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間瀬博行 間瀬博行(ませ ひろゆき)
複数の海外資本の金融機関で為替や株式などのディーラーを歴任後独立。現在一投資家として市場を見つめる。

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転換点を迎えた株式市場

著者: 桜井信一郎 プリンター用 記事を転送
2003年7月11日 00:00 付の記事
□国内internet.com発の記事

株式市場が大活況を呈しています。

つい最近まで「不況だ! デフレだ! うどんが100円だ、俺は2杯も食べたぞ!」と友人が喜んで大騒ぎしていたのがまるで夢のようです。日経平均が一時一万円の大台を回復しました。あまりの活況ぶりに東証のシステム処理が追いつかず、価格配信システムが何度かトラブルを起こしてしまいました。国債も売られて長期金利が上昇してしまい、秋には住宅金融公庫の金利も引き上げられるということです。10年以上にも及んだ株式市場の低迷は転換点に差し掛かり、「失われた10年」は「希望の10年」に変化しているように思われます。株式市場を取り巻く環境は、株式市場の上昇にとってパーフェクトなものが備わっていたと思います。なぜなら市場を取り巻くキャッシュの流れに大異変が起きていたからです。

例を挙げてみましょう。日銀総裁の交替によるドラスティックな金融政策の変化(特にこれまで禁断と目されていた、事実上の日銀による企業への融資)。先週観測された「マイナス」金利(お金を預けると金利が取られる現象)や債券市場の下落、巷に溢れだして行き場を失っていた大量のタンス預金やタンス株券の市場への還流市場への還流。りそなショックによって金融危機の未然回避のスキームが市場に認知されたこと、本年11月にあると見られる総選挙(選挙に向けて当然株価は高いほうがいいというコンセンサスが生まれる)。そして米国株式市場の堅調ぶりと同国の金融緩和傾向、117円台で警戒される為替市場へのドル買い介入を押しての円高傾向――など、とにかく日本の株式市場を取り巻くキャッシュの流れが、グローバルな視点からもプラスの方向に向かい始めていました。

「株価のベースとなる企業業績や景気が本当に回復しているのか」という懐疑的な意見があることは承知していますが、ここ10年以上の株式市場の低迷は、デフレによる企業や国家のバランスシートの劣化がベースであるはずです。理由が何であれ資産価格が上昇すれば、バランスシートは改善します。銀行の不良債権問題に関する高度な議論を筆者なりに乱暴に端折ってしまえば、「株式市場が上昇すれば、おおむねバランスシートはきれいに出来て、景気は好転する」ということかと思います。更に乱暴ですが、資本主義の円滑な仕組みは緩やかなインフレ傾向で成立すると考えれば、経済システムという大きな枠組みの視点からも、株式市場の上昇は大きなインパクトを持っていると考えられます。

そしてその日本の株式市場ですが、3月に日経平均が7,600円台の市場最安値を記録してからは、既に約1.3倍の1万円前後にまで上昇しています。

こうなるとデフレ不況の様々な議論は何だったのか、株式市場が上昇すれば企業のバランスシートは改善して株価が上昇、そして更に株式市場は上昇して…(繰り返す)というインフレ・スパイラル構造が出来上がってしまいます。もちろん株式市場の上昇が終わってしまえばそれまで、という一見脆弱な部分には注意が必要でしょう。しかしここまで市場が上昇すれば、持ち合い解消の株式売却や年金運用代行返上の売りといった本源的なバランスシートの健全化を目的とする方策も順調に進むことでしょう。更に株式市場から溢れ出した資金は不良債権の買取といった様々な方面に循環していくかもしれません。

従って、仮にまた日経平均が7,000円台に突入しても今よりもずっと状況は改善していることでしょう。いくぶんパラドックス的な表現で恐縮ですが、現在既にバランスシートが性質的に改善しているはずだから、そこまで株式市場は下落しないという見方も出来ます。また市場が下落のそぶりを見せれば資産売却を急ぎバランスシートの改善を急ぐ向きも出てくるでしょうから、株式市場のダウンサイド局面にも経済にとって幾分かのプラスのスパイラルが出来上がったという構造も見えてきます。

ずいぶん長い株式市場の低迷でしたが、デフレ不況の根底に位置した市場環境の悪化が改善してきた現在、資産運用のことはもちろん、デフレ環境が強制してきた仕事やライフスタイルなどについて、これからの希望の10年を見据えて我々一人一人が方針を考える重要な時期に差し掛かったのではないか――。株式市場はそう我々に語りかけているように思えます。

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