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LinuxToday2005年6月24日 09:00

商用 Linux ディストリの重要性は低下している?

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筆者は長年、 市場で主流になれるのは提供物全体(製品、サポート、トレーニング、再販チャネル、etc.)が優れた商用 Linux ディストリビューションだけだと考えてきた。

もちろん、これが筆者だけの意見ではないことは、 Red Hat の新規公募成功を見れば分かる。 投資家が、 力のある会社なら Linux 分野で価値を生み出せると確信したことは明らかだ。 商用 Linux は確かにその価値を生み出してきた。

世間一般の認識は次のようなことになる。

技術市場では当初、望み通りのものを手に入れるため、ユーザーが積極的に手を加えた。

これらの「初期導入者」は、 完成度の高い完璧な製品を期待していない。 彼らは最先端の技術を望み、ヒーローになり、競争力を手に入れるため、 自分たちのシナリオにこれを当てはめるための方法を常に模索し、目を光らせている。

彼らは、 どうすればこの新技術が将来的に IT の主流になるのかを予測する性癖と想像力を持ち合わせている。 初期導入者は新技術の優れた伝道師であり、 Linux のような動きを早いタイミングで味方に付けることは、 非常に大きな差を生み出す。 Linux の波が生まれたときは、 忠実なユーザーコミュニティを作り出すことが、 商用/非商用を問わずディストリビューションにとって最も重要なことだった。

唯一の問題は、利益を考えると初期導入者はあまり長続きする市場でない点だ。 最先端だが不完全な製品に対し、彼らはフィードバック、バグ修正、 そして推薦といった見返りを提供してくれる。 だが、彼らはお金を出してくれない。

筆者の地元にある LUG のメーリングリストへの最近の書き込みが、 そのことを筆者に思い出させてくれた。

問題の投稿者は、 Mandrake Linux の長年の支持者で、 同グループに対し、再三にわたって Mandrake を勧めていた。 そのため、彼が同社の有料会員を探してメーリングリストに問い合わせてきたときは、 筆者は驚きを隠せなかった。

彼は InstallFest のコピーを配布したいと考えていたが、 まさに彼のような初期導入者のために用意された会員プログラムに対し、 まったく会費を払おうとしないのだ。 彼は、自分以外も払う必要はないと考えていたようだ。

市場で利益を得るためには、主流ユーザー層を獲得する必要がある。 Geoffrey Moore の著書を読んだ方ならお分かりだろうが、 もちろん筆者が考えついた理論ではない (まだお読みでなければ、Moore の「Inside the Tornado」をご一読されたい。 今後有望な技術市場に関する驚くべき分析が行われている)。

技術の主流ユーザーは、 真っ先に飛びつく初期導入者たちとは異なるニーズを持っている。 目的が異なるのだ。 初期導入者と異なり、 主流ユーザーは最先端の機能は余りにもリスクが大きいとして避ける。 彼らが望むのは、 自分たちの標準的な要件に合致した形で特定の目的を満たす、 堅牢かつ安定した技術なのだ。

Moore は、初期導入者の要件を満たす段階から、 主流の要件を満たす段階までの動きを、 「溝を埋める(crossing the chasm)」と表現している (これは別の著書の題名にもなっている)。

これは容易なことではなく、 この段階では成功するより失敗に終わる技術企業のほうが多いだろう。 主流市場が完成度の高い製品(「ホールプロダクト」とも呼ばれる)を必要としていることを認識するのが、ここでの秘訣だ。

通常、これは移行を進める主流ユーザー層に安心感を与えるものすべてを指す。 まず最初にサポートがあり、次にトレーニングの有無、 市場における関連スキルの受け止められ方、 周辺製品のサードパーティ市場、 そしてこの関係に関して責任を引き受けるものの存在がある。

世間一般では、顧客に「ホールプロダクト」を提供し、 本格的で幅広い普及を実現できるのは商用 Linux ディストリビューションだけである、との認識が強い(筆者もそのように主張している)。

しかし、ここに来て筆者は確証が持てなくなっている。

Evans Data Corporation が先日実施し、公表した調査では、 デベロッパーが非商用バージョンの Linux のほうを好むという結果が初めて出た。

この調査では、Linux カーネルや、 Linux 用アプリケーションのデベロッパーが調査対象になった。 もしデベロッパーが非商用のディストリビューションのほうを好むようになったのであれば、 将来的にはアプリケーションの数が増え、 これらのバージョンとの互換性も向上することが予想される。

では、導入の現状はどうなっているだろうか?  Jupiter Research が2年前に SMB 市場におけるオープンソースの利用に関する調査を行ったときは、 Fortune 500 にランクインする企業のほうが採用が早いという結果が出た。

しかし現在は、 この分野におけるオープンソースの採用は鈍化しているとの認識だ。 このような認識は、 非商用インストレーションのトラッキングに問題があるためなのだろうか?  中小企業は商用バージョンに依存しながら非商用 Linux のほうを選ぶ、 という事例証拠は多い。

従業員50人を抱えるアーカンソー州の Consolidated Information Systems は、 Windows サーバーから Linux への移行を5年前から進めている。 これまでのところ、ファイル、Web、電子メール、 そしてプロキシサーバーの移行を完了している。

IT のトップである Nick Shaver 氏は、 非商用ディストリビューションの Debian に最終的に落ち着くまで、 2種類の商用ディストリビューションを試している。

「Debian に落ち着いたが、これで大成功だった」(Shaver 氏)

