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リクルートエージェント |
誰も知らない、語らない転職裏話。エージェントを通じて転職した人、やっぱりやめた人。転職を考えていない人でも、真面目に考えている人でも楽しめる、日替わりコラムです。
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親友は別の顔
著者: リクルートエージェント プリンター用 記事を転送
▼2008年3月13日 13:00 付の記事
□国内internet.com発の記事
Tさん(26歳)は純真さの残る、一途な人だった。
「飛行機が好きで、就職は航空業界を狙ったんですけど、採用人数が少なくて二流大学のボクなんか全然相手にされなかったんです。」
航空自衛隊に入ることも真剣に考えたが、つきあっていた彼女が難色を示し断念。結局、Tさんは飛行機とは何の関係もない機械商社で働くことになった。
「周りからは、少ししたら『今の仕事も面白くなる』って説得されたんですけど、やっぱり飛行機のことが頭から離れません。彼女とも別れちゃったし(笑)、年収なんかは気にしません、なんとか飛行機関係の仕事に就くことは出来ないでしょうか?」
我々がまずTさんに最初に用意したのは精密機器・機械部品メーカーだった。彼のキャリアを活かすことが出来、会社が製造している装置・部品のなかに航空機(あるいは検査機器)に使われている物があるので、航空業界とのつながりを感じられると考えたのだ。
しかし、Tさんは紹介した会社のサイトや、仕事の中身を見て、「これでは今の仕事と大差ないというか…。難しいことは分かっているのですが、飛行機をもっと身近に感じられる仕事が…。」と、すまなそうな目でこちらを伺いながら呟いた。
我々は笑顔を作って「いいんですよ。もっと航空業界に近い仕事を探してみましょう」と、Tさんに話しかけた。
しかし、同時に我々には、彼の希望に合った仕事があるかどうか、あっても若干であることが分かっていた。キーボードを叩き、検索結果が出るまで数秒、Tさんは忙しなく指を動かしていた。
「我々から、いま紹介できるのは、外資系A社だけですね…。」
A社の親会社は、航空業界では大手として名の知られた企業。仕事は空港まわりのサービス職で、これまでのキャリアとは離れるが、空港での舞台裏に入りこめる希有な職種だった。
「一発勝負…ですか。」
Tさんの目が大きく開かれ、表情に力がこもった。
A社の求人は、第二新卒層を中心に、人気があった。いわゆる有名大学出身者の応募も多く、書類選考は通ったものの、Tさんの採用の可能性はお世辞にも大きいとは言えなかった。
特に問題なのは、本社のマネージャーが行う英語面接で、Tさんは仕事上、メールで英語を使っていたが、「ヒアリングも、喋るのも、ほとんど出来ません」と言っていたのだ。
しかし、Tさんの気持ちは本物だった。彼は想定される質問回答の英訳を、我々の協力のもとに作成。さらに、それを一夜漬けで暗記して面接にのぞんだ。
通常、そうした付け焼き刃は、転職後に苦労するので止めた方がいいとアドバイスする我々なのだが、Tさんの時には自分から模擬面接を申し出てくる積極性や、A社とその仕事について徹底した勉強をするといった熱意に、すっかりほだされてしまっていた。
面接後Tさんは「英語は少しバタバタしましたが、とにかく『飛行機が好きなことにかけては、誰にも負けない』という想いは伝えてきました」と、やりきった感あふれる報告をよせてくれた。
そして一週間後、彼の元に吉報が届いた。まさかのA社内定。こうした情熱がカタチになる転職は、エージェントにとって最高に嬉しいものである。我々はTさんと共に、自分のことのように転職成功を祝ったのだった。
A社入社後、Tさんから一通のメールが届いた。
「ボクの小学生来の親友が転職を考えているそうなので、ぜひエージェントさんに紹介したいのですが…。」
もちろん、我々は快諾して、面談の日を待った。
「劇的な転職をしたTさんの親友…、また素敵な転職のお手伝いが出来るような予感がしてしまうな」我々は、Tさん内定の日を思い起こし、特別な感慨で親友Yさん(27歳)を迎えた。だが…。
「転職の希望は、何でしょう?」我々の質問に、Yさんはあからさまに困った顔をした。
「何でもいいですよ。楽が出来れば。」
「え?何かあるでしょう?多少曖昧な希望でも構いませんよ。」
「別に(苦笑)。生活に困らなければ何でもいいですよ。キツい仕事は嫌、それだけです。」
「楽なら、業界も仕事も、何でもいいんですか?」
「ええ、そうです。」
ドラマティックな展開を考えていた我々は、すっかり拍子抜けしてしまった。純真で努力家のTさんからの紹介で来た人が、「楽ができれば何でもいい」とは…。Tさんの親友は、また別の顔を持ち、別の人生を歩んでいたようである。
※このコラムは、事実を元にしたフィクションです。
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