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そもそも、なんで転職しようと思ったのか転職は、ときに長い日数がかかる。
「環境をかえたい」と思ってすぐに別の会社がみつかれば、気持ちのブレは少なくてすむが、紆余曲折があると、どうしても雑念が入ってくる。 転職を志す人はあるとき立ち止まって考えることになる。 「そもそも、なんで転職しようと思ったのだろう?」と。 Yさん(27歳)は2年前に流通大手からベンチャー企業に転職したが、会社の事業にも自分の仕事にも手詰まりを感じ、再転職を考えていた。 彼の目標はもういちど、組織のしっかりした会社で働くこと。現職のベンチャーがうまくいっていないのは、各々が勝手に仕事を進めていて、社員同士の連携が出来ていないからだとYさんは分析していたのだ。 Yさんが最初に応募先に選んだのは、一部上場の大企業ばかり。しかし大企業は競争倍率も高く、2か月たってもYさんは内定をもらうことが出来なかった。 そこで次善の手として、Yさんは大手の関連会社を狙っていくことにした。知名度にはこだわらないが、出来るだけ従業員数が多く、設立年月日が古い、組織の出来た企業というのが彼の判断基準だった。この時点では初心が貫かれていたわけだ。 転職活動3か月目のYさんには、幾度か内定のチャンスがあったが、条件があわなかったり、最終面接の日程がうまくとれず、他の候補者に出し抜かれたりという不運もあり、依然、転職は決まらないままだった。 このころになってYさんの応募にブレが出てくるようになった。まだ、他にも大手関連企業で応募先があるのに、「面白そうな事業をやっているから」「雑誌で紹介されていた会社だから」という理由で、中小ベンチャーも応募するようになってきたのだ。 そして、そのうちのひとつ、「興味があったマーケティングの仕事ができる」という理由で応募した会社で、内定にまでこぎつけることができた。給与提示もかなりいい金額が出て、Yさんの気持ちは揺れた。 しかし、この時のYさんにはもう一社、大手子会社A社で内定が決まっていた。彼は悩んだが「そもそも転職しようと思ったのは、ちゃんとした組織で働きたかったから」という初心を思い出して、A社を選ぶことになった。 Tさん(30歳)のケースは、Yさんとは逆に、準大手・中堅から中小の会社への転職をめざしたものだった。Tさんが求めていたのは「仕事の裁量権の広さ」である。 商社に勤務して8年、担当業界については一通りの知識も身につけたが、現職を続ける以上、自分の思うような仕事が出来るにはあと15年かかる。それまで待てないというのがTさんの主張だった。 はじめのうち、Tさんは「自分にはごく普通のキャリアしかないから」といい、転職に自信がないような素振りであったが、いざ面接に行くようになると、多くの会社で高評価を得ることが出来た。彼のキャリアは一般的であるが故に、どの企業にとっても魅力的だったのだ。 自信をつけたTさんは、「これならもうちょっと希望条件を上げてもいいのでは?」と考え、もう少し給与の高い企業、もう少しステータスのある企業と、徐々に望みが高くなっていった。 そして、最終的にTさんが転職することになったのは、カリスマ経営者で有名な専門商社B社。給与もかなり上がり、Tさんは内定をもらって即断で入社を決めたほどであった。 ところが、B社で働きだしたTさんは、全ての面でハッピーとはいえない自分に気づく。トップダウン方式のB社で、Tさんの与えられる裁量の範囲は決して広くないのだ。 「転職に至った理由を考えると、これで良かったのかどうか…」 給与面で満足しているので、すぐに今すぐどうこうということが考えていないそうだが、Tさんはモヤモヤしたものを引きずったままだ。 「そもそも、なぜ転職しようと思ったのだろう?」 そう自問したのが、転職前であったなら…。 ※このコラムは、事実を元にしたフィクションです。
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