複数アカウント、「中の人」の苦労前回は、利用料金に注目して、プレーヤーのゲームに使うコストに関して考察した。今回は、月額利用契約を複数取得する「複数アカウント」に関して考察しよう。
● 複数アカウントとは? 一般に、MMORPG は1つのキャラクターで「何でもできる」キャラクターにならないように設計されている。たとえば、ドラゴンクエストの勇者のように、攻撃魔法も回復魔法も戦闘も OK というキャラクターは、ネトゲでは一般的ではない。 1つのキャラクターで何でもできてしまうと、他人を必要としなくなり、世界が閉塞してしまうからである。そうなってしまっては、オンラインで他人と同じ世界にいる意味が大きく薄れてしまう。 自分のキャラクターにできないことをできるキャラクターが存在するからこそ、プレーヤーは他人を必要とし、そこからパーティやコミュニティーが形成されるのである。 しかし、その自分のキャラクターにできないことをできるキャラクターが、自分が必要とするときに常に身近にいるとは限らない。 たとえば、ゲーム内の店では販売されない、プレーヤーによる生産でのみ入手できるアイテムが必要となった場合、それを販売・譲渡してくれるプレーヤーが現れなければ、そのアイテムは手に入らない。限られたプレイ時間の中では、目的の相手にめぐり合えないことすらある。 また、アイテム売買のような経済活動においては、現実の世界と同様、相手に支払うマージンが発生する。苦労して手に入れたアイテムを、見ず知らずの相手に渡してしまうようなプレーヤーは、まず存在しない。 だが、その相手が自分のもうひとつのキャラクターであったらどうであろうか。それを実現するのが「複数アカウント」という方法だ。 ゲームタイトルにもよって違いはあるが、1つのアカウントで複数キャラクターを作成できるゲームであっても、同じアカウントのキャラクターは、同じゲームサーバーに同時にログインできないのが一般的である。 そこで、同時に2つ以上のキャラクターをログインさせるために、2つめ以降のアカウントを取得する。この行為が一般的に「複数アカウント」、略して「複アカ」と呼ばれる行為だ。 当然、複数アカウントで同時接続しようとすれば、無料ゲームやアイテム課金のタイトルでなければ、料金もその分増えていく。また、一般的にはクライアントアプリケーションの複数同時起動はできない仕様となっていることが多く、クライアントを起動するパソコンやゲーム機も、アカウントの数だけ必要となる。 しかし、熱中度の高いユーザーは、費用がかさもうとも、よりストレスの少ないプレイのために、そこまでしてしまうようだ。 また、リアルマネーの投入でプレイを効率的に進めるための手段である RMT が一般的には運営側の規約で禁止されているのに対して、複アカは禁止事項ではない。さらに、運営側に1ユーザーあたり倍以上の収益をもたらすという面もある。 複アカプレイを極端に嫌うプレーヤーも確かに存在するが、ゲームバランスやゲーム内の秩序を著しく崩さない限りは、容認される傾向、積極的に使われる傾向が強いといえるだろう。 ● 複アカ「中の人」の苦労 規約には違反せず、予算さえあれば手軽にプレイを効率化できる複アカだが、1つ弱点がある。それは、どんなにアカウントを増やそうとも、操作している人「中の人」は1人という事実だ。 人間1人が複数操作するには、いくら上手であっても物理的限界がある。 特に、アクション性の高い戦闘シーンのような、リアルタイムかつ臨機応変な操作が必要とされる場面では、より限界は顕著である。 あるネトゲを3つのアカウントでプレイしていた複アカプレーヤーに話を伺ったところ、彼はメインのアカウントをパソコンで操作し、2台の プレイステーション2 をワイドテレビに接続し、ワイドテレビの画面分割機能を利用して、残りの2アカウントを操作するためのモニターとして使っていたという。 彼は「ゲームパッドを3つ操るのは、なかなか辛いものがあった」と述べる。時にはキャラクターの操作を誤ることは大いに考えられるだろう。しかし、それはそれで1アカウントでは味わえない緊張感が味わえるポイントかもしれない。 逆に、アクション性が高くはなく、特定動作の繰り返しが多い単調な操作ほど、複数アカウントは威力を発揮する。ここで「マクロ」や「BOT」と呼ばれる、グレーゾーンのプレイが登場する。 マクロ/BOT は、その名のとおり、マウスやキーボードの操作の自動化ツールなどにより、ゲームの操作をマクロ化して自動実行するというものだ。 マクロ/BOT には、アイテムの大量連続生産や、その材料収集といった単純作業を効率化するような簡単なものから、フィールド上でモンスターを狩り続けるというものまで、多種多様に存在する。 こういった行為は、さすがに運営側の規約で禁止されているのが一般的である。しかし、規約を破ることなどお構いなしの RMT 業者ならば、マクロ/BOT を使用することなどに躊躇するはずはない…。 |