ハートビート:「19年前」に起きたこと【上】【日経平均は19年ぶりの安値更新】 9月4日のザラ場中に日経平均は9000円の大台を割り込んだ。1983年8月以来、実に19年ぶりの水準に下落したことになる。一口に「19年ぶりの安値」と言うが、19年前(ほぼふた昔前)の8月がどのような相場だったのかを記憶している投資家は少なくなった。当時の東京市場は国際優良株の相場であった。当時の世界経済が抱えていた問題は、1980年代初頭のアメリカ経済が大きな停滞期に直面していたことだった。それはインフレの高進、高い失業率、生産性の低下などに現れていた。ここに1981年に登場したレーガン大統領によって、供給面(サプライサイド)の経済政策を重視する、いわゆる「レーガノミクス」による大胆な経済改革が断行された。 【「レーガノミクス」が登場】 レーガン政権の採った「レーガノミクス」のおもな政策は以下のものである。(1)金利引き上げ (2)企業と高額所得者に対する所得税の減税 (3)文教・福祉に関する財政支出の抑制 (4)軍事支出の大幅な引き上げ 「レーガノミクス」の主眼は、(1)減税や規制緩和を通じて、貯蓄と投資に対するインセンティブを高め、供給の増加と歳出の削減を図る、(2)金融を引き締めてインフレを抑制する、(3)減税と歳出の削減を同時に実施して、経済成長と財政赤字の削減を同時に実現する、という考えに基づいている。 この1981年税制改革(=経済再建租税法)では、所得税の減税も行われたが、それ以上に企業に対して、(1)加速償却の導入、(2)投資税額控除の拡大(設備投資額の10%)など、法人税の減税が主眼となった。企業に対する税制改革は、典型的な「利益誘導型」政策であったため、政治力が強い従来型産業(製造業、石油などの資本集約産業)が税制優遇措置の恩恵を受けたといわれる。 【米国の財政赤字が急激に拡大】 財政支出の削減は文教・福祉部門だけであり、逆に軍事支出は増大させた。それに対して所得税と法人税を減税しているために、減税によって税収増を図るという考え方が誤りであったことはすぐに明らかになり、米国全体としての支出は減らず、むしろ急激な財政赤字の拡大に直面した。財政赤字が拡大する一方の米国は、国債を大量に発行するようになり、これを日本を中心とする海外資本が引き受ける構図となって、世界中にドルがばらまかれる。1ドル=270円までのドル高・円安が引き起こされ、時を置かずにドル高による貿易収支の悪化が招来された。さらに軍事費の拡大の影響も大きい。技術が軍事部門に集中したために米国の産業界に競争力の低下が顕著になり、これも貿易に不利に働いて、貿易赤字を拡大させる原因となった。 【確かに米国経済は急激に回復した】 しかしレーガノミクスによって米国経済は急速に浮上した。70年代を通じたインフレと金利上昇は収まり、「株式の死」と形容された米国株式市場は1982年10月に、足かけ17年間にわたる500−1000ドル(NYダウ)の大ボックス相場からついに上放れた。米国の景気循環日付では、この時期の「景気の谷」は1982年11月、「景気の山」は1990年7月である。80年代を通じた米国の長期景気拡大は82年末に形作られた。ほとんど浪費的とも言える「米国」という巨大な消費国の出現、1ドル=270円の円安・ドル高の双方が相まって、日本の株式市場も第2次オイルショックのダメージから立ち直った。物色の中心はもちろん輸出関連株=国際優良株である。1982年10月、日経平均は6849円78銭のボトムを記録して、その後に訪れた黄金の80年代相場に突入していった。
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