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Microsoft の新フォントは盗作?

著者: Brian Livingston プリンター用 記事を転送
2006年5月19日 09:00 付の記事
■海外internet.com発の記事

Microsoft が発売を予定している Windows Vista と Office 12の新フォントの商標登録が、欧州の特許庁にあたる The Office of Harmonization for the Internal Market(OHIM)によって取り消された。この審決が、新フォントはオリジナルなのか、複製なのかという物議を醸しており、同社の製品が再三発売が延期されている事態に何か法的に関係があるのかどうかが取りざたされている。

Microsoft は、 Vista と Office 12に影響はなく、新しいユーザーインターフェイス(UI)フォントはオリジナルで、ライセンス取得済みだと主張する。一方で、Blogger らは、この事件について「露骨な盗作」などと騒ぎ立てている。

しかし、状況はもっと複雑だ。この騒ぎは一体何なのか。Vista と Office 12 に影響が及ぶのかを検証する。

Frutiger Next と Segoe UI フォントのデザイン

一般的に、新フォントが問題になることはほとんどない。しかし、Microsoft は、Vista と Office 12の新しい UI について大々的に宣伝してきた。同社の収益の鍵を握っているのだ。

Microsoft プログラムマネージャーの Jensen Harris 氏は、MSDN の Blog でフォントについて、「われわれが Office 12で提供するのは新しい UI だけではない。新しい UI フォントも提供していく」と述べた。「このフォントは ClearType 用に考案、デザインされ、最適化されている」 ClearType というのは、液晶モニターでフォントをきれいに表示するための技術だ。Vista で初めてデフォルト設定になる(Windows XP でも設定できないことはないが、分かりにくい)。

OHIM が Microsoft に対し下した審決は次の通りだ。同社の新フォントが、ドイツの有名なフォントベンダーである Linotype 社のFrutiger Next に類似しているという。Microsoft は2004年1月、Segoe UI フォントとして、少なくとも8種類のデザインの商標登録を申請した。それに対して、Linotype の親会社の Heidelberger Druckmaschinen (“Heidelberg 印刷所”と訳せるだろう)が異議を申し立てた。

OHIM は、Segoe の書式が Frutiger と「細部において異なるだけ」で、Microsoft が行った登録はすべて無効との審決を下した。この訴訟の3人の審査員によると、Microsoft は Druckmaschinen の提出したフォントの証拠書類に異議を唱えたものの、「これらのフォントが同一のものとみなすべきだとする申請人の主張には異議を唱えていない」という。

Frutiger Next Regular and Segoe UI 真相を究明しようと、私は Linotype.com で Frutiger フォント一式を購入し、最新β版 Windows Vista の Segoe(“see go”と発音する)のフォントと比較した。左の画像から分かるように、2つのフォントは非常に似ており、拡大して初めて分かる程度の違いしかない。

だから Vista と Office 12で Segoe が使えない、という訳ではない。ただ、フォントは、米国をはじめとする各国の著作権法の保護の対象にならず、対象となるのはフォント名だけなのだ。そのため、何年もの間、多くの有名な活字のデザインが複製され、名前だけ変更して売られるという詐欺行為が横行していた。

近年、裁判所が下した判決によって、コンピュータフォントのコードに対する保護が追加された。この状況について詳しくは、非営利の翻訳機関 SIL International の説明を参照してほしい。

Frutiger Next と Segoe UI を1文字1文字分析してみると、新しい Vista/Office フォントが、バイト単位での複製ではないことが判明した。例えば、上記画像では Segoe の「f」と「g」の先端が、Frutiger Next よりやや尖っている。

Microsoft の広報担当者(会社方針により名前は明かせないが)より、以下のようなメールを受け取った。

「OHIM による、Microsoft が登録した拡張 Segoe ファミリフォントのコミュニティデザインを無効とする判決に対し、謹んで異議を唱える。 OHIM の審決に反し、当該フォントのいずれも、Frutiger ファミリフォントに由来するものでも、それらに基づいて作られたものでもない。 当該拡張 Segoe ファミリフォントと OHIM が言及したフォントには明らかな違いがある。Microsoft は OHIM の判決に関わらず、Windows Vista などの製品の商標、パッケージ、そして UI に、Segoe ファミリの様々なフォントを使用する権利がある」

