|
事業仕分けによる次世代スーパーコンピューターの開発予算削減について、どうお考えですか?
|
ジャガイモクンYさん(25歳)は、東京・虎ノ門界隈ではなかなか見られない姿で転職相談に現れた。紺色のジャージ上下である。
彼は決して、ジムに行く途中であったとか、近くでジョギングをしていたわけではない。その姿で千葉の自宅を出てJR・地下鉄を乗り継ぎ、真っ直ぐやってきたのである。 寝癖でピョンと跳ね上がっている髪、白い肌に赤いほっぺ、下マツゲが長いつぶらな瞳、中学生といってもおかしくない外見のYさんは、まるで日本むかし話に登場しそうなキャラクターであった。 「えー、相談に予約されたYさんでしょうか?」 我々がそう聞いてしまうほど、彼の容姿は、その場にそぐわないモノに見えた。 「はい。よろしくお願いします」 Yさんはジャージの三本線に合わせるかのように、指をまっすぐ腿につけ30度のお辞儀をして見せた。 Yさんは大学卒業後、就職活動はせずに親戚の紹介で地元の食品メーカーに入社、そこで生産管理の仕事をしていた。もっぱら、パート従業員(年配女性)を相手に仕事をしていた。容易に想像できることだが、職場では人気者だったそうだ。 転職は会社の業績悪化が理由で、Yさんは「どんな仕事でも頑張ります」と意欲満々だった。 意欲があるのはいい。しかし、正直なところ寝癖髪のジャージ姿でそう言われても、彼が内定をとる姿は、我々にはイメージできなかった。一通りの話をすませた後、我々は彼にいくつかのアドバイスをした。 「就職活動をしていないということは、面接の経験がないということでは?」 「はい。ありません」彼はキッパリと言った。 「Yさん、こんなことを言うのはなんですが、面接に行くときの恰好なのですが…」 「今日は普段着ですが、分かっています、スーツを着て行きます」 「それに髪も」 「エ?髪型、ヘンですか?」 失礼とは思ったが、指摘しないわけにはいかなかった。 「き、きづきませんでした。でも、寝癖があるといけませんか?」 「必ずダメということはないかもしれませんが、だらしないという評価になりかねませんよね」 「そうかあ…」 「キチンと髪をとかして、それでも寝癖が直らないのであれば整髪剤をつけて」 「整髪剤…ですか」 「持っていないなら、買うべきだと思います。転職は一生を決めることですから」 「そ、そうですね」 Yさんの強みは、徹底的に素直だったことだろう。彼は我々のどんな細かいアドバイスもバカにせず、頷きながらいちいちメモを取っていた。 「名刺入れ?持っていません。すぐに買いに行きます」 「白い靴下はだめなんですか。面接のときは、黒なんですね。靴も黒で出来るだけ新しいモノ…と」 「はい、喋る時はアゴを引きます。え、模擬面接をやっていただけるんですか?ぜひ参加させてください!」 一週間後、戻ってきたYさんは、少なくとも外見上はかなり進歩していた。 真新しいスーツと革靴で、少なくとも高校三年生くらいには見えるようになっていた。さらに模擬面接で落ち着きのないしゃべり方、話を聞くときに開く口元、不自然な手のジェスチャーをなおすと、まずまず面接に行っても恥ずかしくないレベルに成長することが出来た。 いくつかの企業に応募、面接を受けた後(まだ内定は出ていないが)、Yさんは再度、我々のところにやってきた。彼はジャージ姿の四週間前とは別人であった。 「近くまで来たので、新しい服をみてもらおうと思ったんです。せっかくここまでやったので、有名美容室で髪を切って、専門店で服を選んでもらいました」 嬉しそうなYさんは、短く刈った髪をジェルで立たせ、グレイのシャツに薄いチェックが入ったカシスレッドのタイがよく似合っていた。転職活動中に自信をつけ、別人のように変わる人が時々いるが、容姿だけで言えば、Yさんはそのなかでも別格だった。 感嘆の言葉を口にすると、Yさんは「ボク、中学の頃はジャガっていうあだ名だったんです。ジャガイモの略で」と、小さな声で教えてくれた。 「きっと、新しい会社の人たちは、信じられないって言うと思いますよ」。 我々は心からそう言ったのだった。 ※このコラムは、事実を元にしたフィクションです。 |
japan.internet.com 10周年記念
インターネットコムマーケティングセミナー ROI を最適化するパフォーマンスマーケティングの最前線 【12/16(水)13時〜 東京・赤坂】 申込はコチラ>>
|