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2007年10月10日 09:00
転職徒然草
転職徒然草 リクルートエージェントメールホーム
誰も知らない、語らない転職裏話。エージェントを通じて転職した人、やっぱりやめた人。転職を考えていない人でも、真面目に考えている人でも楽しめる、日替わりコラムです。

無反応との闘い

人間にとって、もっとも不幸なことは憎まれることではなく、無関心に扱われることだとマザーテレサは言った。転職アドバイザーにとって、もっとも辛いのも、否定的な反応が戻ってくることではなく、無反応かもしれない。

転職支援は、無理強いしてはならないサービスである。ただ、転職の理由が会社の都合や業界の不振といった外部要因であったとしても、我々のところに相談に来ること自体は、本人の意志であるはずだ。だがYさん(26歳)は我々が選んだ企業リストを見て、「うーん」と唸ったきり何も言わずに椅子に沈んでいた。

「この会社はどうでしょう。業績が伸びていて、転職していった人が活躍している会社ですよ」
「どうかなあ…」
「仕事内容では三番目のこの会社、今までやってきたことが生かせるのではないでしょうか」
「あぁ…」
「どれもイマイチのようですね。では、この会社は全部リストから外した方がいいですかね」
「ダメといっているわけじゃ…。ただ、この会社・仕事が自分に合っているのかどうか…」
「それを見極めるために、直接面接に行くって考え方もありますよ」
「でもなあ…」

Yさんは退職したメーカーで支店総務の仕事をしていたが、雑用ばかりの仕事はもうやりたくないと、違う職種を希望していた。具体的に何をやりたいかという絞り込みができていなかったので、我々がリストアップした求人は多種多様なものだったが、どれを見てもYさんの反応は「是」でも「非」でもなかった。我々にとっては、いっそ「どの仕事も全然面白そうじゃない」と、蹴ってくれる方が有り難い。なぜダメなのか、どの仕事が特にダメなのかを掘り下げていけば、その人の志向が見えてくるからだ。
Yさんのように、応募するでもなく、かといって辞退を決めるでもない場合、次の手の打ちようがなくなってしまう。
「とにかく離職中ですから、いろいろ動いてみるのがいいと思いますよ」。我々はなんとかYさんの背中を押して、いくつかの会社への応募、セミナーへの参加を取り付けるしかなかった。

面接にいってみて、そこで自分が見えてくる人は多い。しかしYさんのケースでは選考が始まっても、その無反応ぶりに変化はなかった。
「今日いった会社の印象はどうでしたか?」
「いやあ、特に…」
「面白そうとか、つまらなそうとか、活気があるとか、自分に合っているとか」
「ん〜、よく、分かりません」
「じゃあ、先週セミナーで会社説明を受けた会社と比べて、どちらにいきたいと思います?」
「どちらも同じくらいかなあ…」

こんな調子だから、当然、面接で次に進むことは難しかった。特に志望動機を聞かれて詰まってしまうことが多いと、Yさんは我々に相談を持ちかけてきた。
「応募するときはまぁいいかな、と思っているのですが、どうして応募しましたかって面と向かって聞かれると、何も言えなくて…」
「相手企業の事業、応募した仕事のなかで、なにか面白そうって思えるところを見つけて、それと自分の経験・キャリアをリンクさせるように考えてみて下さい」
「それがうまくいかないのです。たとえば明日面接のA社、アドバイザーさんだったら、どんな風に志望動機を言いますか?」
「私なら、多分…」
返事をすると、Yさんは「今の、メールでまとめて送ってもらえますか?」という。そこまで必要かなと思いつつ依頼には応えたが、面接終了後、A社に話を聞くと、Yさんは我々がメールで送ったそのままを面接で喋っていたことが分かった。だが、いくら理路整然とした回答でも、自分の言葉でないことに変わりはない。細かい部分を突っ込まれると、Yさんにその先を答える力はなく、面接はまたも失敗に終わったのだった。

「思っていることをぶつけていかないと、自分に合った会社は見つかりませんよ」
「すみません。でも、何も思いつかなくて、つい…」
A社の選考がダメになったことにも、Yさんは気にする素振りを見せていなかった。

ポジティブでも、ネガティブでも構わない。今、我々が欲しいのはYさんの仕事に対する何らかの感情だ。仕事に好き嫌いがない人などいない。きっと、どこかに彼なりの価値観を示唆するものがあるはずなのだが、それは簡単には見つかりそうにない。
無反応との戦いは続いているのである。

※このコラムは、事実を元にしたフィクションです。


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