Segoe が Linotype のデザインと異なるという論拠は、Microsoft Typography のリードフォントプログラムマネージャの Simon Daniels 氏によっても明らかにされた。MSDN の Blog で、同氏は以下のように発言している。

「Verdana や Frutiger と違い、(Segoe UI)フォントは、文字を傾けた通常の斜字体ではなく、非常に鮮やかな真のイタリック体である。また、主に印刷用にデザインされた手書き風のフォントとは違い、小文字の l と大文字の I のように、ユーザーにとって紛らわしい文字を見分けやすい文字の形をしている」

Longer horizontals and circular dots Segoe は大文字の I などの文字の扱いで、Frutiger と明らかに異なる。左の画像は、2種類のフォントの中から、簡単に識別できる明確な違いを持つ4個の文字を表している。

Segoe の大文字 I および Q には、小文字 l と大文字 O と区別するための横棒が付いている。さらに小文字 i および j には、Frutiger Next では四角い点が付いているのに対し、Segoe では丸い点が付いている。

しかし、Segoe のイタリック体が Frutiger Next のイタリック体と大きく異なるという主張は、あまり支持を得ていない。

Adrian Frutiger 氏が1976年にデザインした Frutiger Light Italic のイタリック体は、真のイタリック体ではなく、文字を斜めに傾ける字体である。しかし、OHIM が言い渡した8つの判決のうち7つは、2000年にリリースされた Frutiger Next と Segoe が類似しているという理由で、Microsoft の登録を無効とした(OHIM はこの判決に 12345678と番号を振り、PDF ファイル形式で掲載した)。 下の“fgil”画像は、Frutiger Next と Segoe で明らかに異なるイタリック体の4文字を示している。 f、i、および l の文字の下端以外、通常のフォントサイズで見て識別するのはほとんど不可能に近い。

Microsoft の Segoe UI フォントは Frutiger を基に作ったものではない、という主張を考えるとき、Segoe を以前の Frutiger Light とただ比較するだけではいけない。Adrian Frutiger 氏がコンピュータ表示用に特別にデザインし直した Frutiger Next と比較する必要がある。

ソフトウェアの複製は罪か

ソフトウェア業界の動向を追っていない人にとっては、この一連の騒動が空騒ぎのように映るかもしれない。しかし、Microsoft 自慢の新 UI フォントが、複製なのかどうかという論議は、いろんな点で大事になってくる。

Slanted vs. italicized letterforms米国では、フォントを複製することは違法でないかもしれない。しかし、中国では、法律の解釈の仕方によっては、Microsoft のソフトウェアを無制限に複製しても違法ではない。Microsoft は、これに対して声高に批判してきた。しかし、もし同社がライセンス料を支払わずにフォントを複製したことで訴えられるようなことになれば、同社の論拠は非常に弱いものになる。

Microsoft は、新フォントにはれっきとした起源がある、と明確に主張する。Daniels 氏は Blog エントリで、その起源について次のように説明した。「Segoe フォントは、 そもそも Microsoft が作成した訳でも Microsoft のために作成された訳でもない。既存の Monotype のデザインをわが社がライセンス契約し、いろいろな工程、アプリケーション、そして機器で使う条件に見合うように、拡張しカスタマイズしたものだ」

Microsoft の広報担当者は、2度目のメールで同様のことを主張した。

「Segoe はもともと、Agfa Monotype(現 Monotype Imaging)が2000年に開発したデザインだ。2003年、同社は Segoe フォントを取得し、Segoe 名を継承したまま当フォントの拡張ファミリを開発した。新フォントの多くは、米国でデザイン特許権保護を受けている。Segoe は Frutiger に由来して作られたものではない。また Microsoft は特定の Frutiger フォントを、Office および Windows を含めた Microsoft 製品に使用するための最新ライセンスを取得している。Segoe と Frutiger には明らかな違いがある。その上 Segoe ファミリフォントと Frutiger は互換性がなく、代用することはできない。

Microsoft は、Monotype が Segoe UI フォントの起源であると強調している。しかし、この論議について Monotype の言い分は?

それについては次回掘り下げることにしよう。


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