日銀調査統計局の仕事−なぜ今ノーコメントなのかいよいよ物価が上がり始めた。
先ごろ日銀から発表された6月度の企業物価指数はついに前年比1.4%の上昇となり、少なくとも財の世界ではデフレが収束したことを証明した。さらに、内訳を見てみると、海外での価格上昇が継続的に諸物価を押し上げてきたと見え、驚いたことに現地通過ベースの輸入物価はなんと前年比で2桁を超え、11.7%増となった。 これを需要段階別に分析すると、電気・自動車・精密機器といった、技術進歩による単価の下落を一部トレンド的に招いている耐久消費財と資本財が足を引っ張っているため、最終消費財の段階ではまだ低迷しているものの、素原材料や中間財と言った川上・川中の段階では、すでに物価は騰勢を強めていると言ってよい。 この川上・川中までのところが指数全体の58%を占め、それらが前年比で5.3%増、2.6%増となったため、全体でも1.4%増となったというわけである。 こうなると日銀調査統計局の出番である。 通貨の番人を自称する日銀の中で、常に中枢を担ってきた調査統計局は、経済分析のプロ中のプロであり、短観をはじめ伝統に裏打ちされた数々のデータをもって金融政策のための重要な提言をこれまでも幾度となく打ち出してきた。 特にこの企業物価指数は彼らにとって最も自信のあるデータであり、これまでもこの数字がプラスに浮上し、中間財が先行的に上昇スピードを速めてきたところで金融政策が引き締めに転換したケースは多い。 ところが今回は、この日本で最も実体経済の動向に詳しいはずの調査統計局が、口を閉ざしたまま何も語ろうとしない。物価情勢だけでなく景気判断の全てにノーコメントである。 それもそのはずで調査統計局は遡ること4年前、2000年8月に、今と同じように中間財の上昇が鮮明になってきたところで物価について警戒的な見通しを出し、それを受けてゼロ金利政策が解除されると言う失策を犯した前科があるからだ。 この時はその6か月後に見通しが間違いであったとして再びゼロ金利政策に戻ることになるのだが、以来、調査統計局は否が応にも慎重にならざるを得なくなったのである。 しかし本質的な間違いはこの時の短期的な見通しではない。彼らが想定する動きを日本経済がしなくなったことが最大の問題であり、そうした状況が続く限り、膨大な経済データも分析も経験も何も役に立たなくなってしまう。ではなぜ日本経済は日銀調査統計局の想定通りに動かなくなってしまったのか。 それは不良債権処理問題のせいである。これだけ金融緩和を続けても、わずか1.8%しか伸びないマネーサプライから見ても一目瞭然の通り、実体経済が回復しても信用創造が起きないのだ。信用創造が起きなければ幅広い景気回復にはならない。 天下の回り物であるはずのお金が、なかなか自分のところに回ってこない、と言う事態が起きているのだ。 思えば不良債権処理問題が初めて明るみに出た時、誰もこれほどまでの規模でこんなにも長期間この国を苦しめることになろうとは思っていなかった。だから日銀もこの問題をミクロの問題として扱い、マクロ的な問題として分析しなかった。その結果、金融緩和が遅れたし、2000年8月にはあろうことか金利を引き上げてしまったのである。 銀行が毎年何十兆円も貸し出しを回収し続ければ、それはもう立派なマクロ経済問題である。 だから調査統計局は、今は黙ってデータを集めるしかない。しかしマネーサプライが増えてくれば、様子はがらりと変わる。銀行の経営が統合され、不良債権の処理が進み、ペイオフが解禁された後、恐らく金融市場は劇的な変化を起こすだろう。その日を信じて、今はじっと耐えて待つしかないのだ。 (記事執筆:岡崎良介) 本情報は、投資判断の参考情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的にしたものではありません。銘柄の売買判断は必ず自己責任において行ってください。 関連記事 関連テーマ 最新トップニュース
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