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西田 徹(にしだ とおる) |
株式会社メンバーズの顧問。マーケティングおよび CRM を専門とする。主な著書に「ここまできた!モバイルマーケティング進化論」(日経 BP 企画)がある。
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横たわる溝「キャズム」
著者: 西田 徹 プリンター用 記事を転送
▼2006年5月26日 09:00 付の記事
□国内internet.com発の記事
「キャズム」というキーワードをご存じだろうか。マーケティングに詳しい人でも、「初耳」という場合が多いかもしれない。しかしこれはモバイルを使った売れる仕組みづくり、すなわちモバイルマーケティングにとって極めて重要な概念なのである。
●マジョリティをつかまえろ
キャズム(chasm)とは深い裂け目や隔絶を意味する英語である。これが何についての溝なのかを順を追って解説しよう。
今まで世になかった製品やサービスが普及してゆくプロセスを分析すると、その時々においてユーザーが異なることに気づくだろう。例えばパソコンと接続して使うプロジェクター(法人での利用)を例にとって解説しよう。
約10年前。すでにプロジェクターは製品化されていた。ただし価格は例えば80万円といった高額であり、大きさや重さも相当ある。また、パソコンとの接続も不安定で、うまく映らないことも頻繁にあった。それでもこの時期から OHP ではなくプロジェクターを利用していた人たちがいたのだ。彼らは新しい物好きであり、金銭感覚も薄い。冷静に実利を判断するとその製品を購入するメリットが少なくても、お構いなしに買ってしまうような人たちなのだ。彼らを「イノベーター」あるいは「テクノロジーマニア」と呼ぶ。
約5年前になるとプロジェクターの性能や価格は飛躍的に改善された。もはや OHP ではなくプロジェクターを使うべき時代が来たのである。しかし、そうなったからといっても爆発的普及には至らないのがポイントである。この時点での顧客は「アーリーアダプター」と呼ばれる。彼らは今までの習慣にとらわることは無い。だからといって単に新しければ良いというわけでもない。ひとことで言うと賢明な顧客なのである。
そして今。ほぼ全ての会社にプロジェクターは普及したと言えるだろう。つまり「マジョリティ」が使う時代が来たのである。
もう一度整理しよう。
1.イノベーター
2.アーリーアダプター
3.マジョリティ
この2と3の間には極めて大きな溝があり、それがキャズムと呼ばれるのである。賢明なユーザーであるアーリーアダプターが購入してくれている以上、性能や価格はすでに OK のレベルなのである。つまり企業としては、やれることの大半は終わっているのだ。でもなぜかマジョリティは未だ使ってくれない。これは深刻な悩みである。
●モバイルマーケティングのキャズム
「モバイルを売れる仕組みの中に組み込むこと」は、裏を返すと「ユーザーがモノを買うプロセスの中でモバイルを使うこと」と同義である。それは今まさにキャズムにはまりこんでいるともいえる。
ごく初期には物珍しさでモバイル通販を利用してみた人もいたであろう。実際はモバイルを使わないほうがメリットがあるにも関わらずである。彼らはイノベーターであったのだ。しかしその時期はすでに過ぎている。
今、モノを購入するプロセスでモバイルを活用することは冷静に考えると便利なことである。コスト負担もたいしたことは無いし、隙間時間を利用して購入活動を行える。また、セキュリティの不安なども相当取り除かれてきている。しかし爆発的にその習慣が広まっているわけではない。つまりアーリーアダプターが利用している段階なのである。
ではどうすれば良いのか。キャズム理論の提唱者である Geoffrey A. Moore は、以下のような戦略を提唱している。まずはマジョリティをそのままとらえるのではなく、それを細分化(セグメンテーション)せよというのである。そしてターゲットカスタマーを絞り込み、その中での圧倒的な成功事例(導入事例)を作るのである。セグメントには必ず隣のセグメントが存在する。起点となったセグメントでの成功は隣のセグメントに波及しやすい。そうやって陣地を徐々に拡大するかのようにしてマジョリティ全体をとらえるのである。
●とにかく一度モバイルを使ってもらう
上記戦略以外に「とにかく一度使ってもらう」ことも重要である。すでにアーリーアダプターが使ってくれているからには、実際にはモバイルでモノを買うことはメリットが大きいのである。一度使ってくれさえすれば、「なんだ簡単じゃないか。」「こんなに便利だったのか。」といった具合にリーピーターとなってくれる確率は高い。
そのためには AIDMA 理論で言うところの最後のActionに注力すると良いだろう。例えば「今、モバイルで申し込めばなんと半額!」といった期間限定の大幅値引きなどで行動を促すのである。
また多少大胆かもしれないが、最も人気のある商品をモバイルだけでの限定販売とする手もある。パソコンでは買えない。またリアル店舗にいきなり来ても買えない。モバイルを購買プロセスに使うことを「強要」するのである。
いつもどこでも万能な戦略など存在しない。しかし今のモバイルマーケティングがキャズムにはまりこんでいると判断するのであれば、上記で紹介したやり方はキャズムを突破するための有効な指針となるはずである。
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