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ゼロ評価「転職市場で、自分のキャリアがどう判断されるのか?」
「自分を欲しいと思う会社は何社あるのか?」 「転職するとしたら、年収はどう変わる可能性があるのか?」 自分の市場価値を知りたいと思うのは、転職者の自然な気持ちだろう。しかし、社会人経験1年や2年の若手に「自分の市場価値を具体的に教えて欲しい」と問われると、我々としても困ってしまうのである。 証券会社の営業Tさん(24歳)は、社会人になってまだ1年半。相談にやってきた彼はネット上での年収査定とキャリアスカウトのプリントアウトを持ち出し「もう少し、自分に相応しい処遇をしてくれる会社があると思うんです」と言った。 「転職で年収をあげたいということでしょうか?」 我々の質問に、Tさんはクビを振った。 「年収だけのことを言っているわけではないんです。会社・仕事を、もう少しレベルアップしたいと思っています。年収が変わらなくても、そういった部分で満足できれば転職します」 「なるほど。しかし、何をもってレベルアップというかその人によって違いますから、どういう可能性があるか一緒に考えていきましょう」 我々がややぼかした返答をすると、Tさんは小さな声で「自分の市場価値が分からないと、応募する会社を決められないなあ」とつぶやき、不満そうな顔をつくった。 若い人であっても、自分がどう評価されるのかは気になるもの。彼が自分の市場価値を知りたがるのも分からないではない。 だが、問題はTさんが異業界・異職種への転職を希望していることだ。転職市場の評価、特にTさんが持参した年収査定やスカウトは、キャリアをベースにしたものである。異業界・異職種を目指すということは、イコール「自分の潜在力・可能性を見て下さい」という話であり、市場価値を具体的に量るのは難しい。我々はそのことをTさんに説明してみたのだが、Tさんは「理屈はわかるが、納得できない」といった様子だった。 彼が最初に『異変』に気づいたのは、大手関連A社の一次面接を突破し、中小B社の面接に落ちた時だった。Tさんのなかでは、B社は明らかにA社よりレベルが下の会社だった。 「ビックリしました。こんなこともあるんですね」 不思議そうなTさんに、我々は二社の評価を伝えた。 「A社が先に進んだのは、Tさんが熱心だったからだそうですよ。B社の時は、いまいち気乗りがしなかったのではありませんか?」 「気持ちのなかではA社の方に行きたい気持ちが強かったですからね。でも、同じようにやったつもりですけれど…」 そして、Tさんが本当の意味で「自分の市場価値」を知ることになったのは、彼が第一希望にあげていたネット事業C社の選考でのことだった。緊張のなか進められた面接の最後に、Tさんは「自己PRすること」を要求されたのだ。 相手が有名企業だったので、Tさんは謙遜しつつ「自分くらいの市場価値の転職者では難しいかもしれませんが、御社に入社できたら一生懸命勉強します」と訴えた。 するとC社の役員から「Tさんは自分の市場価値がどのくらいだと思っているのですか?」という質問が投げかけられた。Tさんはとっさに返事をかえすことが出来ない。まごつく彼に向けて、そのC社の役員はこともなげに「ゼロですよ」と言ったのだ。 『ゼロ評価』で表情がこわばったTさんに、役員は笑いかけた。 「それはそうでしょう。Tさんはこの会社がやっている事業も仕事も経験がないのですから。でも、だからこそTさんを採用する価値があるかもしれないと私たちは考えているのです」 社会人としてのマナーはそなえて欲しい。しかし、中途半端な知識はいらない。その方が自分たちの仕事のやり方を吸収しやすい。そのようなことを言っていたC社だから出て来たコメントだが、この瞬間Tさんはようやく我々が言っていたことを実感したのだという。 「市場価値ゼロだからこそ、いろいろな可能性がある。市場価値がうまれた時は、異業界への道が閉ざされる時なのかもしれませんね。前の会社では良い思い出は少ないので、ゼロのうちに転職できて良かったと思います」 Tさんは、C社の面接後、そう言った。 ゼロ評価は可能性。「まだ自分には何のキャリアもない」そう思っている人にこそ、チャンスは開かれているのかもしれない。 ※このコラムは、事実を元にしたフィクションです。 |
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