職場からカジュアル服が消える?ナレッジ産業では、カジュアルな服装は珍しいものではない。1950〜1960年代、プログラマーやコンピューター産業に従事する者は、大学教授のような服装をしている者が多かった。ツイードジャケットにツイードのネクタイ、ニットのプルオーバーに茶系の靴が一般的な男性のスタイルで、当時少数派だった女性はいわゆる文学少女スタイルの者が多かった。
1960年代後半、IBM が営業部員に青いスーツを着用させるようになり、これが『ビッグ・ブルー』の異名をとった。 この背景には、コンピューターの営業マンのいでたちを銀行員に似せることで、銀行員が商品を買うようになるだろうという戦略があったのだが、果たしてこれは成功した。これは、フォーマル衣装が多国籍の大手コンピューターメーカーの従業員の服装として当たり前になる、ずっと以前のことだった。 だが、1970年代にサファリスーツが台頭するまでは、上記は一般的というわけではなかった。私が IT 企業に勤め始めた当時の若手役員の服装は、テレビドラマの 『マイアミ・バイス』 を真似たもので、無精ひげに白の Tシャツ、しわつきの緑のシルクスーツは、冬のロンドンでも当たり前のスタイルだった。 1980年代は、欲望とウォール街の時代だった。80年代後半には、IBM のビジネスルックが IT 業界を支配していた。10年前には非常に簡単だった男性従業員の服装は、ダークカラーのスーツ、明るい色のワイシャツ、細目のネクタイといったきちんとした服装に編み上げのレザーシューズというスタイルに変化した。 IBM の影響やコンサバブームだけでなく、ナレッジワーカーにフォーマルな服装が求められた理由には、産業を問わず IT 関連職がバックオフィスからオペレーション部門へと異動してきたという事実があった。そこで働く者は他の従業員と同様の服装が求められ、それが顧客相手の部門だとなおさらであった。 現代であれば、ルールが分かりやすい男性の服装に注目する方が簡単だが、当時は女性の方が簡単だった。色やスタイルについては女性の服装の方が多かったものの、全体のトーンは厳しく制限されていたのだ。更に、女性のナレッジワーカーの場合は気にするべきことが多く、その問題は今でも続いている。女性が職場で対等に扱われるためには、服装はやぼったすぎず、かといって魅惑的になり過ぎないよう微細な判断が要求される。 だが、これがラフな服装となると話は簡単だ。女性は、ドレスアップする時、他人の基準に合わなければならないと考える者が多いが、他人が考えることを考えるのは難しい。これがカジュアルな服装であれば、楽なスタイルを選ぶことができる。もちろんこれは男性も同じだが、女性の場合、端目には男性より自由だと誤解されていることが多いため、このメリットについてはあまり語られることがない。 オーストラリアやニュージーランドは、カジュアルな仕事服では常に先端を行っている。私がニュージーランドの新聞社で迎えた最初の夏、サブエディター達がロックンロールの Tシャツにジャンダル姿で出勤して来た時などは、少々面食らったものだ。また、ロンドンの大手パブリッシング会社で働いていた時は、制作スタッフがドイツ赤軍派のTシャツ姿やボンデージパンツ姿で社内を歩き回っていた。 そういう意味では、米国は遅れている。ドットコムブームが到来して初めて、銀行員や金融関連企業の社員がスーツやネクタイを外すことが許された。それは主に、もっとカジュアルな服装を許す他の会社に、主要な人材を取られないようにとの理由からだった。 ニューヨークやシカゴでは今夏初め、カジュアルな服装をなくすかどうかについての議論がなされた。個人的には、スーツが消える恐怖におののいた洋服屋や服飾ベンダー達が、この話題を持ち出したのではないかと思っている。冬が近づくにつれ、服装規定も厳しくなってくるかもしれないが、しかし、今のニューヨークはそれどころではないだろう。 関連テーマ 最新トップニュース
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