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2009年7月4日
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キャリア コラム2007年9月7日 10:00
転職徒然草
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誰も知らない、語らない転職裏話。エージェントを通じて転職した人、やっぱりやめた人。転職を考えていない人でも、真面目に考えている人でも楽しめる、日替わりコラムです。

間借り企業

国内国内internet.com発の記事
先日、国税庁から税金算定の基礎になる路線価が発表になった。予想通りというべきか、公示地価同様、大都市圏は高い伸びを見せているとか。テナント料も軒並み上昇しているようで、オフィススペースの確保に四苦八苦している企業も少なくないようだ。

リサイクルビジネスベンチャーA社は都内一等地のビルに居を構えていたが、問題がひとつあった。同じフロアに入っている通信企業子会社の人材サービスB社が、A社のオフィスを圧迫していたのだ。
B社が導入したインフラを一部借り受けることで、A社はメリットも受けていたが、一方で不都合もあった。そのひとつが、ビルの設計上、A社オフィスのある場所に行くには、必ずB社の受付を通らなければならないということで、どんな訪問者が来たかB社に分かってしまうこともしばしばあった。

「スタッフも増えていますし、そろそろ新しいオフィスに移りたいんですけどね、なかなか良いところがなくて。インフラとかテナント料とかで見ると、ここはとても恵まれているものですから」
A社の採用責任者は口の端で笑って「仕方がない」と言いたげな様子を見せた。
「これからも面接に来られる方には、取りあえずB社の受付でA社の面接に来たと言って貰う以外にないので、戸惑われるかと思いますが、そうお伝えください」
間借り企業という立場に甘んじているもののA社の事業は好調で、今年になってからSE・経理を補充。さらに今後は第二新卒数名の採用を考えていたのだ。

ただ、若手マーケットは売り手市場。まだまだ知名度のないA社は簡単に採用者を決めることは出来なかったが、将来性、そして環境ビジネスという分かりやすさで、応募だけはコンスタントに続いていた。
そして、そのうちのひとりSさんで事件が起きたのだ。

Sさんは我々のところに相談に来た時、何がやりたいか絞り込めておらず、色々な会社を受けながら自分の希望を探っていくような転職活動をしていた。A社は「そういった人も歓迎」と言っていたので、一次面接は簡単な質疑だけで、ほぼ会社説明のみ。二次面接で人物評価を行い、三次面接で希望部署・待遇などについて話し合うという方法で選考は進んでいった。
もちろん、その間も他社での選考が進んでいたが、煮え切らない態度のSさんは、内定をもらっても期限ぎりぎりまで回答を伸ばした末に断る、あるいは逆にS さんの意欲の低さに企業側が彼をペンディング(保留)にするといった具合で、最終的な結果がでないまま、月日だけが過ぎてしまっていた。

若手スタッフを渇望していたA社は、Sさんに内定を出し、期限を設けずに決断を待っていた。たびたびSさんをA社に呼んで話をし、情に訴える形で彼を呼び込もうとしたのである。
誘いを一度も断ることなく、Sさんは何度もA社に足を運んでいた。A社は「Sさんはきっと入社するに違いない」という感触をもっていたようだったが、我々はやや懐疑的だった。電話やメールでも打ち解けたところがなく、おそらく自分で応募した会社が数社あるのではないだろうかと感じていたのだ。そのことはA社にもそれとなく警告していたのだが、Sさんの行動を完全に予測は出来なかった。

そう、SさんはB社に転職したのだ。

Sさんはネットや紹介会社などで正式にB社に応募したわけではなかった。A社に呼ばれた時に、「最近よくお見かけしますが…」と呼び止められ、面接に来たという話をするなかで「うちでも応募枠があるはずだよ」と言われたことがきっかけで人事に会い、A社から呼ばれるたびにB社の人に会って顔を売って…、というプロセスで採用になっていたのだ。

これを聞いたA社は腹の虫がおさまらないといった様子だったが、Sさんは平然としていた。
「だって、入社すると約束したわけじゃないですし。それに、A社とB社を比べたら、やっぱり安定性のあるB社を選びますよ」
無念さ漂うA社は「やっぱり自分の門構えを持たないとダメですね」と間借り企業の悲哀を滲ませていた。Sさんが居づらいのも少しの期間になるかもしれないが、彼の図太さも相当なものである。同じフロア、それも同じ入り口を使う会社の人たちから、あれこれ言われながら仕事をするのは、相当やりにくいと思うのだが…。

※このコラムは、事実を元にしたフィクションです。
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