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斉藤 徹・大迫 正治 斉藤 徹・大迫 正治(さいとう とおる・おおさこ まさはる)
SNSコミュニティを簡単に構築できるASPサービス Looops を開発。ビジネスへの戦略活用を提案している。

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 ホーム  http://looops.net

最新コラム

第六十六回 「Enterprise 2.0の事例研究(9)クラウドソーシングを利用した商品企画」

著者: 斉藤 徹・大迫 正治 プリンター用 記事を転送
2007年11月20日 09:00 付の記事
□国内internet.com発の記事

Enterprise 2.0とは、主に企業の内部において従業員の集合知をいかに活用するか、に焦点を合わせたツールから成り立つ仕組みと考えられている。しかし、オフライン以上にオンラインで商品を販売したり、消費者のフィードバックを集めてきた企業にとっては、ビジネスに活用できる集合知が、社内の従業員のみならず、社外の不特定多数の消費者からも得られるということは、暗黙に了解された事実だろう。

例えば、ユーザーの意見を大幅に取り入れながら迅速な開発を進める消費者向け Web サービスの世界では、社内の意見よりもまずユーザーの意見に耳を傾ける、という現象は珍しくない。

従来、作られた商品を受け取るだけだった消費者は、生産者との信頼関係を基礎として、商品の企画・設計や、商品購入後のサポートにまで参加するようになっている。消費者の集団(クラウド)に対して、業務プロセスの一部をアウトソーシングしていることから、このような取り組みは「クラウドソーシング(crowdsourcing)」と呼ばれている。

今回は、このクラウドソーシングの仕組みを商品企画などの業務に活用した取り組みを取り上げてみよう。

CrowdSpirit では、消費者はエレクトロニクス商品を中心に、商品の機能改善や新商品の提案、そして時に電子部品設計の提案を行うことができる。ほかの消費者は、提案に対してリスクを指摘したり、不明瞭な点についての補足をしたりして、その提案の良し悪しを投票にかける。

図1 CrowdSpirit:エレクトロニクス製品の設計


優れたアイデアにはメーカーと投資家がタイアップしてプロトタイプ(試作品)開発のチャンスが与えられ、CrowdSpirit のコミュニティでテストされた後、本格的に販売展開される。

Cambrian House は、同様に、ソフトウェアの世界でクラウドソーシングを実践している。Cambrian House には、趣味や仕事でソフトウェア開発に携わるプランナーやエンジニア、デザイナーやマーケッターが自分の専門知識を活かして参加している。彼らは、ソフトウェア開発の各工程において、好きなだけアイデアを出したり、実際の開発に携わり、その貢献度に応じてポイントを分配される。このポイントの獲得比率に応じて、ソフトウェアの売上総利益が分配されるため、より良いソフトウェアを作るインセンティブとして機能している。

図2 Cambrian House:各段階でのクラウドソーシング


前述の CrowdSpirit もそうだが、ユーザーの参加は商品企画に限定されておらず、開発やデザイン、販売にまでクラウドソーシングを利用している。また、経済的なインセンティブによってユーザーの参加を促す点は共通しており、どちらも極めて成果主義の傾向が強い。不特定多数の見知らぬユーザーに協力を仰ぐ以上、このような報酬体系が合理的だ。Cambrian House は、自社のスタッフが一定比率以上の貢献をすることで収益の分配を得ている。

また、商品企画の前提となる研究開発段階にもクラウドソーシングを利用する取り組みも生まれている。InnoCentive は、高度な専門知識を持つ学識研究者・科学者の集団を集め、企業の R&D(研究開発)における課題をコミュニティにて解決する手段を提供している。専門家は、企業が提示した報奨金と、研究内容を見比べて、最も自分が貢献できそうなプロジェクトに参加する。欧米企業がインドに R&D 拠点を築くなど、単純な業務を超えた知識労働のアウトソーシングの規模は日増しに大きくなっているが、広く在野の専門家に対してもその門戸は開かれてきている。

図3 InnoCentive:高度な R&D のクラウドソーシング


このようなクラウドソーシングによる商品企画の取り組みは、事業者サイドに次のようなメリットをもたらす。

1. 低賃金もしくは無償の協力者を募ることができる

クラウドソーシングへの参加者の多くは、非常に安い賃金か、無報酬でプロジェクトに参加している。特にソフトウェア開発の世界では、オープンソースという名でこのような取り組みが成功してきた歴史がある。低コストで高い効果を上げるためには、コミュニティの門戸の開放、多様性の確保などが重要だ。

2. 販売前にコミュニティでテストを行うことができる

クラウドソーシングのコミュニティに集まってくるユーザーは、多かれ少なかれ、そこで生まれてくる新商品に意見を持っている。大々的な商品プロモーションの前に、このような興味を持ったユーザーに試験的利用を委託することができる。もちろんこのようなコミュニティに参加しているユーザーから高い評価を得たからといって、実際に売れる商品であると一概に言うことはできない。

3. 社内に不足している専門知識を補うことができる

昨今、知的労働の質や、社内に蓄積される知識の多様性が企業の競争力の源泉となっていることは明らかであり、企業が R&D に割く投下する資本は増加している。また、スタートアップの企業などは、社内に不足している知識を外部資源によって補うことが重要だ。クラウドソーシングを利用することで、こうした知識の不足を補うことができるだろう。

今回は、クラウドソーシングという取り組みに着目し、企業が集合知を社外からも集める方法を考察した。消費者の声が企業の商品開発に与える影響は今後ますます大きくなってゆくだろう。

【当コラム執筆は、Looops Communications 代表である斉藤徹と、同社企画部長の大迫正治が担当しています】



過去コラム集
第六十五回 「Enterprise 2.0の事例研究(8)オンラインオフィスツールによる共同編集」
第六十四回 「Enterprise 2.0の事例研究(7)企業内ソーシャルブックマークによる情報共有」
第六十三回 「Enterprise 2.0の事例研究(6)手軽にカスタマイズできるオンラインアプリケーション」
第六十二回 「Enterprise 2.0の事例研究(5)Wiki によるコンテンツ コラボレーション」
第六十一回 「Enterprise 2.0の事例研究(4)タスクの共有と相互マネジメント」
第六十回 「Enterprise 2.0 の事例研究(3)ユーザー参加の仕組みを利用した市場調査」
第五十九回 「Enterprise 2.0 の事例研究(2)フォークソノミーによる文書管理」
第五十八回 「Enterprise 2.0 の事例研究(1)ビジネス人脈を共有する」
第五十七回 「コントロール&コラボレーション Enterprise 2.0の機運」
第五十六回 「SNS 構築パッケージ市場の展望〜2007年度約10億円、前年対比約200%」
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