趣味が高じて“裏原ではたらく社長”に――、人気サイト「裏原.jp」ファッション雑誌で見つけた小物、街で誰かが着ていた服、いざネットで詳細な情報を探そうとしても見つからない――こんな経験はないだろうか。Web で検索しづらいものの筆頭がファッション情報だ。
■ 若者に人気、ファッションポータル「裏原.jp」 そんな中、表参道と明治通りに囲まれた原宿の路地裏、特に若者に人気のブランドがひしめく通称「裏原」で、その地域一帯のブランド情報を発信するサイト「裏原.jp」が人気だ。オフィシャルサイトを持たない店舗の情報や、ブランドの最新動向を整理して Web で発信する、いわば裏原のポータルサイトである。
オープンは2002年12月。現在は株式会社ニューエイジの代表取締役社長を務める金子洋平氏が個人で立ち上げた。 「企業はホームページを持っているのが当たり前になってますが、ファッションに限ってはまだまだ遅れています。特に裏原の場合、お店を探し出す面白さや、逆に露出しないことがかっこいい、知る人ぞ知るという良さもあって、オフィシャルのホームページを持っていないブランドさんもまだ多いです。最近の新しいお店は真っ先にサイトを開設するようですけど、やはり古くからあるところはまだ実際に調べる手段がユーザーにはないですね」。 インターネットとファッションが趣味だった金子氏は、学生時代はもちろん、社会人になりスーツを着て営業を回るようになっても週末ごとに裏原に通いつめた。その一方、新卒で入社した GMO では、ドメインやレンタルサーバーやホームページ制作、ネット広告などを法人に対して売り込んだ。大学は工学部の出身だったが、営業を通してインターネットビジネスの仕組み、ホームページの運営ノウハウを学んだ。そんなときに汎用.jp ドメインの登録が始まり、即「urahara.jp」を取得。個人サイトとして裏原.jp を開設した。 「もし希望するドメインが取れなかったら今の自分はないかも」と語るほど、金子氏はドメインにこだわりを持つ。「海外から見て、アキバ系の秋葉原はアニメなどで有名ですが、ファッションならやはり原宿。日本で若者が作り出す文化としてはアキバと原宿が代表です。そうすると.com や.net よりも実は.jp の方がいいでしょう?」 2004年3月には、2年間勤めた会社を辞めた。裏原.jp を運営するうちに、サイトからのアフィリエイト収入が月収を超えてしまったからだ。「当時は月に50万円を超えていました。スーパーアフィリエイターですね(笑)」と金子氏。もっと大きいことを事業としてやってみたいという気持ちもあり、貯金をして300万円で有限会社を立ち上げ、次の年には株式会社ニューエイジを設立。趣味が高じてついに“裏原宿ではたらく社長”となった。 サイト運営には GMO 時代のソリューション営業経験が活かされており、SEO 対策も抜かりない。裏原.jp は、“裏原”というキーワードで Yahoo!、Google ともに一位だ。「営業時代に SEO の提案もしていました。そこで SEO 会社さんとけっこう密に打ち合わせをする機会もあって」。企業間の取引を持ってきて独立したわけではなく、業務の中で蓄積したノウハウを活用する。 同サイトの訪問者は、裏原ファッションに憧れる10代前半から、実際に購入する20歳前後の大学生、そして社会人なりたてくらいの25,6歳の世代がメイン。10代、20代で95%を占めるという。 収益の柱はファッション小物のネット通販と、裏原.jp のようなネットメディアの広告収入。売り上げ比率としては通販の方が大きく、裏原.jp は自社メディアとして集客に貢献する。現在のところ月間 PV は80万前後で、主に「裏原」、「原宿」、「裏原宿」、そして各ブランド名などのキーワードから訪問される。訪問者は意外なことに関東在住の人が多く、サイト内の通販も圧倒的に関東圏のユーザーが利用しているという。 裏原.jpには実際に各ショップのプレスから情報を吸い上げて、それを記事として掲載している。ショップ側からの掲載依頼もあるという。人気ショップには自らプッシュして情報をもらう。 運営会社であるニューエイジの社員は全員同い年の4名。「僕らが10代の頃はファッションの情報を知るには雑誌しかなかったんです。雑誌の切り抜きを持ち歩いてお店を探すのが当たり前。ファッション誌でも住所や電話番号はあえて載せないお店もありました」と金子氏は振り返る。
「girlswalker.com」や「ZOZOTOWN」、「magaseek」などは EC サイトの成功事例だろう。今冬に正式オープンする「WWCITY&Communication」も楽しみな存在だ。一方、ニューエイジはファッションに特化したネットメディアを創出するのが目標だ。「インターネットを見てみるとファッションメディアとして大きく成功されているところはまだないです。その中で裏原という切り口でやっていきたい」と金子氏は語る。 ■ ネット通販か、リアル店舗か ファッションとネットの融合には課題もある。「ネットではロングテールというキーワードが盛んに言われていますが、ファッション業界、特に裏原はあれとは真逆の発想なんです」と金子氏。そこがおもしろいところでもあるという。 ネット上からいつでもどこでもすぐに商品を買えるという状況は痛し痒しである。ショップは会社として組織になっている分、基本的に商品を売らなければならないが、一方でブランドも大切に育てなければいけない。その狭間に立っている。ユーザー側も便利に買いたいが、どこでも簡単に買えてしまったらそれはそれで…という感情もなくはない。売れ過ぎているものは敬遠する――そういう商材である。 「WWCITY&Communication」を運営する株式会社 WW by Samantha Thavasa 代表取締役社長の寺田和正氏は以前、ネットの利便性とブランドの価値は相反するものであると述べた。これまでリアル店舗がネットに進出してこなかった背景として、ネットの便利さが逆に障壁となっていたことも見逃せない。 そのため WWCITY は、検索してぽんと商品を出すのではなく、サイトの中を歩きながら、商品を探す楽しみを盛り込んだ。従来の EC サイトのように商品が羅列されるのを避けた。リアルに近いインターフェイスをネットに持ち込んでブランドらしさを演出するか、ユーザーが買いやすいインターフェイスを追求するか、そのバランスを取ろうとする試みだ。 ニューエイジでは EC サイトの充実に加えて、事務所を構える裏原という地域を盛り上げたいという。「せっかくお店があるので遊びに来てほしいです。インターネットや携帯電話でショップの地図や情報が見れて、便利に買い物ができれば、もっと気軽に原宿に買い物に行こうと思うかもしれない。ネットが流行ったから原宿が廃れたって言われないよう、逆にそのネットを使って街に新しい価値をプラスしたい。全部家で終わってたら面白くないですよ」(金子氏) 関連記事 最新トップニュース
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