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One to oneマーケティングの本質を探る
One to oneマーケティングの本質を探る 山川 義介(やまかわ よしすけ)メールホームrss
TDK、マルマン等3社を経て、インタースコープを設立。05年ALBERT設立。07年より関東学院大学人間環境研究所客員研究員。08年より明治大学大学院グローバル・ビジネス研究科(MBA)非常勤講師[CRM、イノベーション論]。

顧客を理解するために

前回までに、One to one の実現には、顧客と商品・情報への深い理解が必要だと述べた。今回はどのようにして顧客を理解するかという話をしたい。

『新聞・TVが消える日』という書籍が話題になったが、テレビ CM などのマス広告は、顧客は必ずしも異質だという考えに基づいているわけではない。大量生産による製品をテレビ CM でガンガン売るという右肩上がりの高度成長期は終わり、One to one マーケティングが行なわれるようになった。

『CRM の実施に関する具体的最終課題は、取引履歴として自動的に蓄積される消費者行動に関する大量データを利用して“異質”な顧客を理解し、個別対応することである※』といわれるように、CRM そのものの課題が、“異質”な顧客を理解することから始まる。では、“異質”とはどういうことであろうか。日本人は皆“同質”であると考えることは、日本人を分割しないで1つの同質、すなわち「同じ商品を発売して同じようにプロモーションをすれば同じように売れる人間である」と考えるという意味である。

同質ではないとして、日本人をマーケティング的に最も有効な切り口で2つに分けるとしたらどうすればよいだろうか。アイデアはいくつでもある。例えば、成人と未成年、関東と関西、都会人と田舎の人などであるが、分類する場合には分ける基準や理由がある程度明確である必要があり、かつ「特殊な集団とそれ以外」というような分け方にはあまり意味がない。そういう観点で考えると、やはり男女で分けるのが最も合理的だろう。

最近では男女の区切りが明確でない場合もあるようだが、ほぼ大多数は誰が見ても男性か女性かの区別がつく。これは、もちろん生物学的な違いもあるが、結果としての趣味嗜好や価値観などもやはり男性と女性は違うケースが多いのではないだろうか。ただマーケティング的には、2つに分けるだけでは不十分であり、より細かく分けなくては顧客の異質性に対応できない。

デモグラフィック属性
デモグラフィック属性
3つに分けるとしたら、子供を別区分にする方法もあるだろう。TV、広告業界では、さらに細かい8区分がよく用いられる。「F1をターゲットとした商品」などという言い方をするが、それである。こういった、「性別」と「年代」は、デモグラフィック属性などと呼ばれる最もベーシックな分類要素であり、市場調査のアウトプットも、まずは性別と年代でクロス集計を出すのがデフォルトとなっている。

顧客を理解する4つのデータの1番目が、このデモグラフィック属性とかハードな属性といわれる「人口統計的データ」である。性別、年代のほかに、居住地、職業、年収などのように比較的変化の少ないデータである。顧客を理解する上で、最も基本的なデータであり、POS データにおいてもコンビニの店員が性別年代を購入商品データとともに記録している。

2番目のデータは「心理的データ」であり、サイコグラフィック属性などともいわれる。価値観やライフスタイル、商品カテゴリー関与度など、外的な要因ではなく内的な要因で決まるデータである。同じ性別、年代、居住地、職業でも、その人の価値観やライフスタイルによって好みも違えば購入する品目やデザインなども変わるであろうという考え方である。

ここまでは、従来のマーケティング手法として盛んに活用されてきたが、3番目の行動履歴データからは特にインターネットの普及により、その活用が加速されたもので歴史的にも新しい。行動履歴データは、サイトの検索、閲覧データや購買履歴データなど現実の行動データである。いわゆる結果データといってもよいかもしれない。顧客を深く理解する上で、人口統計的データや心理的データも重要だが、この2つだけで精度の高い行動予測はできない。

先に述べた、『CRM の実施に関する具体的最終課題は、取引履歴として自動的に蓄積される消費者行動に関する大量データを利用して“異質”な顧客を理解し、個別対応することである』の中で、“自動的に蓄積される…”とあるように、自動的に大量に蓄積されるデータが取得できることによって、この行動履歴データが、現在、最も注目されかつ活用されることになっているわけである。

4番目のコミュニケーションデータは、CGM の普及などによって無視できなくなっている主にテキストデータだ。どんなワードで検索をしたのか、どんな質問をし、どんな感想を持ったか、どんな問い合わせやクレームをしたかなどの顧客と企業のコミュニケーションデータを分析することで、より深い理解ができる。購買データからは、買ったことはわかるが、満足したのかどうか、満足したとしてもどこに満足したかまではわからない。

顧客への深い理解には、これらの4つのデータについて理解する必要があるが、実はそれ以上に重要なことは、自動的に大量に蓄積されるデータをデータから情報に昇華させる『分析力』があるかないかである。データは大量にあるのだが、どう活用してよいかわからないという企業が非常に多い。分析力についてはいずれ触れるが、その前に次回はもう1つ理解しなくてはならない「商品の理解」について述べる。

※参考文献
照井:CRM 特集号にあたって;マーケティングサイエンス,Vol.16,No.1・2

様々な顧客
様々な顧客


(執筆:株式会社ALBERT 代表取締役会長 山川義介)

記事提供:株式会社ALBERT

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