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事業仕分けによる次世代スーパーコンピューターの開発予算削減について、どうお考えですか?
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売れないモノを売っていた大手外資系食品メーカーの子会社であるマーケティング会社のA社。その日本法人CEOに登用されたMさん(46歳)は、失礼ながら、そのポジションにまったく似つかわしくなかった。
Mさんはかつて日本の製パンメーカーに勤務していた。当時の仕事は営業。しかし、当時の営業は町々の小売店を軽トラックで回る配送業務ばかりだった。商店街の店主に頭を下げ、パンを置かせてもらう日々。 腰が低く、ひたすら謙虚なMさんの性にあっている仕事ではあったが、「せっかく故郷を離れて東京に出たのに」という気持ちが消えず、最初の転職を志すことになった。 その頃はバブル期だったので求人はあったが、なにせ二十年前のことである。情報が少なく、何を基準に会社を選んでいいか分からないMさんは「好きだった英語を使える」という憧れで、食品メーカーB社の国際営業職に就いた。 だが、B社の国際展開はバブルの熱に浮かされた、絵に描いた餅の事業だった。ヨーロッパに赴任したMさんは、まったく何の基盤もないところから商品を売らなくてはならなかった。いや、それ以上に、Mさんに任された食品は食文化の違う海外では、まったく受け入れられる要素がなかった。 同僚らはすぐに事業に見込がないことに気づき、異動願を出して国内営業に戻ったり他社に転職したりしたが、Mさんは国内営業の悪いイメージが抜けず、そのまま海外に残りつづけた。業績はまったく出なかったが、Mさんにとって色々な国を巡る生活は楽しいものだった。 普通、業績があがらなければ、事業は取りやめになってしまうものだが、B社は対外的に「海外事業を行っています」というのをひとつのステータスにしていたので、引き上げの話はすぐには出なかった。 その間、Mさんは海外でのビジネスのやり方を身につけていった。現地企業との協力のなかでマーケティングの手法を様々学び、いつしか流通の仕組みについても精通するようになっていた。もっとも、謙虚すぎるきらいがあり、押しの弱いMさんなので、そうした知識が実績に結びつくことはなかったのであるが。 また、長期の海外生活のなかでMさんがあか抜けたかといえば、決してそうではなかった。Mさんの持つ雰囲気は、いい意味で軽トラで下町をまわっていた頃となにも変わっていなかったのだ。 経費節減がさけばれ、B社がついにMさんを日本に呼び戻したのは3年前。その後、典型的な縦型の日本企業であるB社でしばらくやっていけたのは、そうしたMさんの日本的な性格によるところが大きかったようだ。 購買部で貿易関係の仕事をするようになったMさんに、それほど大きな不満はなかった。ただ、やはり長年海外にいながら何の実績も作れなかったため、出世競争という意味では同年代の社員に差をつけられていた。 疎外感、そして将来への不満から20年ぶりに転職を考え出したMさんを前に、相談を受けた我々は、当初頭を抱えていた。 たしかに商品の性質を考えると、海外で売れないのはもっともで、Mさんが実績を作れなかったのは不可抗力かもしれない。しかし、この年齢になれば即戦力を求められるのは間違いない。Mさんのようなキャラクターで海外営業の採用可能性があるかどうか。まして外資系企業では…。 Mさんがバリバリの外資であるA社に応募書類を出したのは、「他に選択肢がないから」という消極的な理由からだった。だが、これが当たった。 大手食品メーカーA社は全世界で成功を収めながら、唯一、日本市場では苦戦を強いられていた。他の国で成功した手法が、日本ではまったく通用しない。これまでも何度もキャンペーンを立ち上げては失敗を繰り返し、そのたびにマネージャーが辞任していた。 その結果をふまえ、A社本社が出してきたプロダクトマネージャーに求める条件は「語学が出来る」「マーケティングの実務経験がある」といった基本的なこと以外に、「まったく売れない状況でも、仕事を続けてくれること」「日本市場を理解し、日本的な発想ができる人材」「これまで採用してきた人材とは別タイプ。いかにも日本人らしい人物が好ましい」という項目が含まれていた。 この条件に見事に当てはまったのがMさんである。日本人的なキャラクターはもちろん、特に評価されたのは「売れないモノを、めげずにずっと売っていた」というキャリアだった。 その後、Mさんが手掛けた商品が、A社としては異例のヒットになり、半期終了後、MさんはCEOに昇格したのである。 昇格を知らせるハガキを受け取った我々は、何とも不思議な気持ちを感じた。売れないモノを売れずにいた男の年収は、この一年で三倍近くになっているだろう。 ※このコラムは、事実を元にしたフィクションです。 |
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