|
|
 |
西田 徹(にしだ とおる) |
株式会社メンバーズの顧問。マーケティングおよび CRM を専門とする。主な著書に「ここまできた!モバイルマーケティング進化論」(日経 BP 企画)がある。
|
|
|
|
|

 |
あんしんグーパス
著者: 西田 徹 プリンター用 記事を転送
▼2006年2月10日 09:00 付の記事
□国内internet.com発の記事
2006年1月10日から、「あんしんグーパス」というサービスがスタートした。
内容をひとことで言うと、
「学童の通学時に自宅の最寄り駅と学校側の目的駅を通過する際、
『改札を通過した』という情報が保護者にモバイルメールで即時配信される」というものである。
これ自体はマーケティング(売れる仕組みづくり)が目的ではなく、
「安心を提供する仕組みづくり」とでも呼ぶべきものであるが、
マーケティングへの示唆を豊富に含んだ試みとも言える。
このコラムでは、まず、
あんしんグーパスの母体となった「グーパス」そのものを解説し、
その後にあんしんグーパスの運営母体である PiTaPa グーパス株式会社の浜瀬社長へのインタビューをお届けする。
●グーパスとは、定期券の位置情報をきっかけにモバイルメールを配信する仕組み
小田急電鉄で実施されている「グーパス」というサービスが、
今回お伝えするあんしんグーパスの土台である。
グーパスとは、定期券の位置情報をきっかけに、
モバイルメールを配信する仕組みである。
具体的には、定期券に記載された ID 番号を、
あらかじめモバイルのメールアドレスと関連づける登録を行うことで実現される。
例えば、私が成城学園前駅近辺に住み、
新宿の会社に通勤しているとしよう。
毎日以下の4回のタイミングで定期券が読み取られることになる。
朝、成城学園駅で乗車
朝、新宿駅で降車
夕方、新宿駅で乗車
夕方、成城学園前駅で降車
そして、
定期券の読み取りが行われた直後にその情報がメール配信センターへ届けられ、
モバイルメールが携帯に届くというわけだ。
そのメールにはニュースやコラムなどの役に立つ情報と、
モバイル広告が掲載されている。
この仕組みの面白さは大きくわけて2つある。
ひとつはベストタイミング。
もうひとつは位置情報の活用だ。
ひとつ目から解説しよう。
「これから電車に乗る」ということは、
多くの人にとっては手持ち無沙汰な時間帯を過ごすことを意味している。
そのタイミングでモバイルメールが来たら、
精読率が高いであろうことは容易に予測できる。
2つ目は位置情報の活用である。
例えば、「夕方に成城学園前駅を降りた人に、
成城学園前駅近辺スーパーのクーポンを配信」すれば効果的であろう。
グーパスの面白さは GPS のような緯度・経度情報ではなく、
「駅」という生活に密着した切り口での位置情報にあるとも言えるだろう。
●あんしんグーパス概要
あんしんグーパスは、グーパスの仕組みを土台としながらも異なる点がいくつかある。
一番の違いは、
グーパスでは「交通機関利用者」と「メール受取者」が同一人物なのに対し、
あんしんグーパスでは前者が学童、
後者が保護者という別人物である点だ。
また、あんしんグーパスは有料サービスである。
利用料金は315円/月(6か月単位での支払い)。
現時点でのサービスは関西の PiTaPa(ピタパ)カードを対象に行われている。
メール配信タイミングに関しては、グーパスと同様である。
行きの乗車、行きの降車、帰りの乗車、帰りの降車の計4回/日。
ただし上述したように、メールの受け手は保護者である。
それ以外の具体的情報に関してはこちらのサイトを参照いただきたい。
●PiTaPa グーパス株式会社、浜瀬社長へのインタビュー
西田:昨年末のプレスリリースと今年に入っての実運用スタートで大きな盛り上がりを見せているあんしんグーパスですが、手応えはいかがですか?
