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斉藤 徹・福田 浩至(さいとう とおる・ふくだ ひろし) |
SNSコミュニティを簡単に構築できるASPサービス Looops を開発。ビジネスへの戦略活用を提案している。
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第五十九回 「Enterprise 2.0 の事例研究(2)フォークソノミーによる文書管理」
著者: 斉藤 徹・大迫 正治 プリンター用 記事を転送
▼2007年8月28日 09:00 付の記事
□国内internet.com発の記事
今回は、トップダウン型管理手法によってドキュメントを分類する手法に対して、多数のユーザー自身が自発的に分類を行う手法である「フォークソノミー」について、企業における利用を取り上げてみよう。
この「フォークソノミー」という考え方を採用している最も有名な例は、アメリカのソーシャルブックマークサービスの老舗である del.icio.us だ。del.icio.us では、ユーザーは自分の興味関心に沿って自由に Web サイトをタギング(分類)するが、これは Yahoo!などのポータルサイトが、あらゆる Web サイトをディレクトリに入れ、一方的に分類してきたことと一線を画すものとして注目された。ただし、del.icio.us は一般ユーザー向けのサービスであり、企業内利用を目的としたサービスではない。
それでは、企業内における文書管理において、フォークソノミーはどのようなメリットをもたらすのだろうか。以下ではポイントを整理して考えてみる。
1.「分類する人」=「利用する人」
Web 上にオフィスドキュメントをアップロードして管理することができる Thinkfree では、アップロード画面でファイルへのタギングを行うことができる。これにより、アップロードするユーザーはそのファイルの中身が何に関する情報であるのかについて、端的に表現することができる。タグは複数付与することができるが、これは階層型のフォルダ構造では解決できない問題に効果がある。
例えば、部署ごとにフォルダを作成している会社では、複数の部署にまたがって利用されるファイルの置き場に困ることもあるだろう。そのような場合、「営業」「経理」「売上管理」など複数のタグを付与することで、柔軟な分類管理が可能となる。このように、管理者が押し付けた分類に従うよりも、フォークソノミー的な分類のほうが、利用者の実態を忠実に反映している。
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図1 Thinkfree:ファイルへのタギング
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2. 関連するコンテンツを探しやすくなる
タグによる分類が最も活用される局面は、文書の検索である。様々なユーザーの分類を横断的に利用することで、思いがけず役に立つコンテンツを利用することができるだろう。例えば、文書に付与されたタグをクリックすることで、そのタグを持つ他の文書を閲覧することができる。また、企業向けにオンライン表計算ソフトを提供する EditGrid では、タグクラウドを提供している。これを利用することで、タグの大小によって市場のトレンドを把握したり、社員のアンテナの方向を確認したりすることができる。
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図2 EditGrid:文書へのタグによるタグクラウド
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3. 分類がリアルタイムに進化する
オンラインで文書管理・表計算・プレゼンテーション資料作成など様々なアプリケーションを提供する Zoho でも、フォークソノミーは活用されている。Zoho を利用すると、複数のユーザーが同時に一つのドキュメントを編集することができるが、下図のようにここでもタギングが可能だ。タグは常に最新のユーザー感覚に基づいて付与されているため、常にリアルタイムな分類が行われる。ユーザーはその時々の感覚に基づく利用・検索が可能だ。
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図3 Zoho:タギングボタン
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4. 権限の分散によりコストが下がる
文書の分類は、あくまで文書を利用するユーザーにとって便利なように変えてゆくことが肝要であり、必ずしも経営陣や管理者の意向とは一致しない場合も多い。フォークソノミーに基づく文書管理は、各ユーザーに分類権限を委譲することにつながるため、中央管理者の分類管理コストの低減に役立つと言える。
このようにフォークソノミーは企業内文書管理にメリットをもたらすが、うまく運用するために留意すべきポイントも当然ながら存在する。
1. タギングを促す仕組みが必要
フォークソノミーは「皆による分類」という意味の造語だが、必ずしもすべてのユーザーがタギングを実施するとは限らない。集合知を活用する上では多様性が極めて重要であり、多くのユーザーがタギングする環境を整備することが必要だ。そのためには、タギングの持つ意味をしっかりと周知し、上司が自らタギングを実施することが効果的である。また、積極的なタギングを行うユーザーには何らかのメリットをもたらすことも有用である。
2. 時には管理者がコントロール
フォークソノミーと言えども万能ではなく、時には管理者の定めた分類手法を強制することで、統一性を保つことも求められるだろう。例えば、営業に関するドキュメントに関して、「営業」「営業関連」「販売」「営業系」などの異なるタグを付与しては、意味のある分類とはならない。このような場合、事前に表記のゆれを防止するためのガイドラインを整備することが必要だ。
また、従来のピラミッド型のフォルダ構造を用いていれば、トップダウンでの方針転換が反映されやすいというメリットもある。ユーザーによるフォークソノミーと管理者によるコントロールは、併用すると効果的だ。
3. 悪意あるユーザーの管理
タギングは誰でも自由に行うことができるため、悪意あるユーザーの行動を招くことも起こりうる。このような場合に対処するためには、事前に禁止語リストを作成したり、アクセス権限・アプリケーションの利用権限を管理したりするシステムを用意することが必要となる。ただし、見知らぬユーザーばかりであるコンシューマ向けサービスとは異なり、企業内利用の場合は露骨な悪意のあるユーザーが現れる可能性は低いと言えよう。
このように、フォークソノミーはその運用方法を間違わなければ、企業内文書管理に新しい可能性をもたらすだろう。ただし管理者のコントロール範囲を逸脱することのないよう、継続的なモニタリングは必要である。
【当コラム執筆は、Looops Communications 代表である斉藤徹と、同社企画部長の大迫正治が担当しています】
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