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庭山 一郎(にわやま いちろう) |
シンフォニーマーケティング株式会社 代表取締役
多くの経験を持つデータベースマーケティングプランナー。
現在はBtoBに特化してマーケティングをサポートしている。
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SFA はコロッケ製造装置
著者: 庭山 一郎 プリンター用 記事を転送
▼2006年6月14日 09:00 付の記事
□国内internet.com発の記事
■ 新人が教えてくれた示唆に富んだ比喩
「要するに SFA ってコロッケ製造装置みたいなものですね?」
「……」
数年前に中途で入社した営業スタッフに、法人営業(BtoB)の新規受注までのラインとそこで使われるツールの話をしていた時、突然コロッケ製造装置という比喩を持ち出されてたじろいだことがある。
製造業向けにデバイス関連の営業で優秀な成績を上げて転職してきたこのスタッフから見ると、SFA【Sales Force Automation】というややこしいビジネスインテリジェンスがコロッケの製造装置に見えたらしい。
発想は意外だったが、考えてみればこの比喩には多くの示唆が含まれている。特に SFA を導入しても上手く活用できない企業に、いったい何が問題なのか、を説明するには最適の比喩なのだ。
SFA がコロッケ製造装置ならば、ジャガイモの皮をむき、潰し、タマネギやひき肉などの他の材料や調味料を投入し、充分に混ぜ合わせ、整形し、そして油で揚げ、揚げた完成品を梱包するという機能がライン上に並んでいなければならない。
現代の食品製造業の技術レベルからすれば何でもない製造ラインかもしれないが、このラインの全てがスペック通りに機能しなければ美味しいコロッケは出荷できない。主原料であるジャガイモとタマネギはもちろん、ひき肉や調味料の量、整形する時のプレスの強さ、油の温度、揚げる時間などのどれかひとつでもスペックと違えば大量に作られたコロッケは売り物にならず廃棄処分となる。
SFA に数多くのインジケータ(計器)機能がついているのはこのためである。パイプラインのどの部分にどんな案件がどれくらいあって、それが今どんな状態であるのかを可視化できる機能をたくさん実装しているのだ。
これによって営業マネージャーや事業本部長はラインの手薄なところに営業スタッフやテクニカルサポートなどの、そのポイントに不足しているリソースを振り向けることができるし、パイプラインのある部分、例えば見積もりを出して返答を待っている「ウェイティング」という工程にある案件数とその商談内容を世界中、あるいは全国でリアルタイムに知ることで在庫を調整したり外注業者へ発注を掛けたりして、受注に先立って納品体制を整えることもできる。
■ 現代のパスパ文字「TCP/IP」
世界中に広がる自社の営業拠点で何が起きているかをリアルタイムに知ることは決定的な意味を持つ。これは800年前にチンギス・ハーンが建国したモンゴル帝国が証明している。当時、産業基盤はもちろん文字すら持たなかった東北アジア辺境地域の遊牧民が数百年にわたってユーラシアの大半を支配できた原動力はいったい何なのか? その秘密のひとつは「ジャムチ」と呼ばれた駅伝による情報通信網だった。
彼らは東西南北数千キロにも及ぶ広大な支配地域の隅々までこの「ジャムチ」を張り巡らし、今どこで何が起こっているのかを正確に把握することができた。だから帝国内のどの地域で反乱が起こっても、そこから最も近いところに駐屯している騎馬軍団を動かしてあっという間に反乱軍をなぎ倒すことができた。
この時代モンゴル帝国の支配地域は今以上に多くの民族が多くの言語を使用していた。人口が少ないモンゴルは地域の行政を地元民族に任せるしかなく、そのためにジャムチで交信する「パスパ文字」という新しい公用語、今で言う統一プロトコルまで作ってしまった。
世界を覆う通信インフラであるジャムチとそこを高速で駆け抜ける騎馬の伝令、そして統一プロトコル…これがモンゴル帝国の強さの源だった。
現代のパスパ文字である TCP/IP で世界中を結ぶインターネットに繋がれた SFA は、うまく活用すればこれに似た力を発揮することができる。SFA のポテンシャルはそれ程素晴らしいのだ。
■ 悪いのは原材料とその運用
では、なぜこれほどの可能性を持つ SFA が多くの企業で活用できていないのだろうか?それは先ほどの「コロッケ製造装置」で説明することができる。
SEO、アフィリエイト、レンタルリストへのターゲティングメールやメルマガへの広告などのネット広告や、展示会、セミナーなどのリアルイベントは全て「原材料の調達」に当たる。ジャガイモやタマネギやひき肉などの調達である。
しかし、様々な手段で集められた原材料を吟味もしないでコロッケ製造機にどんどん放り込んだらいったいどうなるだろうか?ジャガイモは泥だらけだし、中には腐っているものも、芽が出てしまっているものもある、たまねぎも皮がむいていないし、ひき肉は粗さがまちまちで、しかもブタだったり鳥だったりとこれも均一とは程遠い状態なのだ。
質だけでなく量にも問題が多い。製造ラインの鉄則は「後工程の処理能力を超える量を流してはいけない」ことだ。例えば検品ラインの処理能力を超える完成品を生産すればライン上で大渋滞を引き起こすか、検査の甘い製品が市場に出回って、後に大クレームを引き起こすことになるからだ。
残念ながら導入後機能していない SFA は泥だらけのジャガイモや腐ったひき肉を大量に放り込まれたコロッケ製造装置に似ている。出てくるものは粗悪品で売り物にならず、その原因は原材料の品質やその入れ方であるにも関わらず、製造装置が悪いと言われているのだ。実際に多くの SFA に放り込まれた顧客・見込み客のデータの量や質はそんなレベルなのだ。
私が、SFA や CRM を活用できない理由は、そうしたツールの機能が不足しているのではなく、「運用」に問題があると言っているのはこうした背景からなのだ。
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