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中国国内からのアクセス制限の現状

株式会社クララオンライン 家本賢太郎
 
 
 
中国のネット検閲(金盾)については、拙稿「なぜ中国から Facebook にアクセスできるのか」で以前に触れましたが、記事を読んでいただいた方からその後、「ネット検閲の内容はどこでも同じなのか」という質問をいただきました。今回は、この記事をフォローアップすることにします。

まずこのご質問の答えは「場所によって異なるようである」と言えます。例えば、北京のある五つ星のホテルのいくつかでは、少なくともこの1年以上 Facebook へのアクセスが制限されていません。ほかにも、中国の ISP 経由では Flickr へのアクセスは接続先のサーバによって制限されていますが(写真が格納されているとみられるサーバ群の farm*.static.flickr.com の*に入る数字による)、ある大空港の WiFi サービスではこの制限が全くない、という事例も確認しています。

中国にいる時には不用意に VPN などを使わず Facebook や Twitter へアクセスしようとすると、その接続元の IP アドレスは記録されている可能性が高いことから、あえて制限がかかっていると知っているサイトには繋げないようにしています。Facebook に繋がることを確認できたのは偶然で、Web ブラウザで「f」から始まる URL の別のサイトにアクセスしようとしたとき、履歴に残っていた Facebook の URL を間違って選んでしまったことで気づきました。Web ブラウザのキャッシュかと疑いましたが更新も出来たために、「繋がる」ことが確認できたわけです(もちろん、Facebook へのアクセスは SSL(https)通信を行ってください。平文のままアクセスすると、ID とパスワードの情報を中国のネットワークに流すことになります)。

これに対する筆者の視点は二点です。一つめは、これらのホテルは五つ星で、かつ外国人の宿泊が中心であることによるという点です。今では外資系のホテルもたくさん参入しておりその名残りは見かけられませんが、中国では2003年まで、外国人が宿泊できるホテルはすべて制限されており(渉外宿泊規制)、さらに1980年代にさかのぼれば当時は当局が指定したいくつかのホテルだけに制限されていました。

例えば北京市内では、北京飯店、友誼賓館、民族飯店など5〜6件に限られており、外資系企業の事務所もこのホテルに設けられていることが一般的でした(ロシアや東欧など、他の共産圏でもシステムは同様でした)。これは外国人を管理するための仕組みで、その中には、外国人と自国の人間との接点を制限する意味合いも含まれています。

また中国ではわずか20年前の1993年までは兌換元が発行されていましたので(流通停止は1995年)、通貨流通の制度も分かれていました。即ち、中国を含む共産圏ではこのように外国人と自国の人間を分けて管理する考え方は従来から存在しており、外国人に対して異なる枠組みを適用することは不自然ではないということです。もちろん、宿泊客がこうしたネット検閲に対する事情を知らず、Facebook へのアクセスが出来ないというクレームがあったのではないかという話も考えられます。

次に、これによって明らかになったのは、「中国全土で統一的なアクセス制限・ネット検閲をしているわけではなさそうだ」という点です。Wikipedia や YouTube、Twitter などへのアクセス制限は中国全土で行われているため、中国のアクセス制限はさも中国と国外のインターネットの相互接続を行う地点で統一的に実施されていると思われがちです。しかしこれ以外の事例でも、例えば特定の画像検索サイトは中国聯通や中国移動の3G ネットワークからはアクセスできない、といったケースも存在しており、どうやらアクセス制限は個別に ISP が実施している場合もあるようだと推測できます。

また、以前はよく言われていた「時期によるアクセス制限」の事例は最近減っているように見えます。中国にいると「最近このサイトが見られない」という話も聞こえますが、この1〜2年では全人代や党大会など特定の期間にある海外のニュースサイトが見られなくなるなどといった変化は確実に減ってきました。以前は、こうした主要な政治イベントのタイミングでは、香港や台湾、あるいは欧米のニュースサイトが見られなくなるといった事象がありましたが、主要なアクセス制限先のリストは安定化している模様です。

他方、ジャスミン革命などの影響もあり、内政に影響するサイトへのアクセス制限や、微博のつぶやきを個別に消すといったネット検閲はむしろ拡大しています。中国のネット検閲の方向性が、外から入ってくる情報に対しては安定しつつあり、その多くは中国の中からの情報発信に向けつつある、という流れに向いているようです。

(執筆:株式会社クララオンライン 家本賢太郎)

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