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リクルートエージェント リクルートエージェント
誰も知らない、語らない転職裏話。エージェントを通じて転職した人、やっぱりやめた人。転職を考えていない人でも、真面目に考えている人でも楽しめる、日替わりコラムです。

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REC(録画)

著者: リクルートエージェント プリンター用 記事を転送
2008年3月19日 12:00 付の記事
□国内internet.com発の記事

退職交渉では、引き留めたい企業側が、転職希望者の辞意を受け付けようとしないことがよくある。そんなとき有効なのが「記録に残す」ことだ。といっても、特別なことをするわけではない。メールのやりとりを保存しておき、条件を改善するというなら、それを文書にしてもらうといったことをすればいいだけだ。

問題は、口頭ベースのやりとりをどうするか…。「言質をとる」という表現もあるが、残念ながら我々はクチ約束が反故にされた事例に幾たびも遭遇している。

エンジニアTさん(30歳)は大手自動車関連メーカーA社から内定をもらい、「入社します」と明言をしていたが、それが実現するかどうかはフィフティーフィフティーだと我々は考えていた。問題はTさんの意志ではなく、彼の現職B社の技術部門マネージャーN氏の存在であった。

守秘義務上、Tさんに明かすことは出来なかったが、この半年、三人のB社エンジニアが転職を目指し、内定をもらいながら、うち2人はN氏の説得でB社に残る事になっていたのだ。

N氏の説得方法は「君の希望を数年以内にかなえることを約束する」「役員にかけあって、かならず待遇は上げる。俺のクビをかけてもいい」など、「うまい話」を延々するというもの。単純だが、分かっていても「君に去られては、プロジェクトがもたない」などと熱っぽく口説かれると、情に駆られてせっかくのチャンスを諦めてしまう人も多い。

TさんもN氏の部下の一人で、しかも、以前の3人よりエンジニアとしてのキャリアが長く、慰留もより激しくなるに違いないと思われていた。

「Tさん、おそらくA社から強い引き留めがあると思いますよ。」
「はは、大丈夫ですよ。A社のほうが自分にプラスだって確信してますから。」

最初は誰もが、そう言うのだ。我々はしっかりフォローを欠かさないつもりでいた。

「面倒かもしれませんが、どんなことを言われたか、どんな条件を出されたか、逐一報告をもらえますか?A社が心配していますので。」
「分かりました。私も、退職でゴタゴタするのはイヤなので、アドバイスをお願いします。」
「早速ですが、辞表の方は…。」
「今日、直属の上司に手渡しました。彼は課長クラスの人なので、それほど権限はないんですよね。『上に報告するから、ちょっと待ってくれ』と言われました。」

しかし、その後、数日間は進展なし。時間稼ぎは慰留の初歩的手段だが、A社から示された入社日が早いこともあって、Tさんは我々との連絡で焦りを隠さなかった。

「どうなってますか?と聞いてはいるんですが。上司も人事の方も『まずは技術部を統括するマネージャー(N氏)と話してくれ』の一点張りで…。どうしたらいいのでしょう?そのマネージャーは今、海外出張中なんです。」
「出張中でも電話をかけられませんか?」
「国際電話ですか?」
「ええ。こちらからどんどん攻めていかないと、会社は動きませんよ。」

このやりとりの後、TさんはB社が少し前に海外とのやりとりを行うための高画質テレビ会議システムを導入した事を思い出した。使用届けを出すと、事情を知らない総務は「あまり使われていないシステムの申請が来た」と大喜びで、N氏のスケジュールを押さえてくれた。

モニター内のN氏と対峙することになったTさん。どんな誘惑、どんな甘言が飛び出すのかと思っていたのだが、意外にもTさんはその場でアッサリN氏に転職を認めさせてしまった。

「一体、どうして?」

不思議に思った我々がTさんに根掘り葉掘り聞いて分かったのだが、彼が退職交渉に使ったテレビ会議のシステムは、会話の内容が自動的に録画されるものだった。つまり、N氏としては下手な約束は出来ない状況で、しかも、時間が出張先で深夜だったため、疲れていたN氏は、気の利いた引き留め文句も言えないまま、Tさんの退職を認めるしかなくなったというわけだ。

何かコトを起こす時に、「記録を残す」というのはやはり大事なことである。場合によっては、退職交渉に録音機器を持ち込んでもいいかもしれないし、「それはあまりに露骨で、相手の気分を害しそうだ」というなら、メモを取るだけでもすべきだろう。もし、会社が退職交渉を記録してくれるというなら、こんなラッキーはないということだ。



※このコラムは、事実を元にしたフィクションです。



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