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お茶の水女子大学理学部情報科学科
教授 工学博士 |
椎尾一郎氏 |
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空中にペンで自由に書いてメモを共有、さらに人の位置を検出する『空気ペンとナビ下駄』がテレビや雑誌などで頻繁に登場したのは、今から10年ほど前のこと。ドラえもんの四次元ポケットのような面白い開発をしていると話題になった研究者は、その後も率いる研究室で着々とユニークなテーマを生み出してきた。それが、椎尾氏だ。料理に合った色の柄を皿に投影、一枚の皿をさまざまに彩る『いろどりん』、フックにかけるだけで洋服を撮影、管理できる『タグダンス』、家庭の様子をオルゴール調の音楽が奏でる『居るゴール』、そして遠隔地の恋人の状態をさりげなく知らせるために置かれた家具、日用品、調度品が同期する『遠距離恋愛システム』……。実世界指向インタフェースで日常生活に密着したユビキタスコンピューティングに挑む椎尾氏は、日本IBMの東京基礎研究所勤務を経て、大学に転じている。 |
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ユビキタスというと、「どこでも使えるコンピュータ」というイメージでしょう。例えば、携帯電話がそうじゃないかと。でも、ユビキタスという言葉を世に送り出したマーク・ワイザーが言っていたのは、ちょっと違うんです。彼はコンピュータの時代はこう進化すると言っていました。大人数に1台のメインフレーム、1人1台のPC、そして1人でいくつも使う時代。ユーザー数で言えば、50万人、500万人、50億人。50億人には、赤ん坊も入ります。つまり、携帯電話のようなマシンではなく、食器や洋服といった日用品にコンピュータが入っていく。これが、本来のユビキタスの考え方です。どこにでもある、ではなくて、ありふれたものになるんです。
似たものにモーターがあります。20世紀の初め、電気モーターは非常に高価でした。メーカーは、これが1台あれば、アタッチメントを変えていろいろ使えますよ、と言って販売した。フードプロセッサーになったり、掃除機になったり。これは、今のPCと同じです。20万円するけれど、ワープロにもなるし、年賀状にも使える。
モーターはやがて、いろいろなモノの中に入ります。今もいろんなモノに入っていますが、誰もモーターの存在など意識していない。PCも、小さく安くなっていろいろなモノに組み込まれるようになるんです。ユビキタス時代のコンピュータは、モーターによる電動ハブラシのように、単機能の専用機になるでしょう。コンピュータといってもひとつのことしかできない。ひとつのことしかしない。
マーク・ワイザーは晩年、ユビキタスなんて言葉を使わなければよかったと言っていたそうです。違うニュアンスで受け止められてしまったから。コンピュータがどこにでもあるのではなく、誰もその存在に気づかなくなることが、彼のイメージしたユビキタスなんです。
だからこそヒューマンインタフェースの研究が大事になる。コンピュータをどこにでも置くことは今も可能です。問題は使い方なんです。コンピュータを取り入れることで、人々に何がうれしいのか。これを探さないといけない。今、最も足りないものが、何が便利で、面白くて、心地いいか、なんです。アプローチとしては、僕は3つがあると思っています。ネットワーク上の情報を表示してくれるもの。モノ探しや収納。そしてカジュアルなコミュニケーションです。 |
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遠距離恋愛支援システムを作ったユビキタスの椎尾一郎