− 先生の近況からお聞きしたいのですが、大学ではご研究と学生の指導を行っていると思います。
研究は窒化ガリウムを使った青色LEDと青紫半導体レーザで、どちらも発光効率を上げようと努力しています。今はLEDで50%、レーザで30〜40%といったところですが、理想を言えばどちらも100%にしたい。まあ、100%ですと熱の発生がなくなる。しかし、何にでも100%はないので、実質的な目標は90%強というところでしょうか。 そのために同じ大学の教授10人、企業10社ほどと組んで、「固体素子発光照明センター」を設立しました。私を含めた4人が中心的な役割を担って、青色LEDと青紫半導体レーザを研究しています。今後もUCSBの中に「新エネルギーセンター」を設立する予定です。研究には資金が必要ですから、ここでも企業や国の協力を募るつもりです。 また、私の研究室は博士課程の学生だけですが、全部で10人ほどいます。博士課程の学生対象に2時間の講義を週に2回行っています。こちらの学生たちはみんな元気ですね。卒業生たちの多くはベンチャー企業に行くか、自分で会社を興してしまう。既に3人、いやこの前ポスドクがひとり起業したから、4社が立ち上がっています。いずれも窒化ガリウムを基にしたベンチャーで、こうした会社が大学からクルマで5分程度の周囲にたくさんあります。もちろん大学も協力して、彼らは大学と連携を取りながら仕事を始めるわけです。
− チャレンジを応援する土壌があるのでしょうね。
起業のシステムが出来上がっているのです。こちらは大企業でもベンチャー企業でも給料や福利厚生はほとんど同じですし、ベンチャーキャピタリストは資金を出すだけでなく、ビジネスを軌道に乗せるサポートもしていますから。 ほら、男の楽しみは「飲む、打つ、買う」というでしょう。私は酒は飲まないけれど、仕事がギャンブルだと思っています。だから面白い。同じように大きいリスクを取っても、大きいリターンを期待する人は独立するし、そう望まない安定志向の人は大手企業に行く。日本はもっと悲惨で、誰もが大手企業に入りたがって、優秀な人もそうでない人も「永遠のサラリーマン」をやっている。 理由のひとつは、日本が「一芸に秀でた人」を認めないからでしょう。唯一の例外がプロスポーツで、イチローや松坂大輔は「すごい」と評価されるけど、優秀なエンジニアは認めてくれない。 例えば、化学が好きなら無理して文学を学ぶ必要はない。というより、好きなことをやっていたらほかのことなどできない。それでは中途半端な人間になると心配する人もいますが、プロアスリートは子供のころからそのスポーツだけを続けて、努力して、今の地位を築いているはずです。 しかし、彼らは決してスポーツバカではないし、むしろ人格者であるから、勝負の結果によらず尊敬されている。それがほかの職種ではダメだという。仮に成果を出しても評価されない。「アホか」と思いますね。