第五十回 「ソーシャルコマースの潮流(10)『消費者の時代』の本格的な到来」初回のイントロダクションを含めて過去10回に亘り、消費者による情報発信がマーケティングプロセスに組み込まれるという新潮流「ソーシャルコマース」について述べてきた。この新しい現象は、従来限られた情報から判断するしかなかったユーザーの消費行動を劇的に変え、非常に細かなニーズへ対応したり、既存メディアによるプロモーションとは異なる販促効果を生んだりしている。
今回は、消費行動モデルの変遷を参考にしながら、ソーシャルコマースを総括する。 アメリカの Roland Hall は、以前から消費行動モデルとして「AIDMA」を提唱していたが、これに代わって2005年10月に電通が発表した新モデル「AISAS」は、EC における新しい消費行動を提示した。そこでは「Memory(記憶)」に代わって「Search(検索)」という行動が加わり、商品購入後は「Share(情報共有)」が行われるというものだった。 「AISAS」の起源はその数か月前に発表された「AISCEAS」にさかのぼる。これはアンヴィコミュニケーションズ代表の望野氏が提唱したモデルで、「AISAS」以上に Web2.0 時代の消費行動モデルを的確に象徴したものだ(詳しくはこちら)。 すなわち、(1)Attention(注意)、(2)Interest(興味)、(3)Search(検索)、(4)Comparison(比較)、(5)Examination(検討)、(6)Action(購買)、(7)Share(情報共有)というもので、Comparison(比較)・Examination(検討)という二段階が加わっている。ソーシャルコマースという潮流は、AISCEAS の前半、つまり商品の情報を集め、最適なものを選ぶという行動を、クローズアップしたものと言えよう。 具体的には、Amazon が誇るレコメンデーション(推奨)機能や、ユーザー投票によって決められる商品ランキングは、ユーザーの「Interest(興味)」を強く喚起することに成功した。また、Etsy が提供する「色」「時間」「場所」などの様々な検索チャネルや、wize が集めるアグリゲート情報は、「Search(検索)」という行動をより豊かなものにした。 そして、kaboodle が提供するウィッシュリスト機能や、ThisNext が提供する楽しい商品レビュー機能は、ユーザーに「Comparison(比較)」という手段を提供し、Eコマースを一層便利なものにしたのである。 また、CNET Reviews や ExpoTV のように動画共有システムを商品レビューに応用したり、viewscore のように複数のサイトから横断的に情報を収集したりと、ユニークな技術も次々と普及している。 販売形態も従来の小売だけでなく、cafepress のようなドロップシッピング、Etsy のような CtoC ショッピング、lala のような物々交換といった新しいものが生まれ、ユーザーの参加方法はますます多様化している。 ソーシャルコマースという潮流が示すものは、「消費者の時代」の本格的な到来だ。今や、消費者はかつてないほど多くの情報をほぼノーコストで収集できるようになり、既存メディアの発信する情報と同等かそれ以上に、身近な家族や友人のアドバイス、そしてディスプレイの向こう側にひしめく不特定多数の消費者の声を信頼するようになった。 一方で、メーカーや流通業者は、商品についての消費者の率直な意見交換を避けることはできなくなり、長年かけて形成したブランドイメージよりも、商品そのものの競争力がより重要性を増してきている。この点、一連の消費行動が目に見えるようになったことで、これまでアプローチできなかったニッチなニーズを発掘することも容易になり、多様な商品に販売チャンスが生まれたことも事実だ。 Eコマースにおいてソーシャルコマースはますます存在感を増してゆくだろう。そして、SNS の認知度・活用度の高い日本においては、既存 EC サイトとのマッシュアップという形で SNS を組み込み、ソーシャルコマースサイトへと進化させる手法が今後増えてくるはずだ。今後の日本での本格的なソーシャルコマースの進展が期待される。 【当コラム執筆は、Looops Communications 代表である斉藤徹と、同社企画部長の大迫正治が担当しています】 ![]()
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