米企業のアニュアルリポートにはふたつある。ひとつは証券取引委員会(SEC)に届け出る様式「10-K」。監査人リポートや財務諸表と注記、財務データ、それに MD&A(経営者による財政状態や経営成績の分析)など SEC の要求を満たす法定文書だ。日本企業なら、金融庁に届け出る有価証券報告書に相当する。
もうひとつは各社の株主に送付するアニュアルリポートだ。これは、財務ハイライト、株主への手紙、株主情報など各社がそれぞれの裁量で内容を編集する。経営戦略や事業の将来性、自社の独自性、競争優位、企業価値など非財務情報のメッセージが盛り込まれている。
全米 IR 協会(NIRI)など IR 業界の調査を長年手がける
Rivel Research Group が2005年に行った調査によると、機関投資家4社に3社が各社の全体的な印象をつかむために(株主向けの)アニュアルリポートを読むのだという。
さらに、3社に2社は内容を事細かくチェックし、各社の将来に関わる戦略を理解しようとアニュアルリポートを読む機関投資家は半数を上回る。株式投資をした後、つまり、株主となると、機関投資家の3社に2社が、株主マニュアルとしてアニュアルリポートを大いに利用しているのだ。
それだけではない。アニュアルリポートは個人投資家にも大きな影響を与えている。通信テクノロジー大手、
Tellabs の「2006年株主調査」は、アニュアルリポートは個人投資家によって、会社の情報ソースとして、どのニュース メディアやインターネットにも勝ると評価されている事実を明らかにした。回答者の58%が、株式の「引き続き保有」や「買い増し」を考えるときは、アニュアルリポートが判断を大きく左右すると回答したのだ。
ならば、各社の IR サイトにアニュアルリポートの掲載は欠くことができない。なんと言っても、IR サイトは企業情報の第一の発信源であり、株主や投資家ばかりでなく、ニュース リポーターや顧客、従業員など、誰でも情報を求めてアクセスする。こうした人たちの見方や考えがニュース メディアやインターネット空間で大きくこだまして、その声が、やがて投資家のもとに届くからだ。
「市場は規制が求める以上の情報を開示するアニュアルリポートを作成する企業に対してプレミアムを払う。情報をさらに開示する企業は自社の市場リスクを減らすので、その資本コストも低下する」と、大手格付け機関
Standard&Poor’s の『
Transparency and Disclosure』(透明性と開示の研究)も、指摘している。
それほど、影響力の大きなアニュアルリポートだけに、IR サイトではプリント版のアニュアルリポートを HTML で掲載し、分冊で掲載する。容量やダウンロード時間も付記する。これが株主や投資家に対する最低のマナーといえるだろう。文書保存ソフトの PDF に収めただけでは、株主・投資家に顔を向けているとは、決していえないだろう。
(執筆:米山徹幸/大和インベスタ−・リレーションズ理事)
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米山徹幸 
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