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ふたつの仕事の近親憎悪キャリアの選択肢は、多くあるに越したことはない。
ところが、同じメディカル業界にありながら、MR(医薬品営業)と医療機器営業は、互いで行き来をする人が少ない職種である。MRも医療機器営業も、それぞれ異業界からの人材を受け入れているので、同じ業界内なら移動があっても不思議はないのだが、そうした人の動きは少ないように思われる。 「同じ業界内で異職種に移るメリットがない、どうせ業界内なら慣れ親しんだ職に就きたい」ということなのかもしれないが、こうした例はあまり多くない。 職に貴賎があるわけではないが、同じ業界内でも転職者の希望は特定の職種に傾くものである。たとえば、エンジニアならサポートより開発を希望する人が多いし、流通なら店長よりバイヤー・企画が人気である。 だが、MRと医療機器営業は、どちら一方に人気があるわけではないどころか、お互いをあまり認めたがらない人が多いように感じる。 MRの人は医療機器営業を「結局、会社の技術力・製品力で売れるか売れないかが決まってしまう。営業として努力する余地が少ない」といって嫌がる。 一方の医療機器営業経験者もMRに批判的だ。 「MRの仕事は『つきあい』の部分が大きい。有り体に言えばご用聞きみたい。こちらは新しい機器のプレゼンもあるし、オペの立ち会いなど、いろいろ専門的なことが学べる。私はMRに魅力を感じない」 3年前、外資系医療機器メーカーの事業部撤退により転職を余儀なくされたMさんは、MRのことを「顔をつないで、親しくなってモノを売っていくなんて仕事が、このIT時代にいつまでも続いていくわけがない」と、コテンパンに悪く言っていた。当然、希望したのは同業の医療機器営業。 いったんは、ある会社から内定をもらったMさんだが、健康診断で重大な病気がみつかり、長期療養を強いられることになった。健康を回復させた時は、たまたま良い医療機器の求人がなく、無職の期間をこれ以上ながくするわけにはいかないということで、やむなくMRに転向することになった。 「いつまで続くか分からないですけど、まぁ、取りあえず生活がありますから。何かのときは、また、よろしくお願いしますね」Mさんは我々に、再転職をほのめかすようなことを言って、中堅医薬品メーカーA社に入社していった。 そのMさんが最近、我々のところにアクセスしてきたのだが、彼の希望は「A社はここ最近の合併ブームに乗り遅れ、開発力に乏しい。今後もMRとして末永くやっていくには、もっと大手に転職した方がいいように思う」というものだった。 「あれ、Mさん、以前は医療機器営業が希望でしたよね。今度は、MRに絞ってしまっていいんですか?」 我々が確認をすると「いやぁ、いまはこちらの方の仕事のやり方に慣れてしまいましたし、人脈というかおつき合いがいろいろできていますから…」Mさんはそう言って微笑んだのである。 MR・医療機器営業、それぞれの仕事には「自分の仕事が一番」と思われる魅力があるのかもしれない。自分の仕事に誇りが持てるのはいいことだと思うのだが、たまには客観的に自分の仕事をながめ、時にはこだわりを捨てて考えてみるのもいいような気がするのである。 ※このコラムは、事実を元にしたフィクションです。
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