Shaver 氏が非商用ディストリビューションを選択するにあたって重要な要因となったのは、 どのベンダーにも依存しないという点だった。 「新製品に追加される機能には、 利益を出さなくてはならないという企業の意向も絡んでいると感じた。 しかし、Debian なら改善のない新バージョンは出ない。 アップグレードは大変な作業であり、 ベンダー主導でインプリメントするようなことはしたくなかった」

Linux のコンサルティングを行うノースカロライナ州ローリーの Cerient Technologies は、 顧客である中小企業に対し、 主に非商用 Linux のソリューションを提供している。 インストレーションの半数以上は Mandriva Linux (旧 Mandrake)の無償バージョンとなっている。 この非商用バージョンが、ファイルサーバー、Web サーバー、メールサーバー、 そして一部ではデスクトップとしても利用されている。

Cerient の社長 Jason Tower 氏によると、 「有償バージョンを使うだけの魅力は見あたらない。 無償バージョンは安定しており、必要なパッケージもそろっていて、これで事足りる。 商用バージョンのほうが技術的にメリットがあるといったケースは、 目にしたことがない」という。

Tower 氏が商用バージョン唯一のメリットだとするのが「苦情の言える窓口」だが、 同氏はそこが過大評価されていることを認める。

「顧客やサードパーティ製アプリケーションに応じてディストリビューションが決まることもあるが、そうでなければ非商用バージョンを勧める」(Tower 氏)

IT/管理者教育会社の Global Knowledge は、 Red Hat と一緒に Debian の導入を徐々に進めてきた。 彼らは約3年前、Red Hat Linux に大半のインフラを移行する作業を完了しており、 システムは今も実際の業務で活躍している。 同社は先日、新しいデータセンターの増築を開始した。

新しい増築作業で重要なのは、 LDAP と Kerberos を使ったシングルサインオンシステムへの移行だった。 新しいサービスはオープンソースで構築され、 Debian 上で動作している。 プラットフォーム開発マネージャの Ryan Leathers 氏によると、 Debian の採用は、コスト上の判断ではなく、 アプリケーションのアップデートを考慮した上での判断だったという。

「Red Hat でインストールしたパッケージが予想通りに動作するのは分かるが、 アプリケーションのアップグレードがあまり行われないのも確かだ。 その一例が OpenLDAP だ。

Debian では、アップデートがもっと早く、頻繁に提供される。 確かに Red Hat の RPM を入手することもできるが、こ れは自動化もテストもされていない。 Debian なら、すべてがそのまま動くとの確信が強い」(Leathers 氏)

Leathers 氏は、 Oracle など一部のサードパーティ製アプリケーションでは Red Hat を採用する見通しだが、 今は Debian のほうが気に入っているという。

Web の負荷テストとストレステストのソフトウェアを開発する Web Performance は、 Red Hat から CentOS(Red Hat ベースの非商用バージョン)に移行した。 同社は、Linux が動作するサーバーが複数設置されたテストラボを運営している。

製品マネージャの Michael Czeiszperger 氏は、 テストラボのハードウェアに大々的なアップグレードの時期が来て移行を決断した。 Red Hat のコストが前回の導入時よりも上がっていたため、 これがきっかけとなってほかの選択肢の調査が始まった。

「Red Hat にコストをかける代わりに地元のコンサルタントにコストをかけ、 パーソナライズされたサービスを提供してもらった。 CentOS は非常に堅牢で、アップデートも無料で行われる。 まさに、われわれが必要としていたものだった」(Czeiszperger 氏)

Czeiszperger 氏は、自分たちがごく普通の経験を持っていると考えている。 社内でもある程度 Linux の経験があったため、 非商用バージョンの導入や、 最初の設定を地元の Linux コンサルタントにまかせることに抵抗はなかった。

規模や知名度で勝る組織も、非商用ディストリビューションを採用し、 注目を集めるようになっている。

デューク大学は、 Sun 製ハードウェアからの切り替えを進める作業の一貫として CentOS を選択した。 また、常に Linux 関連のニュースでにぎわったミュンヘン市も Debian に落ち着いた。 Ubuntu(さらに新しい非商用バージョンの Linux)も、 今では HP のラップトップに付属して欧州で販売されている。 HP は申し込みがあると、 一部のラップトップ向けに同ディストリビューションの特別バージョンを CD で配布している。

定評のある(商用)デスクトップバージョンが多数あるなかで、 非商用 Linux は HP などの主要ベンダーの注目をどのようにして集めたのだろうか? そして、このことは将来に向けてどのような意味があるのだろうか? 

Evans Data Corporation の調査や、事例証拠があるにもかかわらず、 筆者は世間一般の認識に対して疑問を持ち始めた。

もしかすると、 主流へと向かうときに立ちはだかる壁を本当の意味で打ち破るのは商用 Linux ではないのかもしれない。

もちろん、 Ubuntu は HP が特別バージョンを用意した時点で商用ディストリビューションになった、との議論もあるかもしれない。 しかし、HP は OS を別途提供し、 インストールはしていないため、完全にそうとも言えない。 実際のところは、ハードウェア上での認定が問題になっているように思える。

もしかすると、HP と Ubuntu の関係から未来が見えてくるかもしれないし、 見えないかもしれない。 これ以上推測するのは愚かだが、かまわず推測してみたい。

もしかすると、長期的には汎用 OS があまりにも普及しすぎて、 1〜2社の企業では意志決定ができなくなるかもしれない。 Linux 現象がオープン化を後押しする新しい自由なソフトウェア市場では、 コストの問題ではなく、真の自由を提供するとの理由から、 最終的には非商用 Linux のほうが好まれるようになる可能性がある。
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