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サイボーグの脳=夢のデータベース『海馬』という本をご存知でしょうか。
これは、糸井重里さんと東大で海馬の研究をしている池谷祐二さんとの対談です。
前回のコラムで、 糸井さんが、 ファイルシステムに根本的な疑問を投げかけていることを取り上げましたが、 恐らくそういう発想の根底にあるのが、この対談だと思います。 今回は思い切って、これまで見て来たハードディスクの呪縛から逃げ出し、 我々の働き方を変えてしまうような、 夢のデータベースファイルシステムについて想いをめぐらせてみようと思います。 『海馬』の中で、池谷さんは脳の機能を大きく2つに分類しています。 「情報を保存する」と「情報を処理する」です。 ものすごく難しいことをしていそうな脳ですが、 結局はこの2つに分けられるそうです。 そして脳が取り扱う情報、つまり記憶には2種類あり、 「意味記憶」と「方法記憶」だというのです。 前者は単なる暗記、後者は問題解決の道筋や、自転車の乗り方などの方法です。 さて、これらをデータベースに当てはめてみると、かなりストレートです。 情報を保存するというのは、データの追加に相当し(脳は更新や削除を行わない)、 情報の処理は、各種クエリといえます。 記憶の種類については微妙ですが、 意味記憶は通常データ、 方法記憶はトリガなど特定の情報を処理する仕組みに置き換えることが可能です。 また、脳には可塑性があり、 シナプスのひとつひとつが可塑性を持っているというのです(シナプス可塑性)。 これをデータベースで考えてみると、 可塑性というのは永続性と言い換えられるでしょう。 また、シナプスや神経細胞の構造は、 道路ネットワークのような、グラフ構造だといえます。 お馴染みのテーブルよりさらに柔軟なグラフ構造を扱える、 永続化の機能があるデータベース、 つまりオブジェクトデータベースのようなイメージです。 カーナビのデータベースと言ってもいいかもしれません。 ここまで見てみると、脳とデータベースの機能には大きな差がありません。 ハードディスクには実現できない、 圧倒的なスピードを持っていることはもちろん大きな魅力ですが、 もし高速化だけが将来のデータベースに期待できることなのだとしたら、 それは私たちの働き方を変えるようなインパクトをもたらさないですね。 脳のすごさはここからです。 『海馬』というタイトルにもあるように、海馬の存在を見逃すことはできません。 海馬とは情報が必要かどうかを判断する場所だそうです。 記憶するために私たちは特別なことをしませんよね。 五感から流れ込むものすごい量の情報から、 本当に必要なものだけを判断しているそうです。 なかなか記憶しようと思ってもできないこともありますが、 生命に危機をもたらすかどうかとか、 扁桃体という感情(好き嫌い)を司る器官の動きによって左右されるそうです。 データベースには海馬のような機能は存在しないので、 データの要・不要は人間が判断しなければなりません。 そして現在のデータベースが扱えるデータは基本的に文字だけです。 文字は視覚情報の一情報に過ぎませんから、 取り扱えるデータの種類にも大きな差があります。 また、脳の神経細胞は、 無意識のうちに記憶のつながりをランダムにいじっているそうです。 その典型が夢で、こうしてデータの整理をしているそうです。 さらに、神経細胞は自分でつながる相手を探します。 このような高度な機能は、 データベースとして考えると想像することさえ難しいですね。 このように考えてみると、夢のデータベースとはサイボーグの脳かもしれません。 今日のデータベースと比べた場合の大きな差は、 データの要不要を夢のデータベースが判断してくれるということです。 また、五感で感じることのできるような様々な情報を取り扱っているでしょうね。 ということは、 サイボーグがいるような未来では、今日のデータベースはないでしょうね。 その代わり、情報を管理してくれるサイボーグと一緒に仕事をする、 そんな将来がやってくるのかもしれません。
記事提供:db4objects
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