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リクルートエージェント |
誰も知らない、語らない転職裏話。エージェントを通じて転職した人、やっぱりやめた人。転職を考えていない人でも、真面目に考えている人でも楽しめる、日替わりコラムです。
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葛藤する人事
著者: リクルートエージェント プリンター用 記事を転送
▼2008年1月16日 13:20 付の記事
□国内internet.com発の記事
転職が売り手市場になり、各企業の人事は苦心の日々が続いている。専門商社A社の人事Tさん(31歳)も必要人員が確保できず、上司から厳しい指示を受けていた。
「背に腹は代えられないんだから、多少条件を落としても数を確保しろ。下半期は上半期の不足をとりかえせ。」
Tさんは各地を飛び回り、セミナー・面接をこなしてこれぞと思う人材の確保に躍起になっていた。
そんななかで浮かんできたのが、Mさん(27歳)の採用だ。セキュリティーサービスベンチャー勤務のMさんは、アグレッシブな性格の営業らしい営業で、各社の面接で高い評価を受けていた。しかも、Mさんとしては留学経験を活かすために海外営業を希望しており、A社の優先順位は高かった。
人材不足のA社にとって、Mさんはありがたい存在のはずだったが、面接に立ち会ったTさんは、Mさんの採用に確信が持てずにいた。
Mさんは新卒時の就職活動で敢えてベンチャーに飛び込むようなメンタリティーの持ち主。チャレンジ精神に富み、どんどん前に進んでいきたいタイプなのは、同席した面接で明らかだった。
対して、A社の海外営業は地道・確実さが求められる。相手にするのは外国の政府関係者が多く、コネ・根回しで足場を固め、契約を積み上げて一歩一歩進んでいくような営業だ。
両者が果たしてかみ合うかどうか…、Mさんは他の会社にいったほうが幸せなのではないか…、選考が進むに従ってTさんのなかでは、そうした気持ちが大きくなっていった。
専門商社としてのA社は、業界では知られた存在であり、社内の雰囲気も決して悪くはない。仕事の社会的意義も大きく、採用を任されているTさんも、自分が世の中の平均よりも強い愛社心を持っていると自負していた。
会社の利益だけを考えれば、MさんをよりA社に惹きつけるよう、説得していくのがTさんの仕事だったはずだ。しかし、彼にはそれが出来なかった。
最終面接が終わり、いよいよMさんの判断を待つという段階になって、Tさんは我々に言ってきた。
「ご相談したいことがあるんですが…、A社の他の連中に絶対に知られては困るんです。」
「は、はい、どんなことでしょう?」
「Mさんなんですけど、まったくの個人的意見なんですが、うちじゃない方がいいんじゃないかと思っていまして。」
「え?でも、A社としては内定という方向でしたよね?」
「ええ。A社としてはね。A社としては人が足りない現実がありますし、Mさんだったらすぐに戦力になるとは思うんですが…。」
「個人的には、違う考えがあると…?」
「ええ…。」
Tさんはこうして、我々に自分の葛藤を告白してくれた。
「このことはエージェントさんから伝えてください。私の口から伝わったというのはマズいので。」
「いや、直接おっしゃるべきだと思いますよ。私たちは決して他言しませんので。」
「Mさんから漏れる可能性もありますよね?」
「それはそうですが…。」
「私はA社の人事です。プロとして直接今の話をするわけにはいきません。いや、彼には私が言っていたということも言わないで下さい。A社の誰かからということで、彼に話を伝えてほしいのです。」
それが悩みに悩んだ末のTさんの結論だった。自分では言えないが、我々を通じて、やんわりとTさんの気持ちを伝える。それで、Mさんには彼に相応しい道を選んで欲しいというわけだ。
我々はTさんの立場を慮り、Tさんの名前は伏せた上で、改めてA社の社風の話をした。黙って聞いていたMさんは話が終わると、興奮した声でこう言った。
「そこまで自分のことを真剣に考えてくれる社長がいるなんて、本当に感激です。実は別の会社に気持ちが動いていたのですが、これで決心がつきました。ぜひ、A社でお世話になりたいと思います!」
「あ、あの、社長が言ったとは言っていませんよ。」
「そういうことを言って下さるのは、たいてい社長じゃないですか。お会いした時も人格者だって思ったんですよ。」
「いえ、でも…。」
「立場上、名前を出せないっていうのももっともです。しかし、僕はA社に行きますよ!」
こうして、MさんはA社に転職する運びとなった。あとで、経緯を知ったTさんは「仕事的には大助かりなんですけどね…。私が将来出世して社長になれればいいのかな。」と、冗談交じりに、そして力なく笑っていたのだった。
最後にひとつ付け加えると、Tさんの懸念は杞憂に終わった。アグレッシブなMさんは、すべての仕事を前向きに捉えるタイプ。これまでとは違ったA社の営業スタイルを心から楽しんでいるようである。
※このコラムは、事実を元にしたフィクションです。
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