浜瀬社長:おかげさまで数多くのメディアに取り上げていただき、
会員様も順調に増えています。
学童に対する犯罪が増えていることと、
携帯電話や非接触型 IC カードなどの先進テクノロジーへの関心の相乗効果が背景にあると思います。
西田:正式なサービス開始の前に、テスト運用もされたとのこと。
その内容や得られたノウハウなどをご紹介いただけますか。
浜瀬社長:平成17年の9月1日から12月16日まで、
雲雀丘学園小学校と日能研関西に協力いただき、
自宅最寄り駅と学校(もしくは塾)の目的駅通過の、
1日あたり4回のメール配信を体験いただきました。
10月初旬に保護者へのアンケートを実施したところ、
以下のような好反応が得られました。
安心が増えた 80%
少し安心が増えた 17%
どちらでもない 3%
少し不安が増えた 0%
不安が増えた 0%
また、あんしんグーパスのトライアル以前から、
そのニーズを示唆するエピソードもありました。
ある私立の小学校では、
授業が終わると校舎にある公衆電話に、
「これから帰る」電話をする学童の長蛇の列ができていたそうです。
これが、いちいち電話をしなくても改札を通過するだけで自動的に連絡が行けば、
こんなに便利なことはないわけです。
西田:子供たち側の反応はどうなのでしょうか。
浜瀬社長:「わざわざ電話をかけて連絡しなくていいので便利」ということらしいですね。
PiTaPa カードを使って電車に乗るだけでいいのですから、
特別な機器を使ったり、
「連絡しなきゃ」という意識を持つことが不要です。
日常生活に溶け込んだ形で無理なく保護者へ連絡が届くと言えるでしょう。
西田:小田急グーパスでのノウハウの土台があったので、
順調にサービス開発が進んだのだと思うのですが、
あんしんグーパスならではのご苦労された点などがありますか。
浜瀬社長:あんしんグーパスでは携帯メールの受け取り手が、
鉄道利用者本人ではないという点ですね。
メール受信者が本当に保護者なのかの確認のため、
住民票の写しをご提出いただくことにしました。
また中学生の場合は学童本人の書名を頂戴することで、
位置情報というプライバシーデータが保護者に送信されることの、
事前了解をとっています。
西田:PiTaPa カード+改札機といった位置情報は、
GPS とは違って「シチュエーション」情報も得られるところが面白いと思います。
そういった意味での将来像はお持ちでしょうか。
浜瀬社長:ひとつの参考事例という感じなのですが、
2006年4月1日から立命館小学校が PiTaPa を児童証として採用されます。
そして、あんしんグーパスをご利用いただき、駅の通過情報を取得します。
さらに、学校のエントランスに PiTaPa をタッチするリーダーを設置することで、
自宅最寄り駅、学校の目的駅、
そして学校そのものという位置情報を、
シームレスに保護者に送付する体系ができあがるわけです。
非接触 IC カードのリーダーは、
原理上ありとあらゆる場所に設置可能なわけですから、
今後は同様の試みが広まると思われます。
西田:最後に、今後のあんしんグーパスの拡販戦略について教えてください。
浜瀬社長:サービス開始時には多くのマスコミに取り上げていただいたので、
それが会員募集の原動力になりました。
しかし今後は、口コミでのじわじわとした広がりで、
サービスが広まってゆくのではと考えています。
実際、トライアルサービスの時も、
「学童が自分で電話しなくてもいいので便利」「PiTaPa 自体の使い勝手のよさ」「モバイルメールが即時に配信される安心感」「子供同士や保護者同士の情報交換」などが原因で、サービスがスタートしてから後にじわじわと会員が増えた経緯があります。
今回の本サービスも、
そのような形で地道かつ着実に普及してゆくのではと予想しています。
西田:なるほど。
「モバイルの世界では口コミが効きやすい」という原則が、
ここでも通用しているようですね。
あんしんグーパスのさらなる発展を期待しております。
本日はありがとうございました。
記事提供:
|

 |
|