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情報漏れは許さない公務員が民間企業に転職する場合、我々のような転職エージェントを使うケースはまだ少ない。そして、我々の経験値が少ない分、やはり民間から民間への転職とは様々なところで違っており、面食らうことも多い。
Sさん(26歳)のキャリアは民間で言うなら総務…、自衛隊でいうところの事務官だった。そして、いま、自衛隊で問題になっていることといえば情報漏洩である。 まだ若いSさんに機密情報へアクセスできるような権限はあるはずもないのだが、情報管理の徹底をはかる自衛隊の網は、当然のようにSさんの行動を制約した。民間会社勤務で、会社のPCを使って転職関係のメールのやり取りをしたという方は少なくないと思うが、自衛隊ではいかなる私用メールも一切許されない。 いや、それどころか、(なんらかの方法で情報を記録して持ち出す危険があるため)、いかなる電子機器の持ち込みも許されておらず、携帯電話を持って行くことも出来なかった。職場に入る時は衣服のみ、帰る時も同じ衣服のみというのが鉄則だったのだ。Sさんは、全ての連絡を自宅に戻ってから行わなくてはならなかった。 ところが、…これはSさんの置かれた環境のせいではないのだが…、彼が応募した会社の面接担当者が多忙で、面接直前に何度も時間変更があった。Sさんは職場から「歯医者に行きます」などと理由を言ってたびたび外出し、インターネットカフェにかけこんではメールをチェックしなければならなかった。 しかし、外出も数が増えると不自然だし、言い訳を考えるのにも限界がある。面接に行くために休みをとるので、ある程度、仕事も進めておかなければならない。思いあまったSさんは、「こんなんじゃやってられない。見つからなければいいだろう」と携帯電話を職場に持ち込み、トイレでこっそりメールを打って連絡を取ることにしたのだった。 それから一週間あまり、Sさんは突如、ある企業の面接を無断で欠席した。我々は、Sさんの携帯・自宅に電話をかけ続けたがまったくつながらなかった。 連絡が返ってきたのは翌日の夜。 「す、すみませんでした。面接に行けなくて」 Sさんはか細い声を出すのがやっとという様子だった。 「どうしたんですか? 心配していたんですよ」 「はい。実は、職場に携帯を持ち込んだことがバレまして、取り調べを受けてしまいました」 なんとSさんは、あらぬ嫌疑をかけられ、詰問をうけていたというのだ。 「仕方がないので、エージェントさんのことを喋ってしまったんです」 「それは構いませんが…」 「自衛隊に残ることも考えないではなかったのですが、この先もずっと睨まれながら仕事をするのは勘弁なので、転職先を見つけるしかなくなってしまいました」 Sさんは力無く笑った。 現在、Sさんは活発に転職活動を続けている。上役に転職活動中であることを知られてしまったので、以前よりも休みはとりやすくなったそうだが、上役との約束で、今は応募・書類選考・面接の結果を逐一報告しなければならないそうだ。 「どこの会社に落ちたとか知られるのは、恥ずかしくて」 Sさんはそう嘆いていたが、一国の防衛ともなると、このくらいの反応が出るのは仕方がないのだろう。むしろこの程度のペナルティですんで良かったというところなのかもしれない。 ※このコラムは、事実を元にしたフィクションです。 |