいる状態(レベル4〜5)にするためには組織全体の意識改革が必要であり、Web 分析データが事業に与えるインパクトが大きいという共通認識を会社全体にいきわたらせる地道な活動が必要だ。

b) 事業目的の定義
ビジネスの目的があいまいだと組織の推進力が働かない。また、明確になっていたとしてもビジネス全体ではなく特定の組織機能にとっての方針だとすると当該組織の中では活動できても会社全体の最適化になっていないことがある。

もし店舗で販売している企業であれば Web 担当者であってもオンラインチャネルだけでなくコールセンターや店舗といった異なる顧客接点のまで考慮して施策を計画できるような目標設定が可能になっているかをチェックしよう。もし自己の目標が狭いとわかっていながら変更できないような状況であれば、他部署との連絡会など部署を超えた意見交換の場を作ることで視野を広く保つ工夫をしたい。

c) 範囲の定義
前項目と関係するが活動の範囲は成果を出すにあたって重要な要素となる。

例えばもしあなたが SEO の担当者であっても Web 全体の施策を考慮するとどのような訪問者を増加させるかという観点からリスティング広告やメールマガジンなど他の集客施策と連動して考えなければならない。少なくとも会社としては複数の施策を担当している人が強調して活動できるような環境を用意してあげるべきだ。

また、ひとつのサイトにとどまらず自社のサブサイトや他社の関連するサイトまでを分析の対象としたり、業態によってはソーシャルメディアやモバイル、必要に応じてオンライン以外の活動までを含めて活動できる範囲設定なされていることが望ましい。

ちなみに OAMM では、SEO やオンラインキャンペーンなど Web の施策単位を範囲としての活動が中心となっている組織をレベル2、ひとつのサイト全体を範囲として統括して活動できている組織をレベル3としている。それ以上のレベルでは Web を越えたコールセンターや店舗などのデータも合わせて分析し、連携した範囲で活動できていることを条件としている。

d) 分析チームと専門スキル
組織は人の集まりであり、その成功はそれを構成する人のスキルに影響を受ける。Web 解析を生かすためには社内に分析結果をわかりやすく伝え、ビジネス上のアドバイスができるアナリストチームを持つことが望ましい。

そしてこのチームには事業戦略をはじめとするビジネス全般の知識、インターネットや技術、分析の3つのスキルを育てていくようにすべきである。ひとりの担当者でまわさなければならない小さな組織であれば少しずつ勉強してこの3分野のスキルをつけられるような環境を用意してあげたい。

チームで対応できるのであればスキルミックスが3分野でそろうようなメンバー構成をとるようにし、不足しているスキルがあれば勉強の機会を与えるなどしてチームとして強い組織にしていくことが重要である。ちなみに WAA が2010年5月に始めた世界共通の Web アナリスト認定試験(WAA Certified Web Analysts)も概ねこの分野が出題範囲となっている。

e) 継続的改善プロセスと分析手法
データ分析はビジネスのためにある。分析から得られた発見をすぐに実務に適用し、その結果を評価し、また分析するという、いわゆる PDCA の繰り返しが業務の改善に必要である。シックスシグマやカイゼンのような主に製造業で培ってきた業務改善手法やコンセプトを Web 解析やその後の改善活動に応用し、継続的に効果を高めていくことも有効である。

f) ツール、技術、データ統合
ツールや技術、データを統合するシステムを持っているかも重要だ。多くの企業にとっては簡単ではないかもしれないが、複数のシステムやマルチチャネルのデータを集めて統合的に分析し、特に顧客の行動を理解できるしくみがあるとよい。

ちなみに、レベル5は Web 解析を越えて、マルチチャネルデータ統合、ABC(activity-based costing)、予測分析(predictive analytics)などを戦略的意図をもって使いこなしている状態とされている。ただし、ツールや技術は手段であって目的ではない。どんなにいいツールや技術があったとしても、上述したマネジメントのコミットメントやツールを使うスキルが不足していてはいい成果を生むことはできない。

■ OAMMをどのように活用するか

OAMM は Web 解析を中心に置きつつ、広く事実に基づいて判断できる能力を備えているかという観点で、現在の自社を客観的に把握し、次に向かうべき方向を検討するのに有益である。OAMM のレベルを向上させるということは経営戦略や組織戦略上の意思決定が必要となってくるため、無理にいきなり2、3段階飛び越えて向上させようとするとかえって改善活動が停止する危険がある。6つの要素を並行して徐々に少しずつ向上させていく現実的な計画を立てるのが実現への近道である。

(執筆:株式会社デジタルフォレスト 取締役副社長 手嶋進)

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