Salesforce 危うし?おどけもののプリンス、Salesforce.com. の CEO、
Marc Benioff が好感のもてる人物だということは認めざるをえない。
マーケティングの腕前は誰にも負けずおとらずで、
その気前のよさといったら、
豪華な食事と興味深い会話を一度ならずご馳走になった身だ。
しかしどうやら、現在のソフトウェア業界を大きく変えようという探究心は、
さらに低迷してしまったようだ。
新しい試みである AppExchange にそれががうかがえる。 Benioff は BusinessWeek のインタビューで、 これを不運な「エンタープライズアプリケーション版の eBay」に例えている。 Benioff の目的は、 エンタープライズアプリケーションの開かれた市場を構築するすること。 さらにこのインタビューで、 エンタープライズソフトウェアの購入とインストールが、 「iTunes で音楽を購入し、iPod で聞く」のと同じように簡単にできるようにすることだ、と付け加えている。 これほど不運な例は、見つけようとしても見つけられるものではない。 eBay にはたくさんのことが言えるが、 確実なのは信頼できる商品を購入するのに安全な場所ではないということ。 eBay の大きな問題のひとつは、 CEO の Meg Whitman が対応を嫌がっていることだが、 さまざまな詐欺師の介入を簡単に許してしまう点にある。 これら詐欺師は、インターネット版の海賊旗を掲げていて、 警備の薄い eBay の“購入者よ、買った後では手遅れ”といった姿勢が、 犯罪事業を行うのに格好の場所と当然のように思っている。 もちろん eBay の取引の大半は合法だが、 エンタープライズソフトウェア市場のモデルとは考えにくい事業だ。 iTunes は音楽を購入するのにすばらしいところで、 また iPods は優れた小型機器だ。 しかし iPod のフォーマットは音楽をかなり圧縮しているため、 iPod で聴いている音楽は文字通り本物を写す影で、 音楽的には、オリジナルからは程遠いサンプル音楽だ。 さらに大事なことに、 Marc も気づいているにちがいないが、 エンタープライズソフトウェアは3分間の歌とは違う。 その音楽がどれほどうまく作られていたとしても、 また、現在の技術がどれほどハイテクであっったとしても、 iPod はインタープライズソフトウェアのプラットフォームではない。 音楽はつかの間のもので、双方向でもユーザー固有でもない。 確かに聞いて楽しいものであるが、明らかに機能ではない。 それを使って何かをするものでなく、そのものでしかない。 巨大ライバルに銃を向けられた Benioff の例えに従うと、 AppExchange では、 機能ではなく、質が低く、耳にだけ心地よく、 eBay の、買った後では手遅れ方式のものを購入することになる。 これでいいと思うか? 確かに Marc がこのたとえを出したとき、 上記のようなことを意味していたのではないだろうが、 ときどきそれも危うい場合がある。 Marc は突拍子もないことを言うし、 思いつきで物を言うので、 すぐに大手の競合企業とひどい悶着を起こすことになるだろう。 最近の SAP と Oracle の唯一の同意事項は、 Salesforce.com は邪魔だ、消えてほしいということだ。 世界最大のソフトウェア企業2社が自分を狙っている状況で、 Marc は今まさに、 本当の競争とはいったいどういうものかということを学びつつある。 Marc は、 皮肉にも Tom Siebel と同じ状況に置かれているのだということに気づき始めた。 CRM と他のエンタープライズソフトウェアとの統合に対する関心が高まる市場で、 CRM 単独の機能に固執し過ぎていた。 Siebel が敗北宣言の中で認めたように、 この分野から撤退し、 ライバル会社の Oracle の腕に逃げ込むことを余儀なくされた。 そして今度は、 Siebel より少し落ちる Salesforce.com がそうなるかもしれない状況にある。 AppExchange は間違いなく この対応策のひとつで、 Marc が ソフトウェア会社数社の買収のために M&A の専門家を雇ったといううわさが本当ならば、 これもまたもうひとつの策かもしれない。 元 PeopleSoft の CEO、Craig Conway を Salesforce.com の取締役に任命したのも、 そのためかもしれない。 前回はひどい失敗をした Craig が、 競争と M&A 市場のすべてを理解しているかどうかは、神様のみぞ知る、だ。 Salesforce.com の命運はまだ尽きていはいないが、ベニア板にひびが見え始めている。基本的に、コモディティ機能を持たせ、 それを低価格のオンデマンドで届けるというモデルが簡単に真似できるという点に問題がある。 SAP はその準備が整っているし、 Oracle はすでに行っている。 そして Marc が、 これらの巨大な、 怒りに燃えたライバル企業のサービスに対して自社サービスをいかに差別化するかは、 まだわからない。 しかし、 eBay と iPod を例えに使ったのとまったく無関係ではないだろう。 Marc が好んで呼ぶ「ソフトウェアの終焉」とは、もっといいものであるはずだ。 |