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2008年9月6日
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Webファイナンス2003年9月5日 00:00

機会コスト

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インターネットの発展とオンライン証券の登場によって、日本の個人投資家を取り巻く株式市場環境に劇的な好転があったのはこの数年のお話です。確かにそれ以前と比較すれば相当な進歩です。しかしそれは、ジャングルで迷ってしまった人が救出されて「いやー、文明生活は素晴らしいね」と語るようなもので、アメリカ市場と比べると個人投資家にとっての日本の投資環境はまだまだです。

確かに手数料の部分ではオンライン証券各社の努力によって世界的にも非常に安い手数料体系が実現されています。しかし収益に最も影響を与える投資環境はどうでしょうか。アメリカのナスダック市場では市場の取引状況がすべて個人投資家にも公開されています。一方で日本の市場ではすべての板が見れるわけではありませんし、寄り前や引けの成り行き状況が見れるわけでもありません。情報は制限されています。

また、米国では一度取引をクローズすればその資金を使って即座に取引できる差金決済が認められている一方で、日本では信用、現物取引の双方において規制がかけられ、現状では現物取引の一部で差金決済が認められている程度になっています。一見たいしたことのない制限や規制に見えますが、これは個人投資家にとっての莫大な期待損失につながっています。

具体例を見てみましょう。引けの成り行き状況が大幅な買い越しとなっていたとします。数分待てば今よりもずっといい値段で売れる可能性を知ることが出来たらどうでしょうか。また逆に引け値で売ろうと思っていたのに、大口の引けの成り行き注文があったらどうでしょうか、特に最近は引けの値段が大きく振れますので、引けの状況を知っているのとそうでないのとは仕切り注文が天地の出来となることがあります。このことは寄り前の成り行き状況でも同じです。

一旦買ってはみたもののどうも思ったようには上昇しない、ここは一旦退場して様子を見て再度入りなおそう、といった場面ではどうでしょうか。こうすると一旦出たらその銘柄にはもうその日は入り直せなくなってしまい、乗るかソルかで、含み損を放置し明日に賭けるか、あるいは明日の寄り付きの急騰を指を加えて見るかになります。ロスカットの遅れは致命的になるケースが多いのですが、これでは機動的なロスカットを阻害する変な力が働いてしまいます。

こうした見えにくい売買コストはとても重要で、売買手数料コストの10倍以上にものぼるとの試算があります。これは「機会コスト」と呼ばれ、これが各売買ごとに生じているのが今の個人投資家を取り巻く投資環境です。一方で、空売り規制を除いて、証券自己などは自由な環境にあり情報も制限されません。「個人投資家に短期売買を促す差金決済や成り行き状況が必要か?」という道徳観の押し付けではなく、自由市場の「フェアネス」という観点からぜひ議論が必要な部分です。

手数料も安くなって一見すばらしい時代の到来にも見えますが、それは過去の氷河期と比べてのお話です。現在でも機関投資家と一般投資家とでは依然大きな投資環境の違いがあって、個人投資家はここで大きくボラれやすくなっています。制度から生まれる膨大な、目に見えない「機会コスト」が個人投資家に重く圧し掛かっている状況の一刻も早い改善が望まれます。(記事執筆:桜井信一郎)

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