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実践的モバイルマーケティング入門
実践的モバイルマーケティング入門 西田 徹(にしだ とおる)メールホーム
株式会社メンバーズの顧問。マーケティングおよび CRM を専門とする。主な著書に「ここまできた!モバイルマーケティング進化論」(日経 BP 企画)がある。

ワン・トゥ・ワン(その1)

「ワン・トゥ・ワン」。 それがマーケティングの世界での重要キーワードであるのは、 いまさら述べるまでもないだろう。 顧客ひとりひとりのことを知り、 その人にぴったりのメッセージを届ける。 これが物やサービスの販売に効果的なのは当然といえば当然だ。

なぜ最近になるまで我々は、 こんな当たり前のことに気づかなかったのだろうか。 それは「ワン・トゥ・ワン」という考え方があっても、 それを実現するコミュニケーションツールが今までなかったからなのだ。

●「ワン・トゥ・ワン」を生かすツール、ケータイ

日本で「ONE to ONE マーケティング」という書籍が紹介されたのは1995年。 この時点の日本は、 まだ TV コマーシャルなどに代表されるマスマーケティング全盛期であった。 アナログ方式の TV で、「ワン・トゥ・ワン」を実現するのは無理な話である。

今思えば、 あのころの熱狂的な「ワン・トゥ・ワン」ブームは、 「今すぐ役立つ」ではなく「将来はこんな未来が来る」という意味だったのだ。 実際、上記書籍の原書は1993年に「THE ONE TO ONE FUTURE」というタイトルで発売されている。 まさに未来像を描いたコンセプト本であり、 この時点では具体的手法は開発されてはいなかったのである。

その「未来」を「現実」にしたのがインターネットの出現である。

「ワン・トゥ・ワン」マーケティングを実現するためのコミュニケーションツールは、 以下の3つの条件を満たしている必要がある。

・相手を特定でき、その属性に応じてコミュニケーション内容を変えられる
・大量(数万人〜数千万人)の相手に対してコミュケーションできる
・ローコストである(1回のコミュニケーションあたり数円程度)

これを見事に満たしているのが、 PC とケータイでのインターネットである。 さらにケータイのほうが「ワン・トゥ・ワン」に向いているという考え方もある。 PC という存在は、 場合によっては複数人で共有することもあるツール。 それに対してケータイは個人が肌身離さずもっているパーソナルな存在である。 後者が「ワン・トゥ・ワン」のコミュニケーションに向いているという考え方は、 納得感が高いであろう。

●サイトよりもメールで「ワン・トゥ・ワン」

重要キーワードである「ワン・トゥ・ワン」を実現するのに、 ケータイが最適のツールであることが納得できたとしよう。 具体的には、「西田さん。こんにちは。」といったように、 顧客の名前を自動で差し込んだり、 性別に応じて内容を差し替えたりするわけである。 次にテーマとなるのは、それをモバイルサイトで実現するのか、 モバイルメールで実現するのかである。

私は、まずはメールでの「ワン・トゥ・ワン」をお勧めする。 月額数万円のメール配信 ASP でも「ワン・トゥ・ワン」の機能が豊富に用意されている。 一方、サイトでの「ワン・トゥ・ワン」は不可能ではないが技術的ハードルも高い。 当然ながらコストも相当なものとなる。 まずはメールで「ワン・トゥ・ワン」を始め、 ノウハウを蓄積してはいかがだろうか。

●ワン・トゥ・ワンは実は効かない!?

意欲的な企業で、 すでにモバイルでの「ワン・トゥ・ワン」メールを始めている会社もある。 例えば性別と年齢で顧客を4セグメントに分け、 それぞれ異なる内容のメールを送っているといった場合である。 以下の仮想例をもとにイメージしてみよう。

若手男性→音楽情報
中高年男性→ゴルフ情報
若手女性→グルメレストラン情報
中高年女性→料理レシピ情報

実は、こういった「ワン・トゥ・ワン」は効かない(意味がない)場合が多い。 例えば、私は41歳男性(中高年男性)だが、ゴルフはやらない。 一方、料理は好きなので、ユニークなレシピ情報があれば是非読みたいところである。 私個人の例に限らず、 性別・年齢・居住地といった人口統計的情報での「ワン・トゥ・ワン」は、 効かないことが多いのである。

ここまでコラムを読み進めてきた読者は違和感を覚えるだろう。 「このコラムは『ワン・トゥ・ワン』を礼賛しているのか? あるいは否定しているのか?」と。

もちろん、その前者である。ただし1つだけ重要な留意点がある。それは、

「『ワン・トゥ・ワン』を仕掛けるには、生きたデータベースを使うこと」である。

つまり「ワン・トゥ・ワン」自体が悪いのではなく、 性別・年齢といった「死んだデータベース」で「ワン・トゥ・ワン」を仕掛ける手法に改善の余地が大きいのである。

次回は「生きたデータベースとは何か?」という切り口で「ワン・トゥ・ワン」についてのコラムを続けてみたい。

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