Leopard Server と仮想化
今回より数回にわたって Mac OS X 10.5、「Leopard」 Server について書いていくが、まず最初に、Mac の IT 市場にとって大きなポテンシャルを秘めた発表に言及したい。Mac OS X 10.5 Server のエンドユーザーライセンス契約(EULA)の変更だ。
TidBITs の記事や、ウィスコンシン大学の Dave Schroeder 氏によって明らかになったように、Apple は Mac OS X 10.5 Server の EULA に小さいが重大な変更を加えた。ひとつ前の Mac OS X 10.4 Server の EULA には次のようにあった。 「本『ライセンス』は、一度に1本の Mac OS X Server ソフトウェア(「Mac OS X Server Software」)を Apple ブランドの1台のコンピュータにおいてインストールおよび使用することを許可する」 これはかなり明解な内容であり、Mac 用の主要仮想化製品ベンダーである Parallels や VMWare が、Apple 製ハードウェアでも複数の Mac OS X や Mac OS X Server を実行できる製品のリリースを考えていたことを意味する。 ところが、Leopard Server の EULA には次のようにある。 「本『ライセンス』は、一度に1本の Mac OS X Server ソフトウェア(「Mac OS X Server Software」)を Apple ブランドの1台のコンピューにおいてインストールおよび使用することを許可する。また、Apple から各 Mac OS X Server Software ごとに有効なライセンスを個別に取得していれば、Apple ブランドの同一コンピュータ上において別の Mac OS X Server Software をインストールおよび使用することもできる」 同項により、Apple ハードウェア上で Mac OS X 10.5 Server を仮想化する道が開けるのだ。 潜在的に膨大な量の問題を引き起こす可能性もあるため、まず最初にこの点を明確に理解しておこう。同項は、Mac OS X Server を仮想化し、それを手元にあるどのハードウェア(HP、IBM、Dell など)で運用してもよい、と述べているわけではない。同じ Apple 製コンピュータ上で Mac OS X 10.5 Server の複数のインスタンスを実行できる、と述べているのだ。したがって、Dell の ESX ファームに突然 Mac OS X 10.5 Server を組み込めるようになるわけではない。 もちろん、ちょっといじれば運用できなくないことは分かるが、それではサポートが一切受けられず、Apple に見つかれば厳しい内容の訴状のたぐいが届く可能性が高い。実際、さまざまなレベルで問題を引き起こすだけの価値のある行動ではない。この変更は Mac OS X 10.5 Server だけに適用されるもので、クライアントライセンスではこれが許可されていない。 では、どのような好影響があるのだろうか。そう、それが仮想化全般に当てはまることと同じであることは言うまでもない。Intel 版 Xserve があれば、その1台の Xserve で Mac OS X 10.5 Server の複数のインスタンスを実行できるようになる。十分に活用されていないサーバーが物理的に複数あれば、それらを組み合わせて1台の Xserve や Mac Pro(興味深い点だが、CPU の観点から見ると、Xserve ほどストレージや RAM の選択肢はないものの、仮想化ホストとしては Mac Pro の方が選択肢として多少優れている)として使い、空調や電力を抑えながら同等の使用率を引き出すことができる。 理論的に、各仮想サーバーは OS とわずかな数のアプリケーションを実行するだけで良いため、仮想サーバーの仮想ディスクサイズは物理サーバーより大幅に抑えることが可能で、全体的な無駄が減る。また、そのXserve 上では Windows、Linux、Solaris など、ほかの仮想化 OS も実行できる。 規模が小さく、コストに敏感で、時々サーバー上で Windows アプリケーションを実行したり、Mac OS X 以外のアプリケーションをいくつか実行する必要のある Mac 主体の企業では、これが素晴らしいソリューションになる。ハードウェアのコストを複数のサーバーに分散するのだ。 これが素晴らしいのは、バーチャルマシンのホスティングを任せる場合は、可能な範囲で上限の Xserve が必要になるからだ。つまり、最高の CPU オプション、最大容量の RAM、そしてディスクストレージも回転速度と容量の最高の組み合わせになる。 もちろん、その価格はものすごい数字になるが、1台で2、3、4、あるいは5台分のサーバーになることを忘れないでいただきたい。OS のライセンスだけあればよいため、仮想サーバーあたりのハードウェアのコストは急速に下がっていく。 玉にキズ ただ、玉にキズが一つだけある。Apple 製ハードウェアだ。現在購入可能な最高性能の Xserve でさえ、仮想サーバーとしては並の性能しかない。もし Apple がこの市場で真剣に戦いと思うなら、Xserve の仕様はもと引き上げる必要がある。8コアか、場合によってはそれ以上のマシンが必要だ。RAM などの容量も倍増したい。 仮想サーバーに専用のハードウェアは不要かもしれないが、ハードウェアのリソースは要求される。RAM、CPU、ネットワーク、そしてディスクも各バーチャルマシン(VM)ごとに必要だ。当初4 CPU コアから始めるなら、そこが当面の制約になる。 しかし、それ以外にも興味深い影響がいくつかある。Parallels と VMware の両社からまもなく複数の製品が発表される見通しであるのは言うまでもない。疑問なのは、VMware が「MacESX」につながるようなものを開発するかどうかだ。これについては賛否両論あるが、「賛成」意見が大勢を占めることを願っている。 「賛成」意見としては、実際に今の ESX と同じ方法で Xserve の仮想化「ファーム」を作成できる点がある。負荷バランシング、冗長性やハードウェアフェイルオーバーのための SAN ストレージ対応、リモート「ホット」サイト作成用の高速 WAN リンクなどだ(筆者の育ったフロリダ州では、ハリケーンの規模が大きいためリモートホットサイトは遠くに置きたい)。これらは学校区、高等教育期間、SMB 市場などでも活用できる。確かに、ESX の実態は、その上ですべての VM を実行する「ホスト」 OS だが、Mac OS X 10.5 Server でこれが実際に問題になることは考えられない。 ESX に対する「反対」意見は単純だ。これがやや孤立した立場になってしまうのだ。Xserves のファームを異なる OS と一緒に ESX クラスタに参加させたり、Dell や HP などのクラスタに入れることは可能だが、VMware は、やや積極的な策を講じて、偶然であれ故意であれ、Mac OS X 10.5 Server の VM が Apple 以外の物理ハードウェア上では絶対に動作しないようにする必要がある。 実際のところ何も分からないので、筆者は、それが簡単だ(もしくは難しい)など示唆するバカげた行動はここでは控える。ただ、これを本当に必要としている人々が、「MacESX」の本当のメリットを享受できるよう今から VMware に強く催促してくれることを願うばかりだ。 コンピュータ関連メディアでは誤解を招く伝え方が見受けられるが、仮想化は魔法の呪文ではない。魔法を使って管理などの各種問題を片付けるわけではないのだ。サーバー関連のすべてのニーズに対応する完ぺきなソリューションではないし、十分に活用されていないハードウェアが少ない場合は、ソリューションとして話にならないかもしれない(ただ、十分活用されていない理由にもよる。また、ハードウェアを買い足す余裕がない場合は選択として悪くないかもしれない)。 しかし、正しく応用すれば素晴らしいツールになり、Apple がそれを許可することは、特に SMB 分野で同社のマーケットシェアの維持と拡大に役立つことになるだろう。 |