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オープンソースコミュニティのバーンアウトを考える(1/2)オープンソースコミュニティに属していれば、いずれはバーンアウトを目の当たりにすることになる。仕事を引き受けすぎ、ある日突然いくら働いても成果が出せなくなってしまう同僚の姿を。
バーンアウトすると、仕事に集中できなくなる。私生活をかえりみる余裕がなくなる。他人から批判されると、必要以上に防衛的で攻撃的になる。そしてそのうちプロジェクトからは姿を消し、場合によってはそのまま帰ってこない。 もちろん、バーンアウトの発症は オープンソースコミュニティに限られた特別なものではない。だが、コミュニティ内では、時にそれは伝染病のように爆発的な広がりを見せることがある。なのに、誰もそのことを公には話したがらない。 Ubuntu コミュニティマネージャーの Jono Bacon 氏と Ubuntu ボランティアでジャーナリストの Amber Graner 氏は、Herbert Freudenberger 氏と Gail North 氏が2006年に発表したバーンアウトの12段階について語りあっているときに、バーンアウト経験者は自らの体験をかなり時が経ってからやっと語り始めることに気づいたという。 また、カーネルハッカーで Ada Initiative 共同創設者の Valerie Aurora 氏は、多くの女性技術者と語り合い、コミュニティ内の女性の多くが過去にバーンアウトの経験があることを知った。 バーンアウトからは誰も逃れることはできない。それは、Linux Torvalds であってもそうだった。Torvalds 氏は「私は、バーンアウトしたことがない」と語り始めたまさにそのとき、過去に自分がバーンアウトの初期症状としか思えない経験をしていたことを思い出して語ってくれた。 「2002年ごろだったと思う。われわれは本当に厳しい戦いに直面していた。パッチが床の上の右にも左にもおかれ、物事は全く機能しなくなっていた。誰もが苦しい日々を送っていて、それは私にとってもそうだった。批判されるのが好きなやつはいない。だが、あちこちで批判の火の手があがり、我々を取り囲んでいった。そのときの問題は、厳密には技術的な問題ではなかったので、あるパッチを指さして『おい、見ろよ。このパッチを使えばタイミングが15%も向上するぜ』みたいなことは起こってくれなかった。技術的には解決策は無かった。解決策は、ましなツールと、ディストリビューション管理を正すワークフローにあった」 オープンソースコミュニティでバーンアウトを引き起こしている原因は何なのか。それを、個人レベルまたはコミュニティレベルで防ぐ手立てはないものか。これらは、バーンアウトが解決課題としてあがって以来ずっとコミュニティが答えを見出そうともがいている問題だ。 バーンアウトの原因はオープンソースコミュニティは、メンバーをストレスの多い環境で働かせがちだ。Bacon 氏が指摘するように、開発者は世界中に散らばっていて、中にはボランティアも含まれている。彼らは各自の作業レベルを自分で管理しなければならない。 さらに、世界のどこかで誰かがあるプロジェクトに参加した場合、労働時間を管理するのが非常に難しい。リアルタイムシミュレーションゲームをやめられないのと同じように、仕事をどこで切り上げるのかが決められない。インターネットの持つ即時性のため、あるものはメールや IM による問い合わせに忙殺され、また別のものは担当者からの返事がないと不平をもらすことになる。 コミュニティメンバーの第一世代の多くがすでに中高年にさしかかっているというのも、ストレスを増加させている原因かもしれない。彼らは、年齢によるスタミナの減少、家族への義務などから、もはや以前と同じようには働くことができなくなっている。 Graner 氏はまた、コミュニティメンバーが自分ができる以上の仕事を引き受けがちで、これがさらなるストレスを生んでいると指摘している。たとえば、Ubuntu の開発担当以外のメンバーは、自分が開発者と比べてプロジェクトに貢献してないのではと感じている。このため、自分に支払われる金額に見合った働きをしようと余計な責任を背負い込んでしまいがちだという。 「そういったメンバーは、自分たちがもっともっと仕事をしてスーパーマンであり続けなければ、他のメンバーから認められないと感じている」 これに対し、Torvalds 氏はストレスにはプラスの面もあると指摘する。 「自分は追い詰められて興奮状態で仕事をすることが多いし、火祭りのような状況は嫌いではない。もちろん、ストレスも多いが同時に気持ちも高まる。私は、時にそのような状況が発生しないプロジェクトは、死んでしまうか、不十分なものになると考えている」 一方で、Torvalds 氏はこうも語っている 「だが、常にストレスの中にあるのは、単に消耗するだけだ。私にとっては、ワークフローは常に頭から離れない大問題で、どう対処してもこれ以上はうまく機能してくれないようだ。そのストレスは、私から力を奪い、やらなければならないことに手をつけられなくなるほどだ」 Bacon 氏のバーンアウトに対する見解も Torvalds 氏と同様なものだ。氏は、バーンアウトを「前日からのストレスがたまり、積み重なって取り除けなくなっている状態」と定義する。 対照的に、前 Fedora 議長でプロジェクトリーダーの Paul Frields 氏はバーンアウトをグループ内の相互関係から発生していると見ている。 「期待と結果にミスマッチがあったとき。たとえば、この人ではなくて他の人なら同じレベルの結果をもっと短期間に出せるのになど、個々人の置かれた環境を考えずに期待しているようなとき。または、あなたの思いついた大胆な新しいアイディアをすぐにみんなが理解して気に入ってくれるだろうと期待しているようなとき。こんなミスマッチが起こっているときに、なんとかしようと必死になって働くとバーンアウトする可能性が高まる」 また、女性がコミュニティ内で低く見られていることに起因するバーンアウトも多いようだ。プロジェクトにもよるが、女性は通常コミュニティメンバーのうちの1〜5%を占めているにすぎない。女性は、女性差別的な発言に耐えねばならないし、性的なジョークや意味のない反感にも耐えなければない。男性が大多数を占めている中で女性の地位を確立し、自分たちの能力を証明しなくてはいけないという気持ちもストレスとなる。 湾岸戦争の退役軍人である Graner 氏 はこの件について次のように語っている。 「マイノリティーでいることと同じようなものだ。まわりに、あいつは自分と同じくらいできると認めてもらうには、実際には10%程度余計に働かなければならない